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二人に特訓してもらって体がドッと疲れた。後から来た皆に挨拶をし、海に入るため服を脱いで水着になる。浮き輪で浮いてゆっくりしよう。体を冷やすのにちょうどいいや、と浮き輪を片手に海へ向かう。
誰かに一声かけた方が良いかな。

「あっちで浮いてくるねー……ってビーチバレーに皆夢中か」

ワーワーと盛り上がってる子供達と学生達。誰も気にしてくれない。悲しい。とぼとぼと一人で海に向かい波に乗る。足と手を浮き輪に引っ掛け、波の流れに任せぷかぷかと浮いた。

疲れた体が休まり、ハァーと声が出る。蘭ちゃんも真純ちゃんも強くて特訓するには良い相手だ。それにアドバイスもいっぱいもらって少しだけど強くなった気がする。今後この経験が役に立てれば良いけど。


ーー急に海の流れが変わった。波が荒くなったのかと思ったけど、多分違う。誰かに引っ張られてる!?

「浮き輪っちゅーのは便利やのぉー」
「ちょっ、えっ!?」

この声に視界の端に見えるこんがり焼けた腕……。

「服部君!? 何で! ていうか引っ張らないで!?」
「ギャーギャー騒ぐなや。浮き輪ごとひっくり返すで」
「はぁっ!?」

何でここに彼がいるんだろう。そして何故引っ張られててどこに連れて行かれるんだろう。

「ちょっ、待って! どこ行くの!?」
「よっこらせ」
「わぁぁぁ!? ブッ!?」

ジャボーンッ! と水飛沫が上がる。本当に浮き輪ごとひっくり返された。足がつかないところまで来てしまっていたようで、脚をバタつかせ海から顔を出す。目の前には勝ち誇った顔。

「静かになったんとちゃうか?」
「なるわけないでしょ!? っ! ゲホッゴホッ」

ずっと噎せる私に焦ったのか、彼は私の肩に手を置き眉を下げた。

「おい、大丈夫か?」
「なーんてね!」

彼の顔目掛けて手で作った水鉄砲で水を掛けて、浮き輪を上から輪投げのように投げた。そして驚いている間に泳いで逃げる。

浅いところまで泳ぐとそこから走る。追いつかれなかったー、喜びながら振り返ると彼はすぐそこまで来ていて叫んでしまった。彼はニヤリと笑い、私の脇の下に手を入れて海に放った。

「んなぁぁ!?」
「アホォ! やり返しじゃ!」

私の体は宙を舞った。そしてまた大きな音を立てて水飛沫が上がった。


「ムカつくー!!」

海から上がり、ズンズンと足音を立てて砂浜を歩く。服部君は浮き輪を持ってコナン君と一緒に、砂浜の上に敷いたシートで休んでいた。他の皆はどこに行ったんだろう。いや、それよりも服部君に対しての怒りの方が大きい。

「大丈夫か? 全身ずぶ濡れだけど」
「ほんっと! 服部君、やだ!」
「お互い様やろ。まぁちょっと俺の方が上やったっちゅうこっちゃ」
「はぁ!?」

コナン君の横に腰を下ろし、正面に立つ服部君を睨みつけるとコナン君が隣で溜息を吐いた。

「オメーら、バカップルみたいにはしゃぎやがって」
「どうしてそうなるの! というか何故服部君がここに!?」
「工藤おるとこに俺ありや!」
「そっちこそバカップルじゃん!」
「ったく……」


********************


皆がいるという海の家に向かうと、知り合いでいっぱいだった。

「アンタら遅いでー!」
「和葉ちゃん!」
「永愛ちゃんやん! 聞いたで。アンタ修行してるんやってな。私も相手になろか?」
「良いのー!? 是非お願いします。でもその前にご飯!」
「永愛のためにたくさん頼んでてあげたわよ」
「ありがとー! 園子ちゃん」

女の子達の席にご一緒させてもらってご飯を食べる。海の家で食べるご飯は格別だなぁ。

ワイワイと賑わっている時、通路の向こう側の席で真純ちゃんと服部君が言い合いをしていた。間にいるコナン君が呆れた顔をしている。皆同い年なのに体の小さいコナン君がとても大人に見える。

「和葉ちゃん、服部君って剣道してるんだっけ。結構強い?」
「おん。腹立つけど平次はごっつ強いで」
「よし」

声を上げて服部君を呼ぶ。彼と一緒に言い争いをしていた真純ちゃんもこちらを向く。

「和葉ちゃんが服部君の剣道の強さめちゃくちゃ褒めてたんだけど、私にも剣道教えてほしいなー!」
「そんなめっちゃ褒めてないわ!」
「ハァ? 俺が強いことなんて俺が一番知っとるわ」
「じゃあ後で修行に付き合ってね! 強いんでしょ!」
「まぁな!」
「それと真純ちゃん! こっちでガールズトークしようよ!」
「えっ良いのか!?」
「おいでおいでー!」

真純ちゃんは此方の席に移り、服部君は褒められて気分が良くなったのか箸を進めていた。さっきの喧嘩はなんだったのか、コナン君の取り合いでもしてたのかな。まぁ二人の気が逸れてよかった。


********************


和葉ちゃんに合気道、そして服部君に剣道を伝授された。一日で色んな武術を教えてもらい、自分なりの戦い方が見つかりそうだ。悪い人達から哀ちゃんを……皆を守るために。


日が暮れ外が真っ暗になると皆で海辺で花火をした。
また皆でこうして遊べたらいいのになぁ。平和で幸せな時間を過ごしていた私は後に巻き込まれる危険を想像すらできなかった。

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