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大学からの帰り道、ビルの横を歩いていると上から紙が落ちてきた。それを拾って何か見ようとすると、「危ない!」と声が掛かった刹那、後ろから勢い良く誰かが覆い被さってきた。

「っ!」

何が起こったのか分からなかった。突進されるように一緒に転けた誰かと、周りから聞こえる悲鳴。

「大丈夫か!?」

そう言って私の身体を立たせ支えたのは、新一君だった。顔見知りだった事にお互い驚いた。それよりも、何故悲鳴が上がったのか。周りを確認すると、私が先程まで歩いていた場所に人が倒れていた。

「え、何……なんで」
「上から落ちてきたんだ。永愛、警察と救急車を呼んでくれ」
「う、うん」

スマホを取り出し、警察と救急車に連絡を入れた。新一君は倒れた人の知り合いや近くにいた人に事情聴取をしている。今まで警察や救急車を呼んだことは一度もなかったが、彼と関わりだしてからこの行動も手馴れてきたように感じる。

何故なら、彼と会う度に事件は起こったからだ。彼には何か憑いているんじゃないかってくらいに。お陰で警察の人にも顔を覚えられてしまった。

「新谷君」
「目暮警部!」
「何があったか教えてもらってもいいかね」

目暮警部と高木刑事に今起きた事を説明していると、新一君が戻ってきた。警部さんは新一君の事を頼りにしているようで、彼を交えて推理をしていた。そういえば人が落ちてくる前に紙が落ちてきたんだ。ポケットからその紙を出す。

「あの、この紙を拾ったんです」
「なんだね、この紙は」
「人が落ちてくる前に紙が落ちてきて、この紙を拾って見ていたら私の上から人が落ちてきてたみたいで新一君が助けてくれたんです」
「うーん。何て書いているんでしょうね」

警部さん達が紙に書かれた暗号について悩む中、新一君の表情を見ると口角を上げていた。

「目暮警部、分かりましたよ犯人が。そしてどうやって殺したのかもね」
「本当かね! 工藤君」

そうして、彼等はビルの中に入っていく。事件の謎を解く彼の姿は好きだし、私もこっそりついていこう。


********************

見事事件は解決し、犯人は捕まった。この光景もここ最近で何度見たことやら。スッキリした顔の新一君は私に近づいてきた。

「さっき言えなかったんだけど、ありがとう。助けてくれて」
「オメーどんくせーからよ。まぁ、上から人が落ちてくるなんて滅多にねーことだけどな」
「運が悪かったって事かな」
「俺が通りかかってなければ、今頃板みたくぺったんこだったぜ」

間違いないな、そう思うが新一君が近くにいなければきっと事件は起きていなかっただろうなと、乾いた笑いを返した。

「それにしても見事な推理だったね。すごいや」
「まーな。俺は平成のシャーロック・ホームズになりたいんだ!」
「ホームズかぁ。ふふっ、新一君ならなれるよ」
「なってやるぜ」

夢見る子供のようにキラキラした目で言う彼の姿を見て、ホームズがとても好きなのだと感じた。彼の嬉しそうな表情で不思議と私まで嬉しくなってくる。ふと彼は何かを思い出したかのように口を開いた。

「そういやー、友達は出来たか?」
「あー、んー。新一君繋がりなら……」
「まぁ出来たなら良いじゃねーか」
「うん。ありがとね。心配してくれて」

素直にお礼を言うのも照れるので、照れ隠しの笑いを向けた。彼は顔の向きを変え、バーローと一言。

「一人じゃねーんだから。いつでも頼れよ」

ボソリと呟かれた言葉が嬉しくて彼の方へ顔を向けようとすると、頭をコツンと叩かれた。君、私に暴力多いよ。


あ、と新一君が声を漏らした。どうしたのか聞こうとするのと同時に車のクラクションが鳴った。そして私達の近くに止まった黄色い車から顔を出したのは、特徴的な頭と髭の老人だった。

「いや博士まだ50代前半だぜ?」
「え、そうなの?」

って、私いま口に出してたかな。探偵さんには何でもお見通しなのだろうか。

「新一、学校の帰りかの?」
「おう。さっき事件を一つ解決してきてよ。博士、乗せてくれよ」
「良いぞ。わしも帰るところじゃからの。そっちのお嬢さんはどうするんじゃ?」

どうしよう。この博士って人の家や新一君の家って私のアパートから近いのかな。いやでも初対面の人の車に乗せてもらうなんて、申し訳ないし……。悩んでいると横から伸びてきた手に手首を掴まれた。

「何してんだよ。ほら乗るぞ」

慌てながら乗ると、ミラー越しに博士に自己紹介された。私も自己紹介しぺこりと頭を下げる。新一君によるとオヤジギャグとクイズが好きな、発明家らしい。よく分からなかった。

車が止まったのは、大きな二つの家の前だった。一つは博士の家、もう一つは新一君の家だそうだ。二人とも立派な家に住んでいて羨ましいや。


博士の新しい発明品を見てほしいだの何だので、博士の家にお邪魔する事になった。

「オメーの家、近所だろ」
「みたいですね」
「困った事があったら俺んとこでも博士のとこでも来いよ」
「ほう。永愛君は高校生なのに一人暮らしをしとるのか。新一といい君といい最近の高校生はすごいのう」
「博士、私新一君より三つも年上です」
「おぉそうじゃったか。すまんすまん」

隣で新一君は笑っていたけど、私が童顔だからとかそう言うのじゃなくて、ただ単に接点のない三つ上の人と知り合うなんてあまり無い事だから、学校が同じ同学年と間違えたというだけだろう。でも蘭ちゃんにも園子ちゃんにも同学年と思われているだろうし、やっぱり私……。

「子供っぽいのかなぁ」

そうつぶやくと、新一君はまた笑った。

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