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大学の授業が早く終わる時はポアロという喫茶店によく訪れる。店員さんの榎本梓さんとは年が近いせいか、仲良くなった。とても美人でおっとりしていて可愛らしい人だ。

「今日も美味しいです」
「ありがとう。永愛ちゃんいつも美味しそうに食べてくれるから、嬉しいわ」

梓さん特製のパスタを食べ終わると、何か飲むかと聞かれたので紅茶をお願いした。待っている間外を見ていると、歩く三人の高校生が目に入った。そのまま高校生達はポアロへと入ってくる。入り口で立つ一人は新一君だった。

「いらっしゃいませー!」
「「こんにちはー」」
「あり、永愛じゃねーか」
「あはは、また会ったね」

私達の会話を不思議そうに見つめる女子二人。やるなぁこの人、両手に花だ。

「新一、知り合いなの?」
「まーな」
「頭にサッカーボールぶつけられてね」
「おっオイ! あれはちゃんと謝ったじゃねーか」
「しんいちー?」

どこかで見たようなやり取りに笑っていると、三人は隣の席に腰掛け会話は続く。そしてお互い自己紹介の流れになり、彼女達と名前で呼び合うようになった。ついでに敬語もなしにしようと提案した。その提案に私の年も聞かれず、すんなりと受け入れられたのだが、何歳だと思われているのだろうか。別に良いんだけどね。

「じゃあ永愛ちゃんは、よくここに来てるんだ」
「うん。蘭ちゃん達も?」
「私の家ここの二階で、探偵事務所なの」
「え、探偵事務所? それって新一君の?」
「ちがうちがう。私の父、探偵で」
「まぁいずれはそうなるかもしれないけどね〜」
「なっ!? あり得ないわよ!」
「そうだそうだ。ありえねーよ」

成る程、新一君と蘭ちゃんはそういう関係なのね。なるほどなるほど。頬に両手を添えてニヤニヤしていると、新一君からデコピンされた。結構痛い。

おでこをさすりながらふと時計を見ると、15時を過ぎていた。今日は早く帰って課題をしなければならない。三人に帰ることを伝え席を立つと、新一君も帰るらしく一緒に店を出た。自宅の方へと歩くと彼も同じ方向なのか横に並んで歩く。

「そういえば永愛はどこの高校通ってんだ?」
「……ん?」
「ん?」
「私大学生デス。帝丹大学」

自分を指差しながら言うと少しの間があった後、彼は吹き出した。

「わりーわりー。越してきて二年って言うからよ、同じ高二だと思ってたけど、大学二年だったんだな」
「そうだよ。新一君は、帝丹高校?」
「おう。あ、お前の家ってあそこだろ?」

私のアパートを指差す。ようやく見えてきたという遠い距離だというのに何故分かったのだろうか。

「んでもって、部屋は二階の一番右側」
「流石名探偵」

何故分かったのかは謎だがパチパチと拍手する。そうそう私の部屋は二階の……。何かいる。こっち見てる。

「彼氏か?」
「ううん。幼馴染」

ずっとこっちを見ている幼馴染に手を振ると、振り返してくれるわけでもなくジッと見ている。私というより新一君の方を遠くからまじまじと。

「あの、知らない間に送ってくれてありがとう」
「おー。じゃあな」

アパートへ小走りで向かうと、二階の手すりに肘をついていた快斗の表情がはっきりと分かる。ムスッとしている。家の前で待っていたということは、渡していた合鍵を忘れてきたのだろうか。

「ごめんね快斗。ずっと家の前でいたの?」
「いんや、中で待ってた。偶々外に出たらオメーの姿が見えたんだよ。んで、さっきの奴は?」
「あぁ、前に話した友達になってくれた人だよ。快斗と同い年だったの」
「へー」

家に入ると電気もテレビも付けっ放しだったので、快斗に一発お見舞いした。彼が玄関で倒れている間に、お茶とお菓子の用意をする。するといつの間にか起き上がっていた快斗が、テーブルの前に座る。

「そういえば何かあったんじゃないの?」
「んー?」
「ほら、さっきムスッとしてたじゃない」
「そ、それは……。いや、まぁ何かあるっちゃあるけど」

クッキーを食べながらボソボソと話す快斗。言いにくい悩み事だろうか。

「青子には話したの?」

快斗は首を横に振る。もしかして青子関連? でも二人の間に何かあったなら、彼より先に青子から相談に来る可能性の方が高いし。でも彼の真剣な表情を見ると、もっと深刻な内容のような気がする。

「実はこの間、家の地下で……」
「うん」

「……いやー、実は新しいマジックに悩んでてよぉ」
「え?」

何か話そうとしたけど止め、誤魔化した。言い掛けた言葉を追求せず、話しにくい事なら仕方ない。話してくれる時を待とう、そう思った。ふぅ、と息を吐いて立ち上がり、冷蔵庫からチョコアイスを取る。

「はい。食べて元気出して」
「永愛……」
「好きでしょ、これ」

チョコアイスを受け取った彼は私をまっすぐ見つめて、口を開く。


「あぁ、好きだ」


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