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阿笠邸でカレーを作るから食べに来るかと哀ちゃんに誘われ、ルンルン気分で足を運んだ。中には博士に哀ちゃん、歩美ちゃんにコナン君がいて、大鍋からはカレーの良い匂いが漂っている。

「カレーの良い匂い!」
「ほぉー、美味そうなカレーが出来たのう」
「うん! これだけあれば元太君が何杯おかわりしても平気だね」
「そうじゃのう」
「あとは蓋をしてコトコト煮込むだけ」
「どれどれその前にちょっと味見を……」
「あっ! 私も私も!」

ペチンッと哀ちゃんが博士の手を叩く。そして、お皿にご飯を盛ってくる人には味見させない、と哀ちゃんが注意した。博士のお皿には山盛りのお米が乗っていて、歩美ちゃんも呆れていたけどいつの間に盛ったんだ博士……。

「哀ちゃん、一口だけ味見しても良い?」
「仕方ないわね……」

哀ちゃんは小さなお皿にカレーのルーを少し入れてくれた。美味しい、と口にすると彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「それより分かったの? 江戸川君。その壺の価値」

カレーを作る哀ちゃんと歩美ちゃんとは別に、コナン君は博士が物置から掘り出した壺について調べていた。

「かなり古そうだって事だけで……ってオメーいつの間に。何してんだよ」
「何か入ってないのかなー、って」

中を覗いたり底を見たり色々と触っていれば、手から壺がつるんと落ちた。

「あっ」
「オッオイ!!」

横にいたコナン君がナイスキャッチ。壺を割るところだった、危なかった。彼の手から壺を取り床に置きフーッと二人で安堵の息を吐いた。そして気付く。小さな彼が私の膝の上に乗っていることに。

「ワリィ!」
「ううん、壺ありがとう。もうちょっと膝の上乗っとく?」
「乗るわけねぇだろバーロー!」

顔を赤くしてバッと私から離れたコナン君。そんなに勢い良く離れなくても……。

ふと外から声が聞こえる。買い物に行っていた元太君と光彦君が帰ってきたのかな。皆が自分の作業に戻っている間、私は玄関付近の窓から外を覗いた。二人だけじゃない、世良さんもいた。

二人に何を聞いたんだろう……彼女は怪しげな笑みを浮かべて去って行った。内容が気になり、彼らを出迎える。

「おかえりー」
「ただいまです」
「飲み物買ってきたぜー」
「飲み物だけじゃありませんけど」
「ありがとう! 今世良さんと何か話してたよね?」

荷物を受け取りながら世良さんについて話をする。すると彼らの口から出たのは、新一君の事や隣に住む沖矢さんの事だった。


新一君が公の場に姿を現わすことを秘密にしているということを知られるのは多分マズイ。彼は組織の中で死んだことになっている人物。組織の人の耳に入ったら……。

「新一君!!」
「……永愛?」

勢い良く中に入り、新一君の方へ駆け寄り肩を掴む。彼は目を見開いている。

「世良さんって敵? 味方!?」
「いきなり何言ってんだよ」
「だから新一君のことを探って……」
「新一おにーさんがどうかしたの?」

歩美ちゃんの一言でハッとなる。取り乱して新一君と呼んでしまったけど、今目の前にいるのはコナン君だ。周りを見ると阿笠博士も哀ちゃんも不安げな表情をしてこちらを見ている。

「あっ、えっと新一君の話がしたいからコナン君ちょっと来てほしいなーなんて。あはは」

コナン君の腕を引き奥の部屋へと向かう。真剣な顔でついてくる彼に何から話そうかと頭の中を整理した。



部屋の扉を閉めるとコナン君に世良さんが元太君と光彦君に聞いていた内容を伝えた。思い返せば服部君が毛利探偵事務所に訪れた時、世良さんが新一君のことを嗅ぎ回っていると言っていたな。

「もしかして私、勘違いしてた? ……世良さんってもしかしなくても新一君の事が好き?」
「ハァ!? 何でそうなるんだよ!」
「だって新一君の事を聞き回って探してるし」
「探られてるのは確かだけどそういった感情はないと思うぜ。それと組織の人間であるかどうかはまだ分からねぇ」

どうなんだろう、と首を捻っていると呆れた顔でバーローと言われた。

「この前お酒の話をしてて不意に思ったんだけど、組織の人にバーボンやスコッチって人いるのかな?」
「スコッチは知らねーけど、バーボンは動き出したらしい」
「へぇ、バーボンはいるんだ。どんな人か分かってるの?」
「情報収集及び観察力・洞察力に恐ろしく長けた探りや……という事しかわからねぇけど」
「それで?」
「え?」
「まだあるんでしょ。隠してる事」

ジッとコナン君を見つめると一度目を逸らした後、気まずそうに口を開いた。

「標的は恐らく……灰原だ」

自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。そして胸の動悸が激しくなるのを感じた。

「え、そんな……哀ちゃんが……!? 警察の人に連絡して……」
「そうすれば灰原の居場所が奴らに知られる。FBIの人達もそう言ってた。アイツは俺が守る」
「わっ、私も! 勿論危険は承知の上で!」
「奴らに永愛の存在を知られるわけにはいかねぇし、危険な目にもあわせたくねぇ。灰原を守るっつっても逃げれる場合は絶対に逃げろ、いいな?」


勿論、と首を縦に振る。コードネーム、バーボン。哀ちゃんを狙う組織の一員。私も出来る限りのことはしなきゃ。そのためにもーーーー。



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