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翌日、また同じ場所に来た私は、コナン君を見つけたが彼に銃を向ける男性を目にし立ち止まった。全身真っ黒だしもしかして組織の人だろうか。そうだったらコナン君の身が危ない。しかし安易に近づくわけにいかず、会話が聞こえるところまで近づき耳を傾ける。

「マジックでやっちゃいけない三つのタブーのことだろ」

そうコナン君が男性に言った。マジック……手品の事を話しているという事は、あの男は恐らくキッド。


「あぁ、いた。コナン君!」

蘭ちゃんがコナン君を見つけ、声をかけた。その隙にキッドが逃げようとするので後を追う。不意にコナン君と目が合い「頼む」と言われた気がした。

人混みに紛れて見失いそうだけど、後ろ姿は覚えた。キッドも私が追っていることに気づいたのか早足になる。


ーー捕まえた。

逃げられないように彼の腕を強く掴むと動きが止まった。追いかけた背中、そしてよく知っている背中に声をかけた。

「ねぇ、どうしていつも快斗の姿なの? 怪盗さん」
「……何のことでしょう」
「幼馴染を見間違うわけないでしょ」
「貴女を油断させるためですよ、お嬢さん」

そう、キッドだと思っていた人物は快斗なのだ。声や顔は同じ、しかし口調は快斗ではない。多分キッドが快斗に変装してるんだ。疑問に思うのは何故快斗の姿をしているかだ。

「どうして私を油断させる必要があるの?」
「さぁ、どうしてでしょう」

彼は質問に答えるつもりがない。どうしたら答えてくれるだろうか。

「じゃあ、質問を変えますね。……何してるの快斗」
「……何をおっしゃるかと思えば、怪盗の正体が貴女の幼馴染だと思っているのですか?」

コクリと首を縦に振った。そんな筈がないのは分かっている。だけど快斗の姿で盗みをしないでほしい。そのために本当の姿を暴いてみせる。

「バレちゃあしょうがねぇな」
「……?」
「キッドの正体は俺なんだよ、永愛」
「……そういうのはやめてほしい」
「信じてねぇのか? なら、この間泣きついてきたのを覚えてるぜ俺は」

周りには誰もいない、私の家での出来事。その事を知ってるのは快斗だけ。そんな、まさか……本当に快斗が怪盗キッドなの?

「えっと、ちょっと待って。頭の整理が……」

グルグルと回る頭の中を整理しようとするも、出来なくて頭を抑える。不意に快斗の首辺りに不自然な痕を見つけた。

「それって」

彼の首を指差すと、下を向いて面白そうに喉を鳴らした。何か変だ。

「おやおや、鋭いですね」

彼は首辺りの不自然にめくれている皮を取り、全く知らない男性の顔になった。さっきまで被っていた快斗のマスクはぽとりと下に落ちる。やっぱり快斗に変装していたんだ。

「私の事、どうしてそこまで知ってるの?」
「さぁどうしてでしょうね」
「私に変装した時、小さな仕草一つさえ私そのものだったみたいだし、それってしっかり観察してないと出来ない事だよね」
「ほぅ。それでお嬢さんの出した結論は?」
「貴方が私のストーカーなんじゃないか」
「ぶっ!!」

真面目に答えたら吹き出された。失礼な人だ。コナン君と一緒に考えたのに間違ってたのかな。キッドの笑いがおさまるまで悶々と考えていたがこれ以外の答えが出ない。

「プッ、ははっ……! 面白い結論に至りましたね」
「……」
「まぁそういう事にしておきましょう」

ではまた、そう耳にし振り向いた時にはもう彼の姿はなかった。逃げられてしまったか。

蘭ちゃんの姿を見つけ、彼女らの元へと戻る。しかしコナン君はいなくなっていた。彼はどこに行った? キッドのトリックが分かったのだろうか。そうであれば私に教えてくれても良いのに……。

周りにはいない。どこだろう。キッドが昨日瞬間移動で現れたのはビルの上だった。そこに何かが隠されているのだろうか。上を向くと予想通りコナンくんの姿があった。

ビルの屋上へと向かう。途中で警察の方に止められたが中森警部の知り合いだといえばすんなりと通してくれた。青子のお父さんありがとう。キッドめ、今度は捕まえてやる。

屋上の扉を開けると、コナン君とキッドの声が聞こえた。逃げられる前に捕まえてどうして私の事をそこまで知ってるのか、真実を暴いてやる。ダッと駆け出しキッドがいるであろう方へと走る。

「永愛!?」
「今度こそ捕まえる!」

コナン君は私が来たことに驚きの声を上げた。しかし途中で強い風が吹き、横へ体が押される。フェンスにぶつかりそのまま風によって外へと押し出された。

「……えっ?」

フェンスが壊れていた? 何が起きているのか分からない。私の身体は重力によって下へと落ちる。

「永愛!」

私の名前を叫んだのはどちらの声だったのか。ビルの屋上から落ちる私へ伸びる二つの腕。どちらの手も掴めず目を瞑った。私はここで死ぬのか、もう少し生きていたかったな。


「勝手に死なれちゃ困りますよ。……永愛さん」
「キッ、ド……」

自分の脇と膝の下に、あたたかな腕が回されていた。そしてキッドのハンググライダーによって空を飛んでいる。

「キッド! てめぇ!!」

遠くに見える屋上からコナン君が叫んでいるのが聞こえる。フゥーと一息吐いて心を落ち着かせる。助かったんだ、私。怪盗に助けられた。距離が近くて彼の匂いが鼻をくすぐる。この落ち着く匂い、知ってる。

「ねぇ、本当に快斗なんじゃないの? 快斗の匂いがする」
「私は完璧主義者なもので。変装する人の匂いまで拘っているんです」
「ふっ、ふふ。変なの」

いくら完璧主義でも変装にそこまでしなくても良いんじゃない? 面白くて笑えてきた。

「今夜は良い夢を」

どこかのビルの屋上に降ろされる。何だろう、足が不安定……。ふと足元を見るとキッドが昨日今日で盗んだ宝石のついたヒールが履かされていた。

「ちょっ! ……あれ、いないし」

いつの間にかキッドはいなくなっていた。また逃げられてしまったけど命を助けてもらったわけだし、今日色々と騙された事を許すか。でも、でもさぁ……。

「ここ、どこなの……? というか靴……」


数時間後、いつの間にかつけられていた発信機を元にコナン君が迎えに来てくれた。そして翌朝、キッドのカード付きで私が履いていた靴が玄関に置いてあった。


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