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「へぇ、永愛さんは一人暮らしなんですね」
「はい! でも家事が苦手で……。安室さんは何でも出来て凄いです」
「練習すれば出来るようになりますよ」

大学の帰り道ポアロに寄ると、お客さんは入っておらず店員さんも安室さんだけだった。この前の事件があって彼と顔を合わせにくいなぁ、なんて思ってたけど、安室さんの作るケーキと淹れてくれる紅茶が美味しいからつい味わいたくて入ってしまった。墓穴を掘らないように頑張らないと。

「永愛さんってご兄弟はいらっしゃるんですか?」
「いえ、一人っ子ですけど」

幼馴染の存在があったからいたようなもんだけど。にしてもこういう事を聞くってことは……。

「この間の事件で一緒に戦ってくれた男性が、少し貴女に似ていたのでお兄さんなのかと思って。でも違ったようですね」

ひぃぃ、ですよねー! 私が男になっただけだもん。変装も何もしてないし、そりゃ顔はそんなに変わりませんよ。

「わっ私も見てみたかったです。安室さんの戦う姿。……きっとカッコいいんだろうなぁ」

つい本音がポロッと出てしまった。あ、と声を漏らすと彼は微笑んだ。

「そんなことありませんよ。でもあのような事件はお断りですね」
「そうですね……」
「知ってるんですか? 何があったか」
「えっと……コナン君! 彼に聞いて」

危ない危ない。気を抜くと勘付かれる。彼も頭のきれる探偵だし。

「お二人仲が良いですもんね」
「そうだと嬉しいです。皆と仲良くなれたのは、コナン君のお陰ですから」

へぇ、と言って笑みを浮かべながら安室さんは私にケーキと紅茶を出してくれた。ケーキを一口食べると自然に口角が上がってしまう。

「美味しい……!」
「ありがとうございます。美味しそうに食べていただいて光栄です」
「毎日食べたいくらいです!」
「毎日は流石にカロリーの問題で女性は気にされるのでは?」
「あー、そうですね……。あ! 誕生日にケーキを作って欲しいです!」
「僕の作ったもので良ければ、構いませんよ」
「じゃあお願いします!」

誕生日に安室さんの手作りケーキが食べれるなんて幸せ過ぎる! 毎年私の実家に幼馴染の二人が来てくれて、祝ってくれるんだけど今年はケーキが特別だ。まだ誕生日は先だけど楽しみだな。


「……チョコレートの匂い」
「バレてしまいましたか。まだメニューには考えてないものですが、チョコケーキの試食をしていただけませんか?」
「わぁ! ぜひ!」

チョコケーキをカウンターに置かれ、フォークでケーキを切る。チョコの良い香りが鼻をくすぐる。

「んー! このケーキも美味しいです」
「これは大人向けなんですよ」
「何か入ってるんですか? ……あ、お酒?」
「当たりです。どのお酒が入ってると思います?」
「お酒詳しくないんですけど、そうだなぁ……」
「知っているものを挙げてみたら当たるかもしれませんよ」
「じゃあえっと、ジン、ウォッカ、ベルモット……」
「っ!」

そう答えた時、彼の反応に違和感を覚える。何だろう。
しかし何も考えずに言ってしまったけど、今の三つのお酒って私が知ってる組織の人の名前だ。他に知ってるお酒……えっと。

「ばっバーボン!」
「……」
「も、知ってます!……安室さん?」
「あぁ、いえ。残念ながらバーボンも不正解です。……スコッチは知っていますか? それが入ってるんです」
「そうなんですか。知らないお酒です」

黒の組織ってバーボンとかスコッチってコードネームの人もいるのかな。またコナン君に聞いてみよう。

「安室さんってお酒結構飲まれるんですか?」
「そうですね。人並みには、ってとこですかね」
「じゃあオススメのお酒とかありますか!?」
「その日の気分によって飲みたいお酒も変わってきますしね……。逆に永愛さんが気になってるものはあるんですか?」
「えっ、えぇ? そうだなぁ、バーボンとか気になります」
「ほぅ……。美味しいですよ、バーボン」

彼が美味しいと言うのなら美味しいのだろう。また飲んでみよう。


「そういえば安室さんっておいくつなんですか?」
「あぁ、29です」
「ンンッ!? ゲホッ……」
「大丈夫ですか?」
「思っていたより上で驚きました」
「前に言ったでしょ、若く見られるって」
「そうみたいですね」

私の9歳上かぁ。9歳……9歳……。この差って恋愛対象に入るのかな。

「9歳差か……」
「僕は大丈夫ですよ」
「え?」
「9歳差」
「っ!」

顔が一気に熱くなるのを感じた。心臓がバクバクと音を立てる。私の考えてる事が分かったのか否か、彼は悪戯めいた笑みを浮かべてそう言った。

きっと私の反応を見てからかってるのに違いない。

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