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ポアロに着くと店の前で安室さんが掃除しているところだった。掃除しててもキラキラしてる。

「安室さんってめちゃくちゃかっこいいと思わない? ねぇ哀ちゃ……あれ?」

ついてきていると思っていた哀ちゃんがいつのまにかいなくなっていた。スマホを見ると、用事を思い出したから元に戻ったら連絡ちょうだい、とメッセージが入っていた。

お店の前で足を止めたことにより、安室さんがこちらに気づく。

「いらっしゃいませ」
「い、いらっしゃいました……」

緊張して変な発言をしてしまったが、笑って流してくれた。やっぱり優しい。店内には少年探偵団の皆がいてその中にコナン君もいた。子供達の横の席に腰掛けて、紅茶を注文する。

横からの視線がグサグサと突き刺さるように痛いけど、もしかして正体がバレてしまったのだろうか。ちらりと目線を向けると皆と目が合う。そして歩美ちゃんがパッと笑顔になり口を開いた。

「お兄さんかっこいー」
「えっ? あぁ、ありがとう。歩美ちゃんも可愛いよ」
「あれー? どうして歩美の名前知ってるの?」

あ、ヤバイ。予想外の言葉を言われて動揺してしまったためか、墓穴を掘った。

「さっき聞こえたんだ。ごめんね、いきなり名前呼ばれるの嫌だったかな?」
「ううん、ぜんぜん!」
「そう。良かった」

とりあえずバレずにすんだかな。三人は気にせずまた会話が盛り上がっていたけど、コナンくんの視線がグサグサと突き刺さる。怪しまれたくないし彼にはバラしておいた方が良さそうだ。背中を丸めて小声で話し掛ける。

「ねぇ」
「どうしたの? お兄さん」
「私、永愛なんです。哀ちゃんの薬で一時的に男になってるの」
「ハァ!?」
「シー!」
「あ、わりぃ」

コナン君がいきなり大声を出すから、歩美ちゃんや光彦君が不思議そうにこちらを見つめていた。元太君はホットケーキを美味しそうに頬張っている。

「この人俺が忘れてたみたいで、知り合いなんだ」
「へぇー!」
「忘れちゃダメじゃないですかコナン君」
「もう頭がじーさんなんじゃねーか?」
「元太……」

ナイスコナン君。これで怪しまれなくてすむ。なんか怒ってるけど。

「ねぇ、俺どう?」
「どうって言われても……。どこからどう見ても男だけど。永愛って言われればそう見えなくもないような」
「途中で蘭ちゃんと園子ちゃんをナンパしてきたんだよね。へへっ」

頬をかきながら言うとコナン君はコーヒーを噴き出した。汚い。また子供達三人に注目されるので、適当にごまかしておいた。

「バ、バーロー。……それで蘭たちは?」
「二人とも行くって言ってくれたから一緒に遊びに行こうと思ったんだけど、哀ちゃんに止められて二人と分かれたんだー」
「って事はナンパされて二人ともついて行こうとしてたのかよ!」
「うん。あ、知らない人について行ったら危ないよね。二人には気をつけてもらわないと!」

ナンパに成功して喜んでたけど、私がもし怪しい男の人だったら二人の身に危険が及ぶ。コナン君は私に聞こえるくらい大きな溜息を吐いていた。

「んで、灰原は?」
「ここに来る途中でいなくなっちゃった。元に戻ったら連絡ちょうだいって言われてて」

「お兄さんのお名前教えてー!」
「うぐっ!?」
「そうですね! この辺の方ならまた会うかもしれませんし!」
「えっと、んー……」

突然歩美ちゃんに話しかけられた。どうしよう、名前なんて何も考えてなかった! コナン君ヘルプミー! 彼もワタワタと焦っている。二人で慌てている中、店のドアが大きな音を立てて開いた。


「毛利小五郎はどこだ!!」
「……ここにはいませんが」
「ここにいるのは分かってんだよ! 隠れてんじゃねぇ!」

チャラついた男が毛利さんを出せと大声で叫ぶ。それに安室さんが答えるが、聞く耳を持たない。私も止めに入るか、と腰を上げた瞬間、ガタイの良い男が三人入ってきた。

「毛利小五郎を出さないなら、力尽くで答えさせてやる」
「ですから毛利先生はここにはいませんよ。しかし此方も黙って見過ごすわけにはいきませんね。相手になります」
「コイツらはここらじゃ名の知れているヤンキーなんだ。相手になる訳がねぇ。ボコられる前に口を割った方が身のためだぜ」

「へぇ、俺は知らないけどね」

男達の態度に腹が立ってつい出しゃばってしまった。複数の視線が私に集まる。ヤンキーだかなんだか知らないけど、癒しのポアロで暴れるのはやめてほしい。

「なんだと! お前喧嘩売ってんのか!?」

殴ってやろうか、コイツ。毛利さんになんで恨みがあるのかは分からないけど、正当防衛って事で良いよね、倒しても。踏み出そうと足に力を入れた瞬間、安室さんの腕が私の動きを制止した。

「危ないので下がっていて下さい」
「でも……」

掴まれた腕から分かる。この人、凄く強い。でも守られるだけなんて嫌だ。

「っ、いやです。ちょっとは力になれると思うので」
「そうですか。ではよろしくお願いします」

私たち二人を囲むように男四人が並ぶ。安室さんと背中を合わせ、相手の出方を見る。踏み出すタイミングは彼と同時だった。




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