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ーーおい! 大丈夫か!?

男の声と複数人の子供の声が聞こえる。何でだろう。真っ暗で何も見えないけど、音は聞こえる。力を入れて瞼を開けると、視界いっぱいに顔の整った少年がいた。

「うわぁぁぁ!」
「うぉっ!? 起きた」

ズキリと頭が痛む。何故痛いのかは分からないが、今まで公園のベンチに寝転がっていたようだった。

「頭痛くねーか?」

そう言って私の頭の痛い所を撫でる彼。初めて会う人に、ましてやイケメンにこんな事をされ、心臓が飛び出しそう。

「だっ大丈夫です!」

バッと勢い良く離れると不思議そうな顔をしていた。恥ずかしい事をしている自覚が無いのか。天然なのかこの人は。


どのようにしてこういう状況になったのか彼に尋ねると、転がってきたサッカーボールを子供達に蹴って返そうとした彼は、誤って私の頭へとボールを飛ばしてしまったという。そしてぶっ倒れた私を公園のベンチに彼が運んだらしい。

「って、貴方のせいなのね!?」
「わりーわりー。でもオメーもぼーっとして歩いてるからだろ」
「ぼーっと……だって、うぅ!」
「わー! いきなり泣くな!」

ボロボロと涙が溢れた。目の前の彼は慌てて、話を聞くから落ち着いてくれと必死になって両手を左右に振っている。泣きながら事情を説明すると、意外と真剣に話を聞いてくれた。

「つまりオメーは通学の為に引越しして二年目になるが、幼馴染と離れ一人暮らしな為毎日寂しい上に、仲の良かった友人は最近学校を辞めて今友達がいないと」
「うん……」
「うーん」
「……」
「ハァ。だったら俺が友達になればいーんだろ!」

ほら、と言って手を差し出す。その手を取ればベンチを立たされた。そして自己紹介をし合い番号を交換した。

「これで、友達だ。わぁーったか? 永愛」
「ありがとう、新一君」
「じゃあ俺はそろそろ帰るぜ」
「うん、バイバイ」

手を振り彼が去って行くのを見送ると、自分の頬が緩みっぱなしだったことに気付いた。友達、友達かぁ。嬉しいな。


そういえば彼、似てたなーーーー私の幼馴染に。



********************

「それで永愛はその人に恋しちゃったってこと!?」
「ちがうちがう! 確かにイケメンだったけど、そんなんじゃないって」

彼女は幼馴染の中森青子。先日の件を自宅で話していると、目を輝かせていた。女の子は恋バナが好きだなぁなんて窓の方へ顔を向けると、私のベッドに腰掛けていたもう一人の幼馴染、黒羽快斗がムスッとした顔でこっちを見ていた。

「にしてもほんっとどんくせーな、オメー」
「そうかなぁ」
「永愛がイケメンに助けられたから、ヤキモチ妬いてるのよ快斗は」
「そーなの?」
「バッ! んな訳あるか!」

プイッと顔を背けてしまった快斗の横に腰掛けて、頭をワシャワシャと撫でる。やめろやめろと煩いが止めない。かわいいなぁ、ワンコみたい。

「あ、二人ともそろそろ帰らないといけない時間じゃない?」
「えー、本当だ。永愛が引っ越してから寂しいよー」

眉を下げて抱き着いてくる青子の背中を撫でながら、ごめんねと謝る。

「また来るからな。変な男に引っかかるんじゃねーぞ」

そう言って、目の前で手からバラを出した快斗は私の手にそれを持たせる。幼馴染とはいえ、未だに快斗のマジックがどうなっているのかが分からない。

「ほら帰るぞ。青子」
「うん……。またね永愛!」
「今日はありがとう。気を付けて帰ってね」

手を振って二人を見送ると、シンと静まり返った家。大学に通いやすいように一人暮らしを始めたが、やはりずっと一緒に過ごしてきた幼馴染と毎日会えないのは寂しい。そんな思いを知ってか否か、それとも二人も同じ気持ちなのか、よく家まで会いに来てくれる。こんなに嬉しいことはない。


********************


何も予定のない寂しい休日。お買い物も兼ねて外で昼食をとる事にした。一人なので黙々と食べて、会計を済ませにレジに向かうと甲高い悲鳴が響き渡った。周りがざわつき始める。不幸な事に何かの事件に巻き込まれてしまったようだ。人集りの方へと行くと、血を流して倒れている男性がいた。……もしかして、死んでるのかな。

倒れた男性の脈を測る男の子。あの人は先日友達になった工藤新一君だ。何故彼は容疑者を集め推理しているのか、そんな疑問は警察が来るとすぐに分かった。彼は探偵だったのか。周りを見ると容疑者と思われる人達以外の人々は帰って行ったが、私は何故か真剣に推理をしている彼に目を奪われ動けずにいた。

「犯人は貴方ですね」

ようやく謎が解けたようで、彼は容疑者の中のガタイの良い男性に向かって指を差すと、男性は焦った様子で周りを見渡し私と目が合う。透かさず男性は私に駆け寄り後ろから首に腕を回す。そして、私の顔に包丁を突きつけた。

あぁ、本当鈍臭いな私。

「この女を殺されたくなければ、そこから動くな!」

警察は眉を寄せ、両手を挙げて動かない。新一君は目を見開いていた。犯人の男性は私に包丁を突きつけたまま、ゆっくりと出口へと向かう。このままでは犯人が逃亡してしまう。仕方ない、私がどうにかするしか……。

首に回されている右腕。男性の右手首に左手で下から掴み、肘を右手で持ち上げるようにする。そのまま男性と正面になるように回りながら自分の首を腕から抜くと、男性はバランスを崩し前屈みになった。素早く後ろに下がりながら男性を地面へと叩きつけた。手から離れた包丁を遠くへと蹴り飛ばす。驚いた声と同時に刑事さん達が此方へ走り、男性の手首に手錠を掛けた。

「スゲーな」

スタスタとやって来る探偵に、また会ったねと微笑むと微笑み返された。やっぱり快斗と似てる。顔だけじゃなく声までも。でもこっちの彼の方が大人びている気がする。

「怪我はねーか?」
「うん。新一君は探偵さんだったんだね」
「まぁな」

不意に離れたところにいた刑事さんが新一君を呼んだので、彼は「また会おうぜ」と言って、刑事さんの元へ向かった。また、か……ふふっと自然と溢れる笑みを抑えることが出来ず、私は弾むような軽い足取りでショッピングモールへと向かった。

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