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あの後私服に着替えて、沖矢さんに家まで送ってもらった。別れ際に変な男にはついていかないように、と注意までされてしまった。お礼を言って部屋の鍵を探る。

しかし赤井秀一、あの電話を無視したって事? 気が向いたらかけろって言ってたのに。もう絶対電話しないし会わないぞ。もし見かけたら一発殴ってやる。

……ほんと鍵どこやったっけ。鞄の中じゃないのかな、ポケットか。あったあった。鍵を取り出すと何故か目の前のドアが開いて一瞬自動ドアになったのかと思った。

「おかえり」
「た、ただいま。どうして、快斗が……っ」
「おっおいおい! 突然泣きそうな顔になるんじゃねぇよ!」

快斗の姿を見てさっきまでの不安が爆発したような気がした。あぁ、もう我慢しなくていいんだって。

「ひとまず中に入れ? な?」
「かいとぉぉ!」
「うおっ!?」

家の中に入り、快斗に飛びつく。突然のことで驚いたのか二人一緒に倒れこむ形になった。

「何だよ、寂しかったのか?」
「うん」
「今日はここにいてやっからよ」
「うん、うん」

頭を撫でてくれる快斗にホッと安心する。そして我慢出来ずにポロポロと涙を零してしまった。

「何があったんだよ。身体中傷だらけだし。手当てしてやるから一旦降りてくれるか?」
「やだー」
「……ハイハイ」


それからどれくらい経っただろうか。数十分は経っていると思うけど、快斗は私が落ち着くまで背中を撫でてくれたりポンポンと軽く叩いてくれた。辛いことや悲しいことがあった時いつも彼はこうしてくれる。優しい幼馴染をもって良かった。

「近くの弁当屋で弁当買ってきたんだよ。食うだろ?」
「うん、食べる」
「手当ては食べてからな」
「お願いします」

夕飯を食べた後、快斗は傷の手当てをしてくれた。必死だったから気付かなかったけど、傷だらけだな私。そして今日あったことを全て彼に話した。

「バーロー! 何で俺に助けを求めなかったんだよ!」
「だってあの時気付かれずに連絡する方法が他に思い当たらなかったんだもん!」
「ったく、無理すんじゃねぇよ。複数の男に一人で立ち向かうなんて馬鹿だぜ。今回は無事に帰れたから良かったものの、もう少しちゃんと考えろよな」
「……馬鹿だから考えれない。快斗が気付いて助けに来てよ」
「無茶言うなっての。今日だって人通りの多いところで周りに助けを求めるか、最初から警察に通報してれば良かっただろ」

コクリと頷く。快斗の言っている事は正論だ。だけどあの状況で、一人ではそんな判断は出来なかった。あぁ、また泣きそうだ。

「泣き虫だなオメーはよ。ほら、何度だって受け止めてやっから」

そう言って優しく包むように抱き締められた。幼い頃から変わらない彼の匂いや心臓の音が気持ちを落ち着かせてくれる。

「どうして今日家に来てたの?」
「最近行ってなかっただろ? 顔見に行こうかなって思って。青子は友達と出掛けるらしいから、一人で来たんだ」
「そっか。あはは、快斗だけで良かったかも。青子に格好悪いところ見られたくないし」
「アイツにも永愛の弱い所見せても良いんじゃねぇか?」
「ダメ。年上なのに恥ずかしい」
「俺とアイツ同い年……。でもまぁ俺だけってものも悪くねぇかな」

歯を見せて笑う快斗に私もつられて微笑む。そういえば泣けるのって何故か快斗の前だけなんだよね。でも新一君に初めて出会った時も彼の前で泣いたっけ。二人ってどこか似てるから……なのかな。

「今日快斗が来てくれて良かったかも」
「そーかよ。オメーもたまにはこっちに来いよ」
「はーい。あ、最近青子のお父さん忙しいんじゃない?」
「え? ……あー」

最近また現れたキッドを追うので青子のお父さんは多忙なはずだ。

「今度こそ捕まえられると良いよね」
「天下の怪盗キッドがあのヘボ警部に捕まるかっての」
「ふふっ、快斗はキッドを応援してるんだ」
「永愛はどっち側なんだ?」

そうだなぁ……。やっぱり青子のお父さんは何十年も怪盗キッドを追い続けてきたわけだし、逮捕出来たら良いなと思う。でもキッドはキザだけど悪い人じゃないような気もするし。盗みは良くないけどね。あ、でもストーカー説もあるし。

「警部かな。でもキッド、かっこいいんだよね」
「ほ、本当か!?」
「う、うん?」
「前に好きって言ってた奴より好きな顔か!?」
「ううん、彼の方が素敵。かっこいいし頭は良いし気が回るし何でも出来るし大人だし!」
「……そんなにそいつの方が良いのかよ」

快斗はズーンと沈んでしまったけど、どうして安室さんとキッドを比べたがるの。快斗って相当なキッドファンなんだ。知らなかった。知ってるかもしれないけど、青子にもまた今度教えてあげよう。


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