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「いらっしゃいませ。こんにちは、永愛さん」
「うぅぅぅぅ……!」

今日も安室さんはかっこいいです。笑顔を向けられるだけで倒れてしまいそう。お好きな席へどうぞ、と笑顔で言う彼は眩しすぎて直視できない。キラキラしすぎじゃない? かっこ良すぎるんですけど……。

「大丈夫ですか?」
「は、はい!」

心配してくれながらもスマートに席へ案内してくれる。こんな完璧な人他にいる? 安室さんって彼女いるのかな。きっと美人な彼女さんをお持ちなんだろうな。

「永愛ちゃん」
「梓さん! どうしたんですか?」

席に座ると梓さんが近づいてきて、私にしか聞こえないくらいの声量でコソコソと話す。

「彼、彼女いないらしいわよ」
「えっ安室さんですか?」
「えぇ。チャンスよ! 頑張ってね」
「なななっなにを!」

彼女は私の肩を叩いてウインクをした。頑張ってって安室さんにアピールするってことでしょ!? そんなの恐れ多いよ!

ふとカウンターテーブルを拭いていた安室さんと目が合ってどきりとした。微笑んでくれたけど意識して思わず目を逸らしてしまった。あぁ私の馬鹿!

頭を抱えながら下を向いていると、テーブルに何かを置く音がした。

「どうぞ」
「へっ」
「温かい紅茶です。いつもこちらを頼まれると聞いて。この間は僕に気を遣ってコーヒを頼んでくれたんですよね」
「そ、そんなことは……!」
「お詫びも兼ねて、紅茶は僕からのサービスです」
「…………ッハ!」

嬉しすぎて言葉にならない。というかイケメンすぎて一瞬呼吸するの忘れてた。

「ありがとうございます! 大切に飲みます!!」
「普通に飲んでいただいて構いませんよ。あ、何か頼まれますか?」
「じゃあショートケーキ下さい」
「かしこまりました」

軽く頭を下げてカウンターに向かう安室さん。執事似合いそうだなぁ。



数分後、梓さんがケーキを持ってきてくれて紅茶と一緒に頂く。これからどうしようかな。今日は偶々休講で大学に行かなくてよくなったのでこうして平日の真昼間からポアロに来ているわけだけど、蘭ちゃんやコナン君はまだ学校だろうし今から特に用事もない。


「頬にクリームがついてますよ」

ボーッと窓から外を眺めていると、安室さんが突然視界に現れた。そして私の頬についていたクリームを指で拭う。自然にやるもんだから反応に遅れてしまったけど今、私の頬に安室さんの手が……?

「えっ、えぇぇぇ!?」

私が叫ぶと同時にポアロのドアが勢い良く開いた。眉間に皺を寄せたコナン君がズカズカと入ってきて、何故か私と安室さんの間に立つ。

「安室さん!」
「おや、コナン君。こんにちは」
「学校終わったの?」
「……永愛姉ちゃんはダメだからね!」

コナン君は私の問いかけをスルーして安室さんにダメと言うが、何が駄目なんだ。私は駄目? どういう事だ。

「へぇ。コナン君は永愛さんが大好きなんだね」
「なっ!? ち、違うよ!」
「え、嫌いなの!?」
「永愛姉ちゃんは黙ってて!」
「ウィッス……」

怒ってるのか照れているのか、コナン君の顔は真っ赤だった。どうしてそういう話になったのかは分からないけど。安室さんは相変わらず素敵な笑顔で微笑んでいる。イケメンだ。

「あ、永愛さんすみません。突然頬を触られたら嫌でしたよね」
「あっいや全然です! 寧ろありがとうございます!」
「いえいえ。コナン君、何か飲み物でもいるかい?」
「ううん、今日はいいや」

安室さんはカウンターに戻ったが、ずっとクスクスと笑っていた。楽しそうでなによりだけど……。するとコナン君が私の正面の席に腰掛けた。

「すっごい笑われてるよ」
「お前あの人が好きなのか?」
「へっ、いや! そんなことは!……なくない、かも」
「……」

嫌いではないのは確かだけど、好き……うーん。難しいところだ。安室さんはイケメンだし性格も良い。付き合いたいかと聞かれれば付き合いたいけど……。

「でも完璧すぎて隙がないよね」
「まぁな」

頬杖をつきながらジト目を向けられる。きっと私と彼とじゃ全然つりあわないって思ってるんだな。

「新一君もかっこいいよ」
「っ、バーロー。そう言う事を考え無しに言うんじゃねぇ!」

帰る! そう言って椅子から降りたコナン君は店を飛び出した。突然現れて嵐のように去って行ったなぁ。かっこいいって言うのは本音なんだけど……。

お客さんがあんまりいないからか、手が空いている様子の安室さんはまた私に近づいて来た。あぁー、かっこいい。眩しい。

「今日は学校はお休みですか?」
「はい。休講になって。安室さんこそ探偵のお仕事は?」
「夕方から一件あります。休講ということは大学生なんですね。蘭さんと仲が良いからてっきり高校生なのかと思ってましたよ」
「あはは、多分蘭ちゃんからも同い年だと思われてるんじゃないですかね」
「僕もよく若く見られるんですよ……っといらっしゃいませ。永愛さんすみません、続きはまた今度」
「はい」

若く見られるって安室さん何歳くらいなんだろう。多分大学は卒業してるだろうし20代半ばだろうか。

突然お客さんがたくさん入って来たから忙しそうだな。そろそろ私はポアロを出よう。夕飯の買い物しようかな。


幸せな時間は過ぎるのがあっという間だなぁ。またお待ちしています、と送り出してくれる安室さんに胸が高鳴った。

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