×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

ファミレスでの事件が解決し、探偵事務所に向かう皆とは別に私は帰宅しようとしていた。美味しいレトルトカレーを買ったし快斗と青子を呼んで一緒に食べようかな、そう思っていたのに服部君に止められる。

「ハァ? お前も来いや!」
「えぇ、やだよ」
「アタシら先行ってるでー」

服部君達がわざわざ東京に来た理由は、東京に住むデザイン会社の社長から手紙が届いたからだった。しかしその社長は先月に殺害されたらしい。亡くなった人から手紙が届くなんて怖すぎじゃない? 私は自分から事件に関わりにいきたくない。

「お前なにかと鋭いやんけ。いいから行くで」
「鋭くないよ! 殺人事件に関しては特に! 私何の役にも立たないよ!」

グイッと服部君に腕を引っ張られるが、足に力を入れて動かないようにする。お互いが前のめりになって引っ張り合う。

「いーくーでー!」
「いーかーなーいー!」
「オメーら何でもいいから早くしろよな」

呆れた顔をしたコナン君が私達を見上げる。服部君がこの手を離してくれれば私は帰れるのに。

「あ! 和葉ちゃんが変な男に捕まってる!」
「はぁ? 何でアイツ……」

よし、和葉ちゃん作戦大成功。私が指差した方へ顔を向ける服部君だが、勿論彼女の姿は無い。気が逸れることによって緩む手の力。スッと自分の腕を引いて駆け出し、コナン君にアイコンタクトを取る。彼はやれやれと呆れながらも手を振ってくれた。

「逃げんなアホー!」

服部君の怒鳴り声が聞こえたけど、足を止めず走る。逃げ足は速いんだから。でもまた会った時グチグチ言われそうで面倒だなぁ。

服部君が追ってこないことを確認して走る速度をおとす。今晩の夕食は買ったレトルトカレーにする予定だから、サラダでも買おうかな。さっきもカレーを食べたけど美味しかったから夜もカレー。幸せだ。サラダを買いにスーパーに入ると、見知った人物がいた。

「あれ、沖矢さん?」
「永愛さん」
「お買い物ですか?」
「えぇ、一人暮らしなものですから。永愛さんも夕食の買い出しですか?」
「はい。さっきレトルトカレーを買ったので、サラダでも買おうかと」
「ホォー。カレーですか」

沖矢さんは顎に手を当てて、私が持つレトルトカレーの入った袋を見つめる。それから何も言わずに数秒が経つ。もしかしてこのカレー、狙われてる?

「だ、ダメですよ! いくら沖矢さんでもこのカレーは譲れません!」
「それは残念ですね。よろしければ夕食をご一緒にでも、と思ったのですが」
「え、一緒にですか?」
「はい。駄目でしょうか」

駄目かと聞かれると断りにくい。沖矢さんと一緒に夕食かぁ。快斗と青子と食べようかと思ってたけど、まぁいいか。

「駄目じゃないです。一緒に食べましょう」
「ここからだとうちの方が近いので、うちで食べますか? と言っても工藤さんのお宅ですが」
「じゃあお言葉に甘えてお邪魔します」

私の家にならなくて良かったー! 今散らかり放題だからね。服とか脱ぎっぱなしにしちゃってるし助かった。

そしてサラダを二人分買って沖矢さんとスーパーを後にした。



********************

お米が炊けるのを待っている間、食器を用意してくれている沖矢さんに気になっていた疑問をぶつける。

「沖矢さんってここで暮らしているんですよね」
「えぇ。以前住んでいたアパートが火事になってしまって、こちらのお宅に住まわせていただいてます」
「じゃあコナン君とどんな関係なんですか?」
「そこはコナン君じゃなくて、工藤家の誰か……ではありませんか?」
「っ!」

しまった、この家と関係があるのは新一君の方だ。でも沖矢さんの怪しげな笑み、彼も新一君とコナン君が同一人物だって事を知っているような感じがする。

「……ご飯、炊けたようですね」

炊飯器が音を立て、沖矢さんはそちらへ顔を向ける。はぐらかされてしまった。彼は勘が鋭そうだからこれ以上聞くと私の方が墓穴を掘りそう。やっぱり今度コナン君に探りを入れた方が良さそうだ。


湯気を立てた温かいカレーライスがテーブルに置かれた。二人でいただきますと手を合わせ、カレーを口に運ぶ。……うん、美味しい。

「本当に、美味しそうに食べる」
「?」

食べるところを見られていたのだろうか。沖矢さんは口角を上げてそう言った。そんなに美味しそうに食べてたかな。しかしその言葉に違和感を感じた。前に私の食事する姿を見たことあるような言い方だけど、この人との食事は初めて。


沖矢さんといると、謎が深まるばかりである。


prev- 32 -next
back