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バイトが思ったより遅く終わった。辺りは真っ暗、もうすぐ日付も変わってしまう。おまけに天候は雨。今日雨降るなんて予報で言ってたっけ。傘持ってきてないし最悪だ。

時間も時間だし雨宿りしてる暇はない。立ちっぱなしの仕事だったから、足が疲れていて走れないし歩いて帰るしかない。

下を向いて歩いていたので、建物の陰から人が出てきたのに気づくのが遅くなって軽くぶつかってしまった。

「す、すみませっ……安室さん?」
「君は……永愛さんですか。どうしたんです、こんな遅くに」

安室さんだ! こんな時間に会えるなんて嬉しいな。近くで見るとより一層かっこいいや。
彼は質問をしながらも持っている傘をこちらに傾けてくれる。なんて優しいんだ。

「安室さんこそ。私はバイトで」
「僕も似たようなものです。それよりずぶ濡れじゃないですか。こちらへ」

肩を抱かれてどこかへ向かう。ち、近い。顔の熱が上がるのがわかった。どこに連れて行かれるんだろう。そう思っていたら、白い車の前で足を止めた。もしかしてこの車、安室さんの?

「乗って下さい。家までお送りしますよ」
「えっ、送ってもらうなんてそんなっ……!」
「僕も用事が済んだところですし、遠慮なさらずに」
「こんな高価そうな車に乗っても良いんですか!?」
「どうぞどうぞ」
「ぐはっ」

笑顔が……すてき。顔良し性格良し、そして探偵だから頭もキレるだろうし、この人完璧すぎないか?

傘を傾けてもらいながら車の助手席に乗せられ、そして渡されたタオルで体を拭くように言われた。行動も紳士だし魅力的だ。絶対いま目がハートになってる。

安室さんが運転席に座ると家までのルートを聞いてきたので、申し訳ない気持ちになりながら伝える。微笑みながら運転してくれる彼は何から何までイケメンだ。

「ポアロにはよく来られるんですか?」
「はい。学校やバイト帰りによく。もう一年は通ってますね」
「そうでしたか。上に住む毛利先生達ともそれぐらいの付き合いになるんですか?」
「あ、いえ。毛利さんやコナン君、蘭ちゃんは最近知り合ったんです。ポアロで蘭ちゃんと仲良くなって、居候のコナン君や父の毛利さんとも話すようになって……」

初めてのきっかけは蘭ちゃん、ということにしておこう。前もそう言った筈だし。新一君の名前を出すと厄介な事になる気がするし。

「へぇ。コナン君とは特に仲が良さそうでしたね」
「そうですかね。まぁ会う確率は高いような気がします」
「彼を見てキミはどう感じますか?」

何だろうこの質問。どこか裏のあるような……。安室さんはコナン君の正体を知らないはず。でなければこんな事は聞かないだろうし、何か探っているのだろうか。考えて答えなければ探偵の彼に怪しまれてしまう。

「賢い小学生って感じですかね。周りの子達よりは落ち着いているなって思うくらいで」
「それだけじゃありませんよ。謎を解く彼の姿はまるで……」
「で、でも歳相応な子供っぽいところもありますし、やっぱり小学生なんだなって思います。この前だって安室さんが淹れてくれたコーヒーに砂糖を大量に入れてくるし、脇腹を摘んでくるし!」

コナンくーん! 君のせいで私冷や汗が止まらないよ! ヘルプミーだよ。すると安室さんは目を細めて笑った。

「そうですね。あの時は見ていて面白かったですよ」

微笑む安室さんを見て緊張も次第に溶けていき、やがて眠りに落ちた。


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「……さん、永愛さん」

重たい瞼を開けると眉を下げた安室さんの顔があった。そんな困った顔も素敵……って、もしかして私寝てしまっていたのか! 隣で運転してもらっているのにも関わらず何て失礼なことをしてしまったんだ私!!

「すっすみません! もう寝ません!」
「家でしっかり寝て下さい。もう日付も変わってしまってますし眠くなりますよ。それより親御さんに連絡は入れてますか?」
「一人暮らしなのでそこは心配いりません」
「なら尚更心配ですよ。次から夜道は気をつけて下さいね」
「ありがとうございます。安室さんもお気を付けて」
「はい。ではまた」

くぅぅー! 最後までかっこいい! なんであんなにスマートでかっこいいんだろう。はぁ、今日は良い夢見れそう。


……でも彼、やたらとコナン君のことを知りたがるな。先生、と尊敬している毛利さんよりもコナン君の方に興味があるみたいだ。正体がバレないと良いけど、探偵さんって鋭いからなぁ。協力してくれる味方が増えるのは良いことだと思うけど、敵か味方か決めるのは私ではないからなぁ。

コナン君に安室さんが君のことを探ってますよ、と伝えようと電話したら「今何時だと思ってんだ!」と怒られた。そういえば夜中だった。


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