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金曜日の放課後、俺と青子は永愛の家に来ていた。途中、スーパーに寄り食材を買う。夜は三人で食べようと俺たち二人で計画していた。青子が食事の支度を終えるとタイミング良くドアの開く音が聞こえた。

「よっ!」
「永愛! おかえりー」
「へ、どうしたの二人とも」

口を開けてきょとんとする永愛。間抜けな顔だなと思いつつもそんな顔も可愛いと思ってしまう俺は末期だろうか。彼女は鼻をクンクンとさせた後、ふにゃりと顔を緩めた。

「いいにおい……」
「当たり前でしょ。青子がご飯作ったんだから」
「あ、あおこー!!」

青子に抱きつく永愛。早く食おうぜ、と一声かけると二人は腰を下ろして「いただきます」と食べ始めた。美味しそうに飯を頬張る永愛。そういやコイツは料理下手くそ、というか面倒くさがって作らねぇんだよな。

「永愛も青子みたいに料理出来るようになれよ」
「私は作るより食べたい派なの! 良いよ、青子をお嫁さんに貰うから」
「もう! また今度教えてあげるね」
「だってさ、快斗」
「オメーだよバーロー」
「ねぇ永愛! 最近どう? 周りに良い人とかいるの?」
「良い人かぁ……」

青子はここへ来る度にこうやって永愛に質問を投げる。これは恋バナがしたいのではなく、永愛が変な男に引っかかってないか確認するためのものだ。俺達は幼馴染で年上の彼女を大切に思うからこそ心配でならない。そしていつもこの質問の答えは「いない」だ。

「めちゃくちゃ好みの人を見つけたんだー!」
「「えっ」」
「コナン君っていう小学生の男の子と知り合ってから、会う人会う人みんなイケメンで……。その中でも一人、ひときわカッコよくてね!」

コナン……あの名探偵か。余計な事しやがって。興奮気味に話す永愛を横目に青子が小声で話しかけてきた。

「どうしよう快斗。永愛に彼氏が出来ちゃうかもしれないよ」
「アイツの方から惚れるなんて想定外だぜ。ったくどうすっかなー」
「早く考えてよバ快斗! 前みたいに永愛に近寄ってくる人達の情報は来ないんだから」
「オメーも考えろアホ子!」



前みたいに、というのは彼女が高校生の時の話になる。少し昔の話をしよう。


永愛は高校生になると周りの影響からか、外見に気をつかうようになって一段と綺麗になった。そして男からの呼び出しが多々あったらしい。……という情報を何故中学一年の俺が知っていたのか、それは俺と青子、そして永愛の友達がこまめに連絡を取り合っていたからだ。

「快斗! 今日の放課後永愛が呼び出されたって!」
「相手はどんな奴だ?」
「三年生のサッカー部のキャプテンだって。でも浮気ばっかりして女遊びが激しいって噂らしいの」
「なら遠慮はいらねぇな」

その日の放課後、永愛は呼び出された屋上へと足を運んでいたが、男は来なかった。何故なら遊ばれていた女達に男の本性を教え、怒った女達にボコボコにされたからである。自業自得だ。

待っていた永愛を青子と共に迎えに行き、一緒に帰る。

「今日靴箱に三年の先輩からの呼び出しの手紙が入ってて、書いていた場所に時間通り行ったのに誰も来なかったの」
「えー! 何それー」
「嫌がらせだったんじゃねーの?」
「成る程。嫌がらせか、くそぉ! 」
「次からはそういう事があっても行かねぇこったな」
「そうだね、わかった」

そして変な男に襲われないために武術……主に護身術を身に付けるよう促した。彼女の運動神経は元々悪くなかったので、日に日に強く成長した。


このような事を三年間続けてきた俺と青子。あんた達ほんと永愛のこと好きね、と彼女の友人から呆れられる始末である。確かに少し過保護すぎかもしれねぇが、鈍すぎるアイツが悪い。


しかし大学に入ると通学のために永愛は一人暮らしをすることになった。毎日のように登下校を一緒にしてきたが、出来なくなってしまった。更に彼女の友達は、大学二年になると同時に学校を辞めてしまった。何でも遠距離中の彼氏の元へ行くらしい。それはさておき、二年からの彼女の情報がほとんど分からない。

加えて厄介なのがあの名探偵との接触。永愛が鈴木財閥の令嬢と仲良くなったことはラッキーだ。だが若い男と知り合うのが多いというのが問題だ。しかもどいつもこいつも探偵のような頭のキレる奴ばかり。そして顔が良い。その中に永愛の好みの男もいる。アイツを危険な事に巻き込んだら誰であってもタダじゃおかねーからな。

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