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街中を一人で歩いていると怪しげなおじさん、もとい蘭ちゃんのお父さんの毛利さんを見かけた。新聞紙を持ちながら妙な動きをして歩いている。後ろから声かけてみようかな。

「毛利さん! お仕事ですか?」
「んぐっ!? あぁ、お前か。忙しいからあっち行ってろ」

しっしっと手で追い払う仕草をされる。毛利さんの目は遠くを向いているし、多分何かを気にしているんだろう。

「なんか面白そうですね!」
「面白いわけあるか。依頼だ依頼」
「もしかしてあのイチャイチャしてるカップルですか?」
「そーだよ。あそこのカップルの尾行を頼まれてんだ」
「へぇー。でもおじさん一人で遊園地に入るとなると、尾行がバレちゃうんじゃないですか?」

カップルが入っていった遊園地を指差せば、毛利さんは「なにぃ!?」と大袈裟に驚いた。そして私をジト目で見た後、決心したのか此方をビシィと指差した。

「よしお前も来い!」
「入場料は毛利さん持ちですよね!」
「仕方ねぇなぁ。邪魔はすんなよ」
「やった」

わー! 遊園地だ遊園地! 前はバイトで来ただけだったから遊べなかったんだよね。でも依頼の内容もすごく気になる。

「あのカップルをどうすればいいんですか? 協力するので教えて下さい」
「あぁ? ……ったく、仕方ねぇな」

依頼の内容はこうだ。まず依頼主はあのカップルの女性の父親。その父親はとある会社の社長だという。最近娘の様子がおかしい為、男でも出来たのではないかと疑っていたようだ。案の定娘には彼氏がいたわけだが、その男が不釣り合いではないか尾行して確かめてほしい、という娘大好きなパパからの依頼だ。

「要はあの二人を別れさせれば良いんですよね!」
「ちっげーよ! 話聞いてたか!?」

「あれ? おじさんに永愛姉ちゃん」
「永愛お姉さんだー!」
「こんにちは」
「何してんだ?」

「やっほー」
「なっ! オメーら!……そういえば今日遊園地に行くとか何とか言ってたな」

なんと遊園地にコナン君率いる少年探偵団の皆が来ていた。毛利さんの仕事でここに来たことを皆に教えていれば、私を残して毛利さんはカップルを追いかけて行ったので、子供達と一緒に遊園地を楽しむことになった。一人で楽しむことにならなくて嬉しい限りである。

「そういえば四人で来たの?」
「ううん。博士と哀ちゃんも一緒だよー」
「あっちのベンチで休憩中なんです」

「それで、オメーはどうすんだよ。おっちゃんの依頼に付き合うのか?」
「うーん……皆と遊びながら毛利さんの手伝いをする!」
「いや無理だろ」
「ねぇねぇお手伝いって歩美にもできる?」
「出来るよ! カップルのデートの邪魔をすれば良いだけだもん」

歩美ちゃんに詳しく教えてあげると、楽しそうだから一緒にやると彼女だけでなく光彦君と元太君まで乗り気になってしまった。溜息吐いてるコナン君ごめんなさい。

博士と哀ちゃんに挨拶して次に向かうというジェットコースターに誘うが、二人とも下から見ていると言うので、皆で列に並びに行った。そこで偶々前に並んでいたのが例のカップルだったので驚いた。毛利さんは何をしてるんだ。


「……もうヤダァこんなところで」
「良いじゃん、周り餓鬼しかいてねーんだしよ」

目の前でイチャイチャラブラブするカップル。私も餓鬼に含まれてるんでしょうか。イラっときましたよ?

アイコンタクトで皆に合図をした。全員が真顔になりカップルをガン見する。二人は視線に気付き気まずくなったのか少し距離をあけ俯いた。よし地味な嫌がらせ大成功だ。コナン君に性格悪いと言われたけど、ムカついたんだもの仕方ない。


ジェットコースターを乗り終わり、カップルはコーヒーカップに向かった。私達も怪しまれないように付いていく。少年探偵団の三人は完全に探偵モードに入っていた。カップに五人で入りカップルを遠くから見る。なんかややこしいな。

「ここからじゃ何もできないねー」
「どうしましょうか」
「いっぱい回そうぜー」
「まわそまわそー」
「あんまり回しすぎると気分悪くな……うわっ!?」

コナン君が言い終わる前に回し始めた。主に私と元太君が。そして歩美ちゃんと光彦君も面白がってたくさん回す。回しすぎてよく見えないけど、私たちのカップが一番回ってるんじゃないかな。

「回しすぎだ! バーロォォォ……!」


コーヒーカップを降りて出口に向かう。足がふらふらになりながらも、作戦を決行する。バレないように前を歩く彼氏の解れた靴紐を踏んで転かす。派手に転んだので割と大きな音がしたが気にしない。

「いってー」
「もー、何してるのよダサいわね」

……あれ、私めちゃくちゃ性格悪くないか? 大丈夫? 皆引いてない? あ、引いてる人一人いたわ。

「……」
「いや何か言って」
「やる事ガキくせぇなって思ってよ」
「コナン君の方がガキじゃん。って眼鏡どこいったの?」
「あり?」

どこかに行ってしまった眼鏡をコナン君と探す。コーヒーカップ回しすぎて飛んで行ったんだな多分。あ、あそこに落ちて……「バリィッ」


「なんか踏んじまったわ」
「ちょっとそれ誰かの眼鏡じゃない?」
「こんなダッセー眼鏡つけてるやついねぇだろ。どっかの景品とかじゃね?」
「それもそうね」

カップルは割れた眼鏡を気にせずに笑いながら行ってしまった。隣から黒いオーラが漂っているのが分かる。だめだこれめっちゃ怒ってる。

「……あ、あのコナンく……」
「おっちゃんの依頼ってあいつらを別れさせることだよな?」
「ハイ」
「俺も協力するぜ」

これカップル死ぬんじゃないか。

それからは大変だった。暴走したコナン君はお得意のサッカーでカップルが休むベンチの脚を壊したり、探偵団の三人はくっつきながら歩く二人の間をわざと通ったり。


様々な嫌がらせをした私達の元へ駆け寄ってきた毛利さんは、皆の頭に拳骨を落とした。


「別れさせんじゃねーって言ってんだろうが!!」

尾行していたのか否か、何故か疲れ果てていた毛利さんの声が響き渡った。因みにカップルは別れるどころか、より愛が深まったらしい。


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