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私に紹介したい人がいる、とコナン君からメールが来ていた。そして俺の家まで来てほしいと。

俺の家ってことは、工藤邸で良いんだよね? 外には誰もいないし家に入って待っているのかなと思い、呼び鈴を鳴らす。

「永愛姉ちゃん、入って」
「あ、はい」

少し待って扉が開いた。顔を覗かせたのはコナン君で、手招きをしながら中に入るよう言われた。素で話さないって事は彼の正体が知られていない人が中にいるのかな。

リビングには初めて見る顔……眼鏡をかけた高身長のイケメンだった。最近会う人はイケメンばっかりで目の保養だけど、キラキラしてて目が痛い。

「新一君のご家族の人?」
「……。あなたは?」

「昴さん、この人が新谷永愛さん」
「貴女が例の」
「えっ」

例の、何!? 怖いんだけど!? 何言ったのコナン君。

「それでこの人が沖矢昴さんだよ、永愛姉ちゃん。東都大学の院生なんだって」
「う、うん。よろしくお願いします……?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ねぇ、なんで私呼ばれたの……?」
「知り合っててお互いに損はないかなと思って」
「どういうことなの」
「まぁまぁソファにでも掛けてゆっくり話しましょうか」

何なのこの人……、沖矢さんだっけ? マイペースなの? ほんと何で呼ばれたんだろう。

「永愛さんと呼んでもよろしいですか?」
「えっ、えぇ、はい」
「そんなに緊張しなくても昴さんは怪しい人じゃねーよ」

沖矢さんには聞こえないようにと小声で話しかけてくるコナン君だが、私が緊張しているのはそんな理由ではない。

「いや、彼イケメンだから緊張しちゃって。あ、でも好みドンピシャなのは安室さん」
「…………は?」
「え?」

真顔で、は?って言われた! は?って!!

「昴さん、やっぱりこの人頭おかしいから帰ってもらうね」
「え、ひどっ」
「君が女性に対してそんなに毒を吐くなんて珍しいですね。よっぽど仲が良いようだ。彼女には何かあるのかな?」
「ごく普通の一般人だよ」
「ホォー。教えてくれませんか」
「本当だって」
「残念ながらただの一般人です」

ジロジロと沖矢さんからの視線が痛いけど、本当に私はしがない人間だ。

彼が淹れてくれたお茶を飲んで、会話を続けた。彼は最近工藤邸に住むことになったらしい。見知らぬ人を自分の家に住まわせるなんて新一君心広すぎじゃない? それとも私に隠してるだけで実は知り合いだったりするのかな。


********************


すっかりと日が暮れた帰り道、家まで送ると沖矢さんに言われて初めは断るも引かないのでお願いした。コナン君と三人なら耐えれるかと思っていたのに、阿笠邸に用があると言ってコナン君は行ってしまった。

「今日はありがとうございました」
「あ、いえ。こちらこそ」


ーーーーやっ!

突然何処からか誰かの声が耳に届いた。足を止めて耳をすます。隣の彼も自分と同じような行動をしている。

「何か聞こえませんでした?」
「えぇ、あの公園からでしょうか」

公園のトイレに音を立てないように近付くとその声は大きくなっていく。嫌がる女性の声と荒い鼻息の音。多分女性が危険な目に遭っている。

「ここですね。永愛さんは待っていて下さい」
「え、一人で大丈夫ですか?」
「はい。女性を危険な目に合わせるわけにもいきませんし」

男性とはいえ沖矢さんは一般の大学院生。もし相手が危険物を所持していれば、一人で助けに行くのは危険だ。待っていろと言われたが大人しく待ってはいられない。彼がトイレに入って行くのを確認し、窓のある裏側へと回った。万が一の事を考えてだ。

少しすると言い争う声が聞こえた。そして目の前の窓が割れ、中年男性がその窓から飛び出した。

「クソッ!」
「何してるのおじさん」
「!? ……そこを退け!」

焦った顔をした男性が私に向かって拳を振り下ろす。どうしてこう、私っていつもいつも次の標的にされるのかな。

「とりゃあ!」
「ぐぁっ!!」

男を転ばし押さえつける。耳に届いたのは私の名前を呼ぶ沖矢さんの声とサイレンの音。良かった、一件落着だ。



被害者の女性から何度もお礼を言われ警察の人からも解放された後、また昴さんと並んで歩く。

「……やはり貴女は只者ではないようだ」
「えっ、いやいや! 私より蘭ちゃんの方が強いですし」
「力はそうかもしれませんが、永愛さんは観察力や状況判断力が優れている」
「そうですか……?」

そんな凄い人間じゃないのに褒めまくられると、照れるというより反応に困るな。

「ですが、あまり危ない行動をするのはやめて下さい。あの時待っていて下さいと言いましたよね?」
「ご、ごめんなさい」
「破った罰として……」
「え"っ」
「酒の相手でもしていただきましょうかね」
「へ、あぁ。それくらいなら」

罰って言うから何をさせられるんだろうと身構えていたのに気が抜けた。良かった。お酒の相手かぁ。でも私の年齢教えていないはずなのに二十歳以上に見てくれたんだなぁ。いつも高校生に見られるから逆に珍しい。

「私の歳、コナン君に聞いたんですか?」
「いえ、聞いてませんよ。まぁ確かに貴女は実年齢より幼く見えますね」
「え、じゃあどうして……?」
「なんとなく、ですかね」

なんとなく……。幼く見えるのに何故か年齢が分かる。もしかして私には隠しきれない大人のオーラが漂っているのかな。

「もしかしたら」
「え?」
「もしかしたら……、以前どこかで会っているのかもしれませんね」


そう言って彼は不敵な笑みを浮かべた。

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