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俺はいつもの様に宝石を盗むとじーさん、鈴木次郎吉に予告状を出した。時間は20時きっかり。今の時刻は19時。予告時間までに周りの人間に変装して宝石に近付かなければならない。さーて、今日は誰に変装すっかな。

天井の上からパーティー会場を見ていれば、入ってくる三人の女性と坊主を見つけた。

「わぁー! すごい! これ全部食べて良いの!?」
「良いけどアンタねぇ、全部は無理でしょうよ」
「永愛姉ちゃんなら全種類はいけるんじゃない?」
「あんまりはしゃいじゃ駄目よ」

永愛のやつ年下になめられてんじゃん。ケケケッ。よし、今日はアイツにすっか。


店員に変装しパーティー会場に入る。幸せそうに食べる永愛のドリンクに睡眠薬を気付かれないよう慎重に入れる。誰にもバレてねーな。

「どれも美味しいー! コナン君も、ほらあーん」
「えっ、じゃじゃあ、あーん」

あんの名探偵、ガキのくせに生意気なことしやがって! あ、永愛がドリンクに手を伸ばした。

「……」
「どうしたの? 永愛姉ちゃん」

さぁー飲め飲め。手にしたそのオレンジジュースを飲めば次第に眠くなってくる。眠った途端、俺とお前はチェンジだ!

「オレンジじゃなくてグレープが飲みたくなってきた!」
「……あぁ、そう」

なっ!? 飲まねぇのかよ! アイツ運が良いというか、変に勘が良いんだよな。仕方ねぇ別の手段で行くか。


「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「迷うんじゃないわよー」
「はーい」

トイレに向かう永愛の周りに誰もいないのを確認し、催眠スプレーを片手に曲がり角で待つ。次はしっかり眠ってもらうぜ。

「お手洗いお手洗い、こっちかなぁ」

曲がってきた瞬間、スプレーを永愛の顔面にかけた。

「うむっ!? な、何を……!」
「へっ!? んなぁ!」

ドーンッ!!

「……っつー、つえーなオイ。背負い投げなんてよぉ」

催眠スプレー掛けられて咄嗟に背負い投げする女なんかいるか? 背中がいてぇ。

眠る永愛を横抱きにして誰も居ない部屋のベッドへ寝かせる。あとはこいつに変装して侵入すれば俺の計画通りだぜ。

「スー……ぅん」
「……」

ごくりと咽喉が鳴る。穏やかな表情で眠る彼女が無性に愛しく感じた。

「……益々綺麗になっていくな。ずっと俺がオメーの側で他の男から守ってきたことも知らねぇだろ。年上のオメーを守るのは一苦労だったんだからな。……、誰かの手に渡ってほしくねぇ」

俺は静かに寝息を立てる彼女の唇に自分の唇を近付けた。しかしその時、永愛の電話が鳴った。

「もしもし?」
『大丈夫? 遅いけどお手洗い迷った?』
「うん。ちょっと迷ってた。でも大丈夫、今から戻るね」

ふぅー、と息を吐く。あっぶねー、キスしちまいそうになってた。眠る女にしようとするなんてどうかしてるぜ。どんどん綺麗になっていく永愛を見て焦ったのか。

気持ちを切り替え永愛に変装して部屋を出る。誰も入ってこれないように部屋の鍵もちょっと細工しておいてっと。


「ごめんお待たせー」
「心配したよ」


さーて、ショーの始まりだ。


********************


「今回もハズレか」

「んんっ」
「おはようございます、眠り姫」
「えっ、キッド? あれ私パーティでキッドの予告時間まで待ってて、それで……」
「えぇ。少し貴女には眠っていただきました。その間に私が貴女に変装し、この宝石を盗んだという訳です」

寝起きだからか今の状況を理解出来ずにボーッとする永愛。何故か手招きされたので近づくと、腕を掴まれあろうことかシルクハットを取られる。

「捕まえた! あれ……か、いと?」

やっベー。まさかこいつがこんな行動に出るとは思ってなかったから気抜いてた。

「あぁこの変装ですか。貴女の幼馴染に変装させていただきました」
「快斗に変装?」
「幼馴染はもう一人いましたよね」

ボンッ

「青子! どうして」
「言ったでしょ、変装が得意だって」
「すごい。声まで青子だ」

すごいすごいと拍手する永愛。何とか誤魔化せたみたいだな。にしても呑気なやつ。

そろそろ帰るか。宝石を永愛に渡して元の姿に戻る。あ、その前に言うことがあるんだった。

「前にお伝えした希望通り白いビキニ、いや白い下着を着けて来てくださりありがとうございます」
「どどどうして下着の色をっ!?」
「では、また」
「ちょっと! 宝石!」

暗くなった空をハンググライダーで飛ぶ。顔を真っ赤にして叫ぶ彼女は可愛かった。


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