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バスジャックの事件の後、米花町の近くまで警察の方に送ってもらい、赤井さんと昼食を食べることになった。我慢だ我慢。今日で赤井さんとは会わなくて良いんだから。

場所は地下のイタリアン料理店。ファミレスで安く済ませようとしたけど、ファミレスは嫌だと断られた。


「はい! 何でも頼んでください!」

やけくそで言うと赤井さんはパスタやらピザやら他にも色々と注文した。遠慮は無いらしい。さようなら今月のバイト代。注文を受けた店員さんが去ると赤井さんはまた口を開いた。

「歳はいくつだ?」
「女性に歳を聞かないで下さい」
「見たところ、17か18ぐらいか」
「20です」

やっぱり高校生に見られる。子供っぽいんだろうなぁ。でもそんなにはしゃいでいるわけでもないし、あ、見た目か。服が子供っぽいのか!?

「20か。なら酒は飲めるな」
「まぁ一応」

お酒が飲めることを聞いて何かあるのか? 正面にある顔を見つめても何を考えてるのか全く分からない。

見つめてみて分かったけど、赤井さんって整った綺麗な顔してるなぁ。でもあんまり寝れてないのかな。クマが酷いし。キツい目つきがマシになったらモテるだろう。今でも十分かもしれないけど。ってなに考えてるんだ私。


「お待たせいたしました」

店員さんが料理をテーブルに並べてくれる。私はパスタだけを頼んだけど、ピザも美味しそう……。

「そんな物欲しそうな目で見るな。勿論食べていい。君の奢りなんだからな」
「むっ、そうですね。じゃあいただきます」
「そうしてくれ」
「あの、どうして今日ご飯に行こうだなんて言ったんですか?」
「そうだな……。強いて言うなら君と話がしたかった」

「私、自分で言うのも何ですけど頭がキレる探偵や警察でもなければ、貴方みたいに危険な物を所持してるわけでもない、そこら辺にいるただの学生です」
「感興をそそるような人物ではないと言いたいのか。だが何故か君の何かに惹かれる。それだけではダメだろうか?」
「意味がわかんないです」

それに返事は無く彼は黙々とパスタを食べていた。そして何か思い出したかのようにポケットに手を入れ紙を取り出した。

「この間は断ったが、これを受け取ってくれ」

渡されたのは連絡先が書かれた紙だった。多分彼のものだろうか。返すのも悪いし一応受け取った方が良いのかな。こっちからは連絡することはないだろうけど。

「赤井さんに用事なんてないと思いますけど」
「気が向いたらで良い」
「そう……ですか」


そこから会話はなく料理を食べ終わりお会計に進んだ。しかしお金を出そうとすると店員さんは首を横に振った。

「お代は先程の男性からもう頂いております」

えぇ!? 赤井さんが払ったってこと? いつの間に。もう店の外にいるし。

「ごっ、ごちそうさまでした!」

店員さんにそう言って外へ出る。そして煙草に火をつけた赤井さんに声をかけた。

「私がご馳走するって言ったじゃないですか!」
「君はまだ学生だろう?」
「そうですけど、この前のお礼です!」
「お礼か……なら次はバーに飲みに行かないか? 良さそうなバーを見つけたんだ」
「つ、次、ですか」
「嫌か?」
「……嫌です。だって赤井さんと関わると危ないような気がするんですよ」
「ホォー、君は察しが良いな」

分かってたことだけど、否定しないと言うことは自分は危険人物と言っているようなものだ。

「ということでお断りします。今日はありがとうございました」
「借りを返すんじゃなかったのか?」
「赤井さんが勝手に払ったんじゃないですか! この前だって貴方がっ!?」

曲がってきた車に轢かれそうになる。しかしグイっと腕を引っ張られ、赤井さんの腕の中に収まった。煙草の匂い。初めて会った時もこの匂いが鼻をかすめたな。

「大丈夫か? 顔も赤いようだが」
「……だっ、大丈夫です!」
「貸しが増えたな」
「ウッ!」
「もう少し抱き合っておくか?」
「おきません!!」

昨日はキッドに抱き締められるし今日は赤井さんだし、恋愛経験が乏しい私はドキドキさせられっぱなしだ。顔を下に向けながら赤井さんの胸を押して離れる。早く顔の熱冷めろー。

「からかうのはやめて下さい」
「別にからかってはないさ」

「前に貴方は何者かと聞いた時、答えられないって言ってましたけど、赤井さんは良い人ですか? 悪い人ですか?」
「答えにくい質問だな。見方によってはどちらでもあるからな。君にとっては良い人でありたいと思っている」

また曖昧な返事だ。信じて良いのか信じてはいけないのか分からない。それにしても謎が多い人だ。

互いを見つめていれば彼は目線を外し、ポケットに手を入れ携帯を取り出した。バイブ音がしたので多分電話だろう。

「何だ。……あぁ、了解した。すぐに向かう。……すまない、仕事だ」
「いえ、ここで別れるつもりだったので大丈夫です。えっと、お仕事頑張って下さい」
「ありがとう」

彼は口角を上げて早足で立ち去った。何の仕事かとても気になるけど、関わったらきっと後悔する気がするからやめておく。でも、先程渡された連絡先は一応登録しておいた。

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