「二人とも大丈夫だった?」
「永愛ちゃんもでしょ? 私達は大丈夫」
「男共、急にどっか行って何なのよって感じよ」
二人とも何ともなかったようで安心した。
「どうしたのよ、そのバスタオル」
「この水着選んでくれた店員さんがさっきくれたの。風邪を引いちゃいけないからって」
「へぇ、優しいー」
「それ永愛に気があるんじゃないの?」
「えぇ!? 違うと思うよ!」
「アンタもやるわねー」
「ちっ違うよ! かき氷!買ってきたから食べよ!」
かき氷を二人に渡してガツガツ食べる。コナン君の分も食べてしまったけどまぁいい事にしよう。氷食べたら熱かった顔の熱も冷め、さっきより冷静になった。
「……ナンパなんて初めてされた」
「えぇ!? 永愛ちゃんが?」
「ははーん。アンタを守っていたボディーガードでもいたのかしらねー」
「ボディーガード?」
「絶対そうよ! わぁー、気になる。」
そんな園子ちゃんみたいなお嬢様じゃあるまいし、ボディーガードなんているわけないのにな。
「そろそろ着替えて中でゆっくりする?」
「そうね。何か飲み物でも飲みましょ」
「パフェとかあるかなぁ」
「食べてばっかりだと太るよ」
「は、はい」
蘭ちゃんが、厳しい。
********************
シャワーを浴びて私服に着替える。髪を乾かす二人に先に行くと声を掛けて、船の中を探検する事にした。
それにしてもコナン君どこに行ったんだろう。蘭ちゃん達もいつの間にか居なくなってたって言ってたし。何か面白いものでも見つけたのかな。
面白いものと言えば、宝石が展示してあるんだっけ。行ってみよう。
宝石の周りには沢山の乗客が見ていて、その中にコナン君がいるのを見つけた。
「コナン君も宝石見にきたの?」
「わっ、う、うん。まぁそんなところ」
「キラキラしてて綺麗だねぇ」
何故かコナン君は落ち着かない様子で辺りを見回していた。もしかして先日哀ちゃんに教えてもらった組織の人がいるとか? いやいやそんな危険な人がいるわけがない……と思いたい。
「どうしたの? 誰か探してる?」
「っ! ……僕の勘違いかもしれないけどキッドがこの船に乗ってる気がするんだ」
「何だ、キッドか」
「え?」
「あ、いや何でもない! キッド、あの宝石狙ってるもんね」
良かったぁ。キッドなら安全。ん? 安全なのか? 安全かどうかは置いといて、どうやらコナン君はキッドを探してるらしい。
「前に永愛姉ちゃんの家のベランダにキッドが宝石渡しに来たって言ってたよね?」
「うん。それが初対面だね」
「ここにキッドっぽい人いなかった? 何でかは分からないけど、永愛姉ちゃんの周りにキッドが来る気がするんだ」
「えぇー、それはないんじゃないかなぁ。それにキッドって変装が得意なんでしょ。私じゃ分からないよ」
ポケットにあったスマホが振動したので確認すると、蘭ちゃんからカフェまで来てとメールが届いていた。カフェまであるんだ。ということはパフェがあるかもしれない。
「コナン君、パフェ行くよ」
「え、パフェ?」
「あ、違う。カフェ!」
宝石が展示している部屋から出てカフェに向かおうとしたが、コナン君がまた消えてしまったのに気が付く。向かおうとしてた方とは別の道には立ち入り禁止と書かれている。まさかこっちに行ったんじゃないだろうな。
「失礼しまーす……」
誰も見ていないことを確認して進入禁止ゾーンに入った。もしコナン君が見つからなくて私が誰かに捕まったら海に投げられるんじゃないかな……。
ゆっくりコナン君がいないか確認しながら、恐る恐る曲がり角を曲がると、ドンッと誰かとぶつかってしまった。
「おっと、申し訳ございません。お怪我はありませんか?」
「す、すみません……あっ」
よろめいた身体を支えてくれた相手は、先程の店員さんだった。よく会うなぁ。
「またお会いしましたね」
「は、はい。あのもう大丈夫なので、離していただけると嬉しいです」
片手は腰に手を回され、反対の手は私の腕を掴んでいた為、とても距離が近かった。何か楽しまれてる気がする。
「そうですか、っ!」
「!?」
急に足が地面から離れた。正確には店員さんが私を抱きながら飛んだ。それと同時に凄いスピードでサッカーボールが横切る。地面に足が付くとコナン君が姿を現した。
「探したぜ。怪盗キッド」
「ホー……。にしてもいきなり攻撃してくんのはひでぇんじゃねーか?」
「き、キッド? この人が!?」
ボンっと店員さんが真っ白なキッドに一瞬で変わってしまった。さっきのボールといい、突然のキッドの登場といい頭がついていかない。
「そいつから離れてもらおうか」
「お断りするぜ。こいつは俺のお気に入りなんでね」
「何っ!?」
ギュウッと抱き締める腕が強まる。何で、どうしてキッドに抱きしめられてるの私!?
「対決はまた明後日だ。名探偵」
「永愛を離せ!」
「まぁこのまま攫っていくわけにもいかねーしな」
私から一歩分離れたキッドは、私の耳に口を近づける。
「次は白いビキニでお願いしますね」
「なっ! ちょっ!?」
混乱して慌てる私の手を取り、チュッとそこにキスをした。顔が一気に熱くなる。
そして一瞬でキッドは近くのドアから外に出た。コナン君は追いかけようとするが、既にキッドは空を飛んでいた。
「クソッ! 永愛姉ちゃん、本当にキッドと会うの二回目なの?」
「うん。そのはず……」
もうキッドの姿は見えなくなってしまった空を見て、本当にそうなのか分からなくなってしまった。私、キッドと会うの二回目、だよね?