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帝丹高校の学園祭当日、蘭ちゃんが出る劇の時間まで模擬店を回っていた。……一人で。

右手にはクレープ、左手にはフランクフルト、そして持っている袋の中には焼きそばとたこ焼き。寂しくなんてないんだからね! 美味しいもん。

劇の内容どんなのだったっけな。園子ちゃんが超ラブロマンスって言っていたのは覚えてる。時計を見ると始まる十五分前だった。急がないと席がなくなる。


体育館の中には人でいっぱいだった。どうしよう。どこか席空いてないかな……あ、あれはコナン君! あと和葉ちゃんや毛利さんもいる。

「席空いてる?」
「空いてるよ」
「あ! 永愛ちゃんやん! 座り座りー」
「何だ、お前も観に来たのか」
「こんにちはー。蘭ちゃんが主役やるって聞いて観に来ちゃいました」

コナン君の隣に座るがいつもより大人しい感じがする。

「コナン君、風邪ひどいの?」
「ちょっと咳が出るくらいだよ」

急に照明が消え真っ暗になったので、辛くなったら言ってねとだけ言っておいた。

劇は始まってからが大変だった。蘭ちゃんが可愛いのは分かるが、毛利さんが大声を出して娘を褒めまくったり、和葉ちゃんはこれが演技だということを忘れ悪い奴らを倒せと大声を出したり。

近くの席に座っているのが恥ずかしい、とたこ焼きを食べながら頭を抱えた。
黒い騎士が蘭ちゃんを助けに来て抱き合っているシーンをうっとりと観ていると、隣の席に誰かが座り私のたこ焼きを一つ取った。

「なっ! ちょっとたこや……」
「シッ」

帽子を深くかぶった青年は口の前に人差し指を立てた。誰この人。たこ焼き食べられたのに静かにしてろってことですか?

「私のたこ焼き返しっ……」
「キャアアアアア!」

隣の青年に文句を言ってやろうとした瞬間、私の台詞と被って悲鳴が響き渡り、男性が倒れているのが目に入った。


男性は殺害されたようで、すぐさま警察が駆けつけ目暮警部や高木刑事が毛利さんと話しながら捜査を進めていた。
隣にいたたこ焼き泥棒はペラペラと自分の推理を口に出し、周りの視線が彼に集まる。あれ、この関西弁の話し方……。という事はもしかして。

推理していく彼に目暮警部は、何なんだね君は? と聞き、蘭ちゃんやコナン君を見て彼は言った。

「なんやもう俺の事忘れてしもたんか?」

もしかして言っちゃうの? 新一君になりきれていない関西弁の服部君のまま……。私フォロー出来ないよ。はぁ、頭が痛くなってきた。

そして彼は周りに自分が工藤新一だと言い放った。ざわつく周りに私はどうする事も出来ず、変な空気が流れる。

「何してんの? 平次」

服部君の前に現れた和葉ちゃんは、彼の肌につけたパウダーを取っていた。やっぱり和葉ちゃんにバレたじゃないか。そういえば彼女は学園祭に来ないはずじゃなかったのだろうか。

正体がバレてしまった服部君は私を不満そうな顔で見ていた。いや、私にどうしろと。



調査は進み、探偵さん達が殺人のトリックを解くのを私は焼きそばを食べて待っていた。服部君はあとは証拠を見つけるだけらしい。しかし、コナン君は今日は全く動かない。

「今日は事件に首突っ込まないなんて珍しいね」
「ケホッ、ちょっと風邪で調子悪くて」
「そっかぁ。ねぇ、あなた誰?」
「……何言ってるの? 僕はコナンだよ」

ジロリといつもより鋭い目で下から見られる。誰だろうこの子は。もしこの子がコナン君ではないと仮定すると、小学生に変装できるのは同じ小学生の子供。

という事は、私の知っている中では少年探偵団の四人のうちの誰か。幾ら何でもコナン君が殺人事件の推理をしていないだけなのに、考え過ぎだろうか。

「お前は呑気やのぉ。さっきから食べてばっかりで」
「私にはトリックなんて解けないし、待ってたらお腹減るし。あ、さっきのたこ焼きの分、ちゃんと返してね」

「ケチくさっ。ちゅーか協力せぇ言うたやんけ」
「あれは肌が白くなったただの服部君! あんなんじゃ協力したくても出来ませんー!」
「なんやとー!?」

お互い睨み合っていると、それを見ていた和葉ちゃんが眉を下げて「仲えぇなぁ、アンタら」と言っていたのでバッと服部君から距離をとった。

「全然仲良くないからね! あ、ちょっとゴミ捨ててくる」
「ちょお待てや!」

気を遣って二人から離れようとしたのに、彼は私の方へと駆けてきた。なので小声で「和葉ちゃんの傍に居てあげてください」と言えば、訳の分からない顔をしていた。ほらまた和葉ちゃんがこっちの様子をうかがっている。

「もう、何で分かんないのかな。とりあえず戻って」
「訳分からんこと言うなや。それより工藤の奴、今日は全然推理しとらんみたいなんや」
「あ、そうなんだよね。コナン君、今日は違う子みたい」
「せやのぉ」
「服部君、あとは証拠だけなんでしょ? もう一息だファイト!」

彼の両肩を後ろからバンッと勢いよく叩くと、骨が折れたと言われたので更に強く叩いてやった。



「これより我々は、本件を自殺と断定して……」

「いや、これは自殺じゃない」

目暮警部の言葉を否定し、現場の中心へと歩いてきたのは劇で蘭ちゃんの相手役をしていた黒衣の騎士だった。その騎士が誰かも分からないのに、何故こんな風に胸騒ぎがするのか、自分でも理解出来なかった。

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