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もうすぐ蘭ちゃんや園子ちゃんが通う帝丹高校の学園祭だというのに、コナン君が大怪我をしたらしい。なんでも、手術が必要なほどの大怪我だったとか。

今私は米花総合病院へ向かって走り、途中でお見舞いにとフラワーアレンジメントを買った。博士からの電話でコナン君が入院してる事を教えてもらったのだが今日は手術をしてから十日後らしい。連絡が遅すぎやしないか。

病院の入り口付近で蘭ちゃんのお父さんの毛利探偵を見つけたので、声を掛けるとコナン君のいる病室を教えてくれた。毛利さんによると蘭ちゃんの血のお陰でコナン君は助かったらしい。まだブツブツと言っていたが早くコナン君の様子を見に行きたかったので一声掛けてその場を後にした。


「あれ? 永愛ちゃん」
「ほんまや」
「あら、久しぶりね」
「みんな久しぶり!」

病室に向かう途中に蘭ちゃん、園子ちゃん、和葉ちゃんの三人に会った。しかしどうして大阪に住んでいる和葉ちゃんまでいるんだろう。

「平次がお見舞いにて百合の花買うてきてな。ありえへんやろ? せやから今から別の花買いに行くところやねん」
「そっかぁ。大変だね和葉ちゃんも」

「それコナン君のお見舞い?」
「うん、そうなの。あっ、蘭ちゃん。お父さんから聞いたよ。貧血とか大丈夫?」
「ありがとう大丈夫よ。もう十日も経ったし」
「良かった。じゃあ私これ届けてくるね」

三人と分かれてコナン君の病室を探す。江戸川コナン、ここか。ドアを開けようとしたが中で知っている声がした為、入るタイミングを見計ろうとドア横の壁に体重を預けた。

「あの姉ちゃんに正体バレかけてるそうやないか!」

この声は服部君だ。多分中には彼とコナン君の二人。しかもこの内容、多分聞いちゃだめなやつだ。

「バレかけてんじゃねー。バレてんだよ!」

えっ、と小さく声を漏らしてしまった。幸い中には聞こえていなかったようだ。
服部君の言う姉ちゃんって、蘭ちゃんの事だよね。つまり蘭ちゃんにコナン君の正体が新一君だとバレてるということ。

「待ってるんや……。おまえの口から直接、話聞かせてもらうんをな」

そっか。蘭ちゃんは分かってても本人に直接言わないんだ。本人に聞いてもはぐらかされるし結局私は本人には聞かず、服部君に教えてもらったわけだけど。

「……ったら腹くくって、……組織の事や……の体を小さした薬……ちゃうか?」

「微妙に聞こえない……」

でも何となく分かった。私が推理していたものと繋がった。しかしこれ以上聞くのは駄目だ、と思い少し離れたところにあったソファに腰掛けて会話が終わるのを待つことにした。


数分後、服部君が病室から出るのを確認した。キョロキョロと辺りを見回していて、離れた場所にいたにもかかわらず私と目があった、気がした。ズタズタとこちらに歩いて来る顔は、心なしか怒っているように見える。

「よお、元気にしとったか?」
「超元気です。服部君も元気そうだね。めちゃくちゃ笑顔だし」
「お前この前の事忘れとんちゃうぞ?」
「何なの、君はヤクザなの?」

ガシッと頭を片手で捕まれ、彼の顔が目の前でニコニコしている。こうやって脅してるヤクザ、ドラマで見たことあるよ。

「この前のはちゃんと謝ったじゃないですか」
「次同じことやったらどつくからな」
「え? どつく? えっと、そんなに怒らなくても?」

よく分からなくて首を傾げば、「まぁえぇわ」と目の前で溜息をつかれた。

「お前さっきの聞いとったやろ。工藤には分からんでも俺にはバレバレやで」
「入って行くタイミングを見失ってしまって」
「まぁお前も分かったやろ。俺に協力せぇや」
「なんにも分かってませんが。何する気なの」
「よーお聞いとけよ」

彼が言ったのは、帝丹高校の学園祭に新一君の変装をした服部君が現れる。そして周りの人、特に蘭ちゃんにバレないように協力しろという事だった。

蘭ちゃんを騙す側なんて正直やりたくないけど、危ない人達から彼女を守るためにも協力した方が良いのだろう。……あれ? 私は何故? そういった事なら私危険じゃない? 私そんなに強くないぞ。ていうか寧ろ蘭ちゃんの方が強いよ。今のところ何もないから別に良いけど。

「じゃあ和葉が戻ってきたら帰るさかい、当日はちゃんとやれよ」
「あ、流石に和葉ちゃんにはバレるでしょ」
「和葉には学園祭に行かんよう言うとく」

どっちにしてもバレると思うけどなぁ。変装って言っても服部君が新一君にでしょ。肌の色が全然違うし顔が似ているというわけでもない。快斗ぐらい似ていたら上手くいくんだろうけど。

「そうだ私コナン君に会ってくるね。手術したって聞いて心配だったし」
「おー。アイツ元気にしとるで」

一緒に来るのかと思いきや、服部君はそのままソファに座っていた。病室のドアをノックすると返事が聞こえたのでドアを開ける。コナン君はベッドの上で上半身を起こしていた。

「こんにちは」
「永愛姉ちゃん! どうしてここに?」
「博士から聞いてね。手術したんだってね。体は大丈夫? これお見舞い」
「そうなんだ。体はもう大丈夫だよ! ありがとう」

元気そうでなによりだ。お花を窓の近くに置き、ベッドの横にあったイスに腰掛けた。

「さっきまで服部君と深刻な話でもしてた?」
「えっ!? 別に、普通の話だよ! ……聞いてた?」
「ううん。服部君が変な顔して出てきてたから、何となくそう思っただけ」

ほとんど聞いちゃいましたなんて言えない……。コナン君はホッとした顔をしていたけど、そんな表情されると怪し過ぎるよ。何かあるって言ってるようなもんじゃない。とりあえず私が盗み聞きしていた事は、服部君の言う通り彼にはバレてなかったと思って良いみたいだ。

「永愛姉ちゃんって帝丹高校の学園祭行くの?」
「うん! 蘭ちゃんが劇で主役やるんでしょ! 観に行かなくちゃ」
「そっか」
「コナン君も行くんでしょ? 楽しみだね」

うん、と頷いたコナン君は浮かない顔をしていたが、何も聞かなかった。

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