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雨があがって空は雲ひとつなく晴れていた。しかし私は服部君に買ってもらった花柄の傘を広げ彼の隣を歩く。

「もう雨降ってへんで」
「うん。でもこの傘可愛くて。ほんとありがとう服部君」
「そりゃ良かったのぅ」

傘の内側から模様をもう一度眺めて傘を閉じた。自然と上がる口角を抑えることができず閉じた傘を抱きしめると、隣の彼も微笑んでいた。普段は怒ってばっかりだけど、やっぱり笑うとかっこいい。ふと彼を見ていて疑問に思ったことを口にした。

「服部君って和葉ちゃんと付き合ってるの?」
「んなわけあるかぁ。アイツはただの幼馴染じゃ」
「美男美女でお似合いだと思うけどなぁ」
「俺がイケメンっちゅーのは認めるわ。まぁ女は乳がデカイのに越したことはないけどな」

いきなりの下ネタに彼から離れて眉を寄せる。しかし既に彼の視線の先は私の胸元だった。それを知りバッと胸を抱えるように隠す。

「もうちょい成長させたらどうや?」
「そのうち大きくなるんですー!」

和葉ちゃんや蘭ちゃんよりは小さいけどあるのはある。ぺったんこではなく人並みにはある。きっと服部君の周りが大きい人ばかりなんだ。絶対そうだ。ハァ、と溜息を吐いて道行く人を眺めていれば、その中に見知った顔を見かけた。

「ごめん。用事ができた」
「はぁ? どこ行くねん」
「失礼な事言う人には教えませんー!」
「何やと!? ってオイコラ!」

幼馴染である快斗の方へと駆け寄り、彼の手をグイッと引っ張って走る。遠くでは服部君の怒鳴る声、近くでは快斗の驚く声が聞こえるがどちらも無視して走った。

「永愛! 何で走ってんだよ」
「逃げてるの!」
「誰かに追われてんのか!?」

近くの公園に入って足を止め快斗と向き合う。会うの久しぶりな気がするな、と顔を見て思った。焦った表情をした快斗は私の両肩を掴み口を開く。

「それで誰に追われてんだよ」
「いや、追われてないよ。友達と分かれただけ」
「友達ってさっき叫んでた関西弁の色黒男か?」
「うん。一緒に共通の友達の家に行く予定だったんだけど、快斗見つけたから走ってきちゃった」

良いのかよそれ、と呆れられてしまった。そして何かに気付いたのか、私の肩の上に乗った手に力が入ったのが分かった。

「それって、さっきの男より俺を優先してくれたってこと……、っいや何でもねぇ」
「当たり前でしょ」
「っ!」
「快斗は大切な幼馴染なんだから」
「……だよなぁ」

肩を落とし呆れ顔になった快斗は、公園のベンチに腰掛けた。公園には沢山の子供達が遊んでいて、ボールが快斗の足元に転がってきた。彼がボールを拾うと小さな男の子が謝りながら走ってきた。

スリー、ツー、とボールを片手にカウントダウンをする快斗に、私も男の子も首を傾げる。ワン! と言った瞬間ボールは鳩に変わり空に向かって飛んでいった。

「ちょっ、ちょっと! ボールで遊んでるのに鳩に変えたらダメなんじゃ……」
「にーちゃんすっげー!!」

男の子は目をキラキラさせて快斗を見ていて、一緒に遊んでいた友達を集まるよう呼び掛けた。ボール遊びは良いのか。ていうかほんとボールはどこいったの。彼の周りをジロジロと見ると、彼は子供達の注目を集め両手を広げた。

「マジックショーをご覧あれ」

子供達が彼のマジックに夢中になっている。その光景を見ていると私も何故か嬉しくなってきた。キッドみたい、といった子供の言葉を耳にし、キッドもそういえばマジックが得意なんだっけ、とテレビで見たのを思い出す。


不意にポケットに入れたスマホが振動したので離れた場所に移動し、画面には蘭ちゃんとの文字が映る。
もしもしと耳にスマホを当てると、蘭ちゃんは興奮した様子で私の名前を呼んだ。

『彼氏いるなら教えてよー!』
「え?」

『服部君が家へ来るなり、アイツ男んとこ行きよったーって言っててね。何の事か分からなかったんだけど、話を聞いてたらここに来る途中でその子が他の男性の所に走っていったって事らしくて。最初は和葉ちゃんの事なのかって思ったんだけど、永愛ちゃんの事らしくて。さっきからすっごい不機嫌なの。ふふっ』

「あぁ、ごめん。服部君に謝っててー。あと彼氏じゃなくて幼馴染。久しぶりだったから嬉しくて」
『そっかぁ、彼氏じゃないんだ。それにしても服部君ってば和葉ちゃんばかりだと思ってたけど、永愛ちゃんにも……』

蘭ちゃんはそこで話を止めたので、何を言うつもりだったのか分からなかったが、恐らく彼女は今ニヤニヤと笑っているに違いない。だってさっきからニヤけながら話してる声してるもん。

電話を切って快斗の元へ戻れば、こっちも解散した様子だった。子供達はまたボール遊びをしている。何処にボールを消してたんだろう。

「喜んでもらえて良かったね。ボールの手品、どうやったか教えてよ」
「あれを見破れないようじゃあ、永愛もまだまだだな」

手品の種を見破るなんて私には出来そうにない、と心の中で誇り顔に訴えた。



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