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ピンポーン、とインターホンが鳴る。日曜の朝っぱらから誰だろう。快斗か青子かな。そう思い部屋着のままドアを開けると、誰もいなかった。考えられるのはただ一つ。

「ピンポンダッシュ……」
「わぁ!」
「わぁぁぁ! なに!?」
「よっ! 来たったで」

ドアの影から声を上げていきなり飛び出して来た服部君。驚いて心臓がばくばく言ってる。そんなこと気にもしない彼は私を上から下まで見まわして言った。

「もうちょい可愛い格好したらどーや」
「サヨウナラ」

腹が立ったので素早くドアを閉めようとしたが、隙間に足を入れられ閉めれなくなってしまった。

「なにしとんじゃボケ」
「お帰り下さいー。ていうか何でいるの」
「永愛に会いに来たに決まっとるやんけ」
「なっ!」
「と言うのは冗談でーって…………そない赤ぅならんでも」
「なってない!」
「さっ、朝飯にすんぞー」

彼はドアを開けズカズカと家の中に入る。朝ご飯作ってくれるのかな。起きてまだ何も食べてなかったから作ってくれるなら、さっきまでの事は許してあげよう。しかし服部君はテーブルの前に座って動く気配がなかった。

「ねぇ服部君。私に作れと?」
「一つ作るんも二つ作るんも一緒やろ」
「食パンにバターで良いよね」
「もっと手の込んだもん作られへんのか」
「生憎料理は上手くないもので」

ほんとムカつくぞ。朝っぱらから色々と作ってられるか。食パンを二枚取り出してトースターに入れた。その間にテーブルを拭いて飲み物を用意する。服部君は手伝うわけでもなく、テレビをつけてニュースを見ていた。

「もう。本当何しに来たの?」
「工藤に用があったんやけど、ついでにお前んとこ寄ったろ思てな」
「いいよ。来なくて」

食パンが焼ける音がしたので取り出して皿に乗せる。テーブルに置くと「ほんまに食パンだけや」と言われたので褐色の手を抓ってやった。

「素直やない女やのぅ。友達おらんのちゃうか」
「服部君にだけです。とっ友達はそんなことないぞコラァ」
「何で喧嘩腰やねん。そういやぁ工藤が前に、永愛は友達がおらんから仲良うしたってって言うとったけど、もっと女らしいならなあかんで」

新一君、神か。ありがとう。でも言う相手間違ってる。女らしくとはこの部屋着と手抜きの朝ご飯を直せという事か。

「君こそ失礼なことばっかり言ってきて、普段からそんなのだと和葉ちゃんに嫌われますよ」
「あの女に嫌われようがどうでもええっちゅーねん」
「素直じゃないなぁ。ねぇ、そういえば何でうちの住所知ってるの?」
「昨日和葉からメールきたやろ。あれやあれ」

大阪へ観光に行った時に和葉ちゃんと連絡先を交換していて、昨日彼女からメールが届いていた。内容は年賀状のために住所教えてほしいとのことだった。何故この季節に年賀状? と疑問を浮かべながらも住所を打ってメールを返信した。もっと疑うべきだった。和葉ちゃんからのメールにテンションが上がってつい疑うのを忘れてしまったのだ。

「ちょおっと和葉の携帯借りて俺が送ったんや」

和葉ちゃんからの初めてのメールが服部君が代わりに打ったものだったとは……。悲しくなってきた。食器を洗いに立ち上がると、「早よ用意せぇよ」と言われたので頭にハテナマークが浮かんだ。

「どうして?」
「工藤んとこ行くからに決まっとるやろ」
「私も?」
「他に誰がおるんじゃアホ。どうせ暇やろ。一緒に出かけたる言うとんねん」
「左様ですかー。一人でお願いします」

「何処も行かんのやったらずっとこの家におろかなー。泊めてもらおかなー」
「……すぐ用意してくるね!」

素早く寝室に移動し服を決める。まさか脅してくるとは。恐ろしい脅しだった。適当に服をタンスからとって急いで着替えてメイクをする。そしてリビングに戻ると、服部君はくつろいでいた。

「出来たけど!?」
「ほな行こか」

鞄を持ち家のドアを開けると小雨が降っていたので傘を用意する。一本しか家に置いていないので、コンビニで買って行こうかと提案するが断られた。外を歩くと傘を差すか差さないか迷うような雨だった。しかし次第に強くなってきたので、後ろから傘を傾けると「貸せ」と言って私から傘を取り上げ横に並んだ。

「やっぱりもう一本いるじゃん」
「何本もあったら邪魔やねん。またすぐ止むやろうしな。あのカフェでも入るか」
「もう」

カフェに入り飲み物を注文する。何話せばいいんだろう。向かい合うのって気まずい。

「なぁ、何で工藤とあのガキが同一人物やと思ったんや」
「えー。言わなきゃ駄目?」
「お前の推理、気になんねん」
「……まず、コナン君が新一君の服を着て頭から血を流しているのを見たこと。それとコナン君の本性が新一君と重なること。あとは服部君がコナン君を工藤と呼んでいること。この三点だよ」
「成る程な……って俺があのガキを工藤って呼んでるんは、推理の目の付け所が似てるからで」

「服部君には真実を伝えてるんでしょ? 秘密にしてるのは、それを知ったらその人が危険になるから。どうしてそうなるのかは分からないけど、コナン君の頭を何かで殴ったって事は危ない人なんだなっていうのは分かる」
「名推理やで。探偵なったら良いんとちゃうか?」
「それは良いよ。あれ、認めて良いの?」

名推理、という事は私の推理が当たっていてこの事を認めたことになる。

「嘘付いてると、何かこう……モヤモヤ、イライラすんねん。やから工藤には秘密や。分かったか?」
「わかったわかった」
「じゃあぼちぼち行くか」


カフェから出ると雨はすっかり止んでいた。近くで叫び声が聞こえ二人で振り向く。その声のすぐ後に私達の前を男が走って通り過ぎた。

「引ったくりよー! 捕まえてー!」

「永愛、傘貸せ」
「え、はい」

閉じた傘を渡せば服部君はひったくり犯を追いかけた。私の近くに焦った顔のおばさんが息を切らして走ってきた。

「大丈夫ですよ。彼が捕まえてくれます」
「ふぅ、それならっ、はぁはぁ……安心だわ」
「ここで待ってましょう」
「えぇ」

彼を見るともう犯人との距離は近かった。私の傘を剣のように振るい相手を転けさせたが、犯人は素早く立ち上がりナイフを構えた。

「あの人が持ってるの、ナイフじゃない?」
「そうですね。大丈夫だと思いますけど、危なかったら私が助太刀しに行きます」
「え、あなたが?」

しかし予想通り服部君は犯人を負かし、通りかかった警察に犯人を任せていた。周りから拍手を受けながら、おばさんに取られていた鞄を渡すと何度もお礼を言われていた。

「すまん。この傘壊れてしもた」
「人助けのためだし仕方ないよ。でも新しいの買ってね」
「ヘイヘイ」

新しい傘を買ってもらってコナン君の元へと向かう。後に服部君は高校で剣道部に所属しているのだと教えてもらった。

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