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今日はパン屋でバイト。店の外で一番人気のクロワッサンを売る。場所は商店街のような賑わったところではなく、ちらほらと人が通る程度の道の脇にある。前の歩道が広くて歩道の向こうには車が走っている。

「あの人達は……」

真っ黒の服に身を包んだ男二人が歩道を歩いていた。何処かで見たことがあるような……。あ、トロピカルランドに来てた人達だ。彼等が店の前を通る時、「クロワッサンいかがですかー」と小さく言えば長髪の人と一瞬だけ目が合った。もう一人はサングラスをかけていたので此方を見たのかは分からないが、長髪の人はとても冷たい目していた。

そして二人は道路脇に停めていた車に乗って去って行った。何であんな所に外車があるんだと思っていたがあの人達のものだったのか。車まで黒なんてよっぽど黒が好きなんだなぁ。

「新谷さん。もう上がって大丈夫だよ」
「はい。お疲れ様です」

店の中から店長に声をかけられ、着替えに中に入る。朝から夕方まで入ってたから疲れた。そうだ一旦家に帰って、博士のTシャツを返しに行こう。クロワッサン持って行ったら喜んでくれるかな。


********************

博士の家に行くと哀ちゃんが迎え入れてくれた。中に入ると少年探偵団の子供達と博士がいた。

「こんにちはー」
「こんにちは! 永愛お姉さん」
「こんにちは」
「何か食いもんの匂いがすんぞ?」

挨拶をすると元気の良い挨拶が子供達から返ってきた。元太君は鼻が良いようだ。多分食べ物に関しては。

「哀ちゃんと博士にこの前のお礼と思って買って来たんだけど、たくさんあるから皆も食べてー」
「そうかそうか。すまんのぅ」

クロワッサンの袋を渡すと子供達と博士は喜んで食べていた。いっぱい買って良かった。

「貴女の服出来てるわよ」
「ありがとう。私もTシャツ持ってきたよ」

服を貰うとふわりと良い香りがして更に綺麗に畳んであって嬉しくなった。本当よく出来た子だなぁ。

「今日はコナン君いないんだね」
「あら、いるわよ」

哀ちゃんが答えるのと同時にガチャリとトイレの扉が開いた。何だお手洗いか。

「コナン君。こんにちは」
「こんにちは」
「コナンくーん! 永愛お姉さんがクロワッサン買ってきてくれたよー!」
「おー。だから良い匂いしてんのか」
「それ!」

歩美ちゃん達の方へ向かおうとするコナン君を指差すと、彼は「えっ?」と不思議そうな顔をした。隣にいた哀ちゃんも此方を見ていた。

「えっと、何が?」
「私にも……私にも、親しげに話してほしい!」
「?」
「彼女が言いたいのは素で話せって事なんじゃない? 猫を被るんじゃなくて」
「それ!」

ありがとう哀ちゃん。私が言いたかったのはそういう事だ。するとコナン君は困ったとでも言うかのように眉を下げた。

「いや、でもね永愛姉ちゃん」
「哀ちゃんは普通に話してくれるのに……」
「でも年上だしさ」
「服部君も私とは違う接し方だよね」
「……ボク永愛姉ちゃんのこと大好きだよ」
「えっ」
「親しくないからとかじゃないんだよ。ボクがその人にそうやって話したいんだ。だから接し方なんて関係ないんじゃないかな?」
「そっか! 変なこと言ってごめんね」

ギュッと抱き締めると彼は私の名前を呼んで腕の中で暴れた。腕を緩めてあげれば逃げるように離れる。

「上手く丸め込まれたわね」
「えっ、丸め込まれたの!?」

バッとコナン君の方を見ると、皆の方へ行ってクロワッサンを食べていた。一切目が合わない。

皆の飲み物を哀ちゃんと用意して持って行けば、クロワッサンは殆ど無くなっていた。彼女は博士の体調管理……というか体重管理をしているようで、食べ過ぎた博士にきつく注意していた。

「永愛さん、このクロワッサンとても美味しかったです!」
「良かった。今日はパン屋でバイトしてて、そのパン屋の一番人気なの」
「じゃあ次はうな重売ってる店でバイトして、うな重買ってきてくれよ!」
「もう元太君」
「バイト募集してたらね」

「そうじゃ! 新作のゲームが今朝出来たんじゃった」

博士の一言に子供達は飛びつき、博士は奥の部屋にゲームを取りに、子供達はテレビの前へと喜んで行く。ソファに残ったのは私とコナン君と哀ちゃんだった。最近この組み合わせ多いな。何か話題……店長がクロワッサン100個プラスで間違えて焼いてしまった話も、クロワッサンを大量に買ってくれたお客さんの話しても面白くないだろうし。

「そういえば全身真っ黒の服着た二人組が店の前通ったんだよなぁ」

ポツリと呟けば二人は過剰に反応した。

「あれ、どうしたの?」
「その二人組に何もされなかった!?」
「う、うん。もしかして知り合いだった?」
「江戸川君。彼女が見たその二人が奴らとは限らないわ」

真剣な顔つきに変わった二人はボソボソと私には聞こえないように、二人で話している。何だろう。私変なこと言っちゃったのかな。

「二人の外見はどんな感じだった?」
「一人は長髪、もう一人はサングラスをかけてたよ」
「やっぱりか」

えぇぇ、隠されると気になるぞ。また二人で話し込んでしまってるし。「奴ら」とか「ジンとウォッカ」とか「この辺りにいる」など色々聞こえてくるけど、何が何だかさっぱりだった。二人が最後に私に言った言葉は、「その二人組には絶対に関わってはいけない」というものだった。



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