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「え? 新一君の家の掃除? 良いよ良いよー!」
『本当? ありがとう!』

蘭ちゃんからの電話の内容は、工藤邸の掃除を手伝ってくれないかというものだった。バイトも何も予定の入れていなかった休日、暇で暇で仕方がなかった。すぐに動きやすい服装に着替えて走って向かう。

工藤邸は近所だが一度もお邪魔したことがなかった為、中が非常に気になる。工藤邸のインターホンを押すと、蘭ちゃんが出てきた。

「呼んでおいて何だけど本当に良いの? 永愛ちゃん」
「暇してたから誘ってもらって嬉しいよ」
「誘うって言っても遊びじゃないのに……。ありがとう。助かるわ」
「掃除のバイトもした事あるから任せて」

持参した掃除グッズを蘭ちゃんの目の前に出すと驚かれた。それにしても彼女一人で掃除する気だったのか。

「新一君の両親はどこに?」
「今は海外で暮らしてるみたい」
「じゃあここって今は誰も住んでないんだ」
「一応新一が一人暮らししてるんだけど、アイツ事件続きでいつ帰ってきてるのか分からないし」

おっとそうだった。新一君が住んでいる設定だった。今日は窓や階段、床を拭くつもりよ、と蘭ちゃんに言われ雑巾やモップ、水の入ったバケツ等を用意した。この豪邸の掃除かぁ。暇してるよりはマシだけど、やる前からため息が出るな。

雑巾を水で濡らし早速窓を拭く。外を見ると博士の家が見えて、更に家の窓からは少年探偵団の五人が見えた。皆も手伝いにおいでよ。……いややっぱり哀ちゃん以外の子は、逆に作業が増えそうだからいいや。でもこの家に住んでいた本人は手伝うべきだよね。今暇そうだし電話でもかけてみようか。

「もしもし、新一君?」
『永愛か。どうした?』
「今蘭ちゃんと工藤邸を掃除してるんだけど、二人じゃ大変だから手伝いに帰ってきてくれる?」
『わりー、今事件で手が離せなくてよぉ』
「じゃあ代わりにコナン君に手伝ってもらってもいいかな」
『えっあぁ。あの子も忙しいんじゃねーかなぁ』
「きっと退屈してるよー。新一君と違って」
『確かに退屈ではあるけど博士の発明品見てんだよ』
「へぇー」
『ってさっき電話で聞いたなー』
「どうせ掃除が嫌なんでしょ」
『バーロー。んなわけねーって』
「じゃあ早く掃除しに来なさ……んんっ!?」
『永愛!? オイどうした!』

後ろから口元を布で覆われ、スマホが手から落ちる。折角博士に修理してもらったばかりだというのに。誰だ此処には蘭ちゃんと私の二人しかいない。金目の物を盗みに来た泥棒か? ダメだ瞼が重くなってきた。眠る前に犯人を投げ飛ばさなきゃ……。


********************

話し声が聞こえる。この声は蘭ちゃんと、聞いたことのない男女の声だ。パチリと目を開けると私はリビングのソファに座っていた。

「あら、目が覚めた?」
「……?」
「おはよう。まだ意識がはっきりとしていないかな?」
「大丈夫? 永愛ちゃん」

蘭ちゃんと、誰だこの容貌の美しいキラキラした人達は。眩しい、と口にすると、キョトンとした顔をされた。

「蘭ちゃん、あの、今どういう状況?」
「こちら、新一のお父さんとお母さん。帰って来たみたい」

蘭ちゃんが二人の名前を教えてくれて、私の紹介も二人にしてくれた。

「え? あ、すみません! 勝手に家に入ってしまって」
「二人で此処を掃除してくれていたんだろう? ありがとう」

新一君の両親はにこにこと微笑んでいた。そういえば私、電話してたら誰かに眠らされて。

「あれ?」
「永愛ちゃんがどんな子か知りたくて、ちょーっと悪戯しちゃった。投げ飛ばされそうになった時はびっくりしちゃったけど」
「ごっごめんなさい! 泥棒か何かだと思って。お怪我はありませんか!?」
「大丈夫よ。投げ飛ばされるかと思ったけど眠気が勝ったみたいで、一緒に倒れる形になったから」

それにしても、と付け加え私の顔をまじまじと見る新一君の母。何だろうと首をかしげると彼女は自分の両頬に手を当て、ヘラリと笑った。

「永愛ちゃんったら新ちゃんに聞いてた以上に可愛いわー! 周りに美人ばっかりいて新ちゃん選び放題じゃないの」
「ハハッ、彼女達にも選ぶ権利はあるさ」
「ねぇ二人とも、うちの息子どうかしら?」
「わ、私はそんな関係じゃないですし」
「蘭ちゃんは幼馴染だけど、私なんて出会ったばっかりですよ」
「えぇー」

あんな頭のキレるイケメン、私には勿体無い。今は縮んでるけど。口を尖らせスネたような素振りを見せる彼女は、本当に高校生の息子をもつ母親なのかと疑ってしまうほど可愛らしかった。

「そろそろ時間かな」
「えぇ!? もうそんな時間ー? じゃあ蘭ちゃん、永愛ちゃん、またね。新ちゃんをよろしく!」
「はい。分かりました」
「お気を付けて」

バタバタと出て行く二人。嵐のような人達だったな。ドアが開いた時、外は暗くなっているのに気付いた。

「ねぇ蘭ちゃん。もしかして私結構寝てたのかな」
「そうね。ぐっすりと」
「あぁー。ごめんなさい!」
「一度寝たら中々起きないんだから。でも窓は綺麗になってたし手伝ってくれてありがとう」

ということは私が起きるまで二人は待っていてくれたって事なのか。本当に申し訳ない。新一君には心配をかけたみたいだが両親が説明してくれていたようで、大事にはならなかった。しかし新一君のご両親、悪戯が過ぎる。


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