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俺の名前は工藤新一。高校生探偵と有名だった俺の体は組織の薬によって縮んじまって、今では小学生だ。俺が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。コナンの中身が新一だとバレないためにも、色々と工夫して誤魔化しているが、新谷永愛にはもうバレてしまっているのかもしれない。

勿論俺の正体を知っている人は数名いる。しかし彼女を巻き込むわけにはいかない。

永愛にバレている、そう確信したのは、トロピカルランドで小さくなった俺の姿を見たと話された時だった。どこから見られていたのかは分からないが、恐らく縮んでしまってからだと推測する。第一発見者は永愛であり、俺が目覚める頃には彼女は既にその場を立ち去っていた。

「コナン君と会うようになってから新一君と一度も会ってないから、同一人物なのかと疑っちゃったよー。あははっ」

そう言われた時は乾いた笑いを返すしかなかった。よく考えてみればそうだ。新一に会ってないから寂しいと言われ、どうしようも出来ない複雑な気持ちになる。その晩、自分が提案した電話がかかってきた。

「周りに言えない秘密って、何で言えないと思う?」

さっきまで泣いていたかと思えば、彼女の口調が急に真剣になった。なんだこの質問は、と思わず息が止まった。これは例えばの話ではなく、直接俺に聞いているものだ。彼女はもう分かっているのだろう。コナンの正体が新一で、そしてそれを隠しているのにはワケがある事も。

少し間をとって考えたのち答えた。


「その秘密を知れば、知った奴の身に危険が迫るからじゃねーか?」

と。ほんとコイツ、侮れねぇ……。



永愛を連れて大阪を観光しに行った日のことだ。展望台に登ると服部に「ちょい来い」と呼ばれ隅の方で話す。

「工藤、あの永愛っちゅーねーちゃん。お前の正体疑っとったで」
「やっぱりか。そんな感じはしてたんだよ。やけに鎌をかけてくるっつーか」
「アホそうに見えて鋭いんやな」
「あぁ。だがアイツも危険に巻き込む訳にはいかねぇ。蘭と同じ様に誤魔化すしかねぇかな」
「プププッ。秘密を持ったモテる男はつらいでんなぁ」

「バーロー。アイツはそういうんじゃねーよ。アイツは……なんつーか守ってやんなきゃいけねーって気持ちになるんだよな。俺が勝手に気にしてるだけだよ」

馬鹿だけど、と付け加える。しかしやはり正体を見抜かれていたか。服部の言う、アホそうに見えて鋭いは確かにその通りかもしれない。服部はへぇ、とだけ呟き、蘭達のいる方へと歩く。

「まぁ分からんでもないけどな」

奴から出た言葉を俺は聞き逃さなかった。


彼女は鋭いと感じたのはポアロで偶々会った日の事だった。俺のかけていた眼鏡をスッと取り、背を向けられる。眼鏡を外した俺の顔が見たいと言うのは嘘だということは分かっていた。恐らく俺に見えないように眼鏡の機能を調べていたんだろう。

そういえばその日はキッドが彼女の家に訪れ、盗んだ宝石を渡したという信じ難い話をされた。キッドが偶然あのアパートに立ち寄り、初対面の彼女と会話したのちに宝石を渡すなんておかしい。きっと彼女とキッドは何らかの形で面識があるのだろう。キッドの姿ではなく本来の姿で。



そういった点でも彼女は人を惹きつける力を持っているのだと思う。永愛と出会った時彼女は友達がいない、なんて言っていたけれど、別に悪いやつではない。逆に人を惹きつけるオーラがあり、相手が作っていた壁を壊してしまう。そんな力がある気がしていた。

スケボーを修理してもらいに博士の家に行った時、彼女は灰原と初対面だったのにも関わらず、警戒心の強い灰原が普通に会話していた。永愛には聞こえないように、灰原に話しかける。

「初対面の相手に自分から話しかけるなんて、いつものオメーじゃ考えられねーな」
「だってあの子、何も考えてなさそうなんだもの」

違う。そう見せかけて彼女は考えているんだ。現に彼女は灰原を、時々俺を観察するように見ていた。何か思うところがあるのだろう。

「あっ哀ちゃんってハーフ?」
「えぇ。母がイギリス人なの。何? それでさっきからじっと見てたの?」
「わぁぁ、ごめんなさい。美人だなぁってうっとりしちゃって」
「あらありがとう。でも貴女も整った顔してるわよ。ねぇ江戸川君?」

本当にそんなことを考えていたのか。そんな疑問がうずまく中、灰原から急に話を振られ咄嗟に答えた。

「えっ、うん。僕も、か、可愛いと思うよ」

灰原に言われ永愛の顔をじっと見ると、確かに綺麗な顔をしている。彼女は顔を真っ赤にして慌てたそぶりを見せたのに俺達は驚いた。褒め言葉に……甘い言葉に弱いのか。永愛が帰り、灰原と博士と三人で彼女について話す。

「恐らく永愛には俺の正体がバレている」
「そう。別に良いんじゃない? 彼女、ただの一般人でしょ」
「良くねぇよ! 一般人だからこそ巻き込むわけにはいかねぇ」
「困ったのぉ。新一がバレたということは何れ哀君もバレてしまうんじゃないか?」
「多分な。アイツ意外と見てるんだよなぁ」

「貴方が彼女を守るナイトになれば良いんじゃない?」
「んなもん、こんな体じゃ限界ってもんがあるだろ」
「あの子は大丈夫よ。誰かに守ってもらえるわ。そんなオーラがあるんだもの」

適当なこと言いやがって、と灰原を見ると口角を上げてコーヒーを飲んでいた。隠しても隠し通せねぇ、それなら俺が奴らから守るしかねーよな。ハハッ、苦労するぜ。


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