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朝起きるとスマホの電源がつかなかった。学校に行けば筆箱を忘れていた。学校の食堂で昼食をとろうとしたらいつも以上の行列ができていて、並んでいる時間はなくコンビニで買って食べた。帰り道、何もないところで五回もつまずいた。

結論。今日はついてない日である。

ぼんやりと空を眺めて歩いていると、いきなり爆発音がした。ここって確か、阿笠博士の家。門の外から中を覗いてみると壁が壊れていたので、今の爆発音は此処からのものだろう。よく見ると博士が倒れており、門を開けて博士の元へと急いで駆け寄る。

「博士! 大丈夫ですか!?」
「君は……永愛君。まさか失敗するとは」

そう言って博士はガクリと意識を失った。え、私どうしたらいいの?運べばいいの?

「博士ー? どうしたの?」

中から出てきたのは茶髪の可愛い女の子だった。私と目が合うと警戒されているのか眉をひそめる。

「貴女は?」
「博士の知り合いで! えっと、隣の家の工藤新一君繋がりで知り合いました新谷永愛です。帝丹大学の二年の平凡な学生です。あと今日は運が悪いです」

じっと見つめてくるものだからどこまで自己紹介をして良いのか分からず、寧ろどこまですべきなのか分からずにペラペラと喋ってしまった。いらない情報まで聞いた女の子は、警戒心が解けたのか、表情が柔らかくなった。

「そう。私は灰原哀。博士を運ぶの手伝ってもらっても良いかしら」
「はーい」

落ち着いた子供だなぁ。年はコナン君と同じぐらいかな。あ、コナン君みたいに中身は大人だったりして。うん、ないない。

彼女は小さな力でも大体のものは移動できるという博士の発明品を持ってきて、私によろしくと言って渡す。この数十秒で年下になめられてしまった。発明品を使って博士を中まで運ぶ。

「運んだよー」
「ありがとう」

運び終わったことだし家に帰ろう。そう思ってここから立ち去ろうとすると、机にぶつかり机の上に置いてあったコーヒーが、私のお腹の辺りから下半身にかけて溢れてしまった。やっぱり今日は運が悪い。

「……シャワー。浴びていったら?」
「そうさせてもらいます」

本当申し訳ないな。哀ちゃんにお風呂の場所を教えてもらった。子供なのに異常にしっかりしてるので、つい敬語で話してしまう。

「タオルと着替えは用意しておくわ」
「ありがとうございます」

服を脱いでシャワーを浴びる。コーヒーが流れ落ちたのを確認してお風呂から出ると、カゴにタオルと大きいTシャツ、そして私の下着が置いてあった。シャツを着れば下に何も履かなくても大丈夫だった。大きめのワンピースみたいな感じだ。ドアを開けると哀ちゃんと博士がソファに座ってのんびりくつろいでいた。

「博士、起きたんですね」
「すまんのぅ、永愛君。迷惑をかけてしまって」
「いえいえ。私も迷惑かけちゃったし。ありがとう哀ちゃん。このシャツ借りてて大丈夫?」
「えぇ大丈夫よ。それ博士の新品のTシャツだから。それと貴女の着ていた服は今洗濯してるわ」

「何から何までありがとう。博士、よく出来たお子さんですね」
「わしはまだ独身じゃ! 哀君は預かっている子なんじゃよ」

失礼なことを言ってしまったが、ハハハと笑って誤魔化した。そういえば荷物どこ置いたっけ、と思って荷物を探すと哀ちゃんが置いてる場所を教えてくれた。

「そうだ、博士。スマホの修理なんて出来たりします? 朝から電源がつかなくて」
「ちょっと見てみるわい」

私のスマホを預かって少し待ってくれと違う部屋へと行ってしまった。それと同時にドアから入って来たのは、コナン君だった。

「博士ー。またスケボーが調子悪くてよ……あり?」
「博士なら奥の部屋よ」
「ごめん。今私のスマホを修理してもらってて」
「永愛姉ちゃん! そうなんだ」

同じ町に住んでいるだけあって彼とはよく会うな。修理を待っている間、飲み物を入れて三人でソファに座った。

「二人は同級生?」
「そうだよ。 同じクラスなんだ」
「じゃあ少年探偵団の皆とも一緒かぁ」
「まぁそうなるわね」

にしても落ち着いてるなこの二人。コナン君は一部の大人にはあざとい態度をとるけど、彼女はそうではないみたい。単に大人っぽい少女なのか、それとも演技は面倒だと思っているのか。ジッと彼女を見ていると目が合ってしまったので、透かさず口を開く。

「あっ哀ちゃんってハーフ?」
「えぇ。母がイギリス人なの。何? それでさっきからじっと見てたの?」
「わぁぁ、ごめんなさい。美人だなぁってうっとりしちゃって」
「あらありがとう。でも貴女も整った顔してるわよ。ねぇ江戸川君?」
「えっ、うん。僕も、か、可愛いと思うよ」

褒め返されてしまった。ボンッと火照った私の顔を見て二人は目をまん丸くさせた。

「小学生相手でもそんな顔をするのね」
「もう。からかわないでよー」

「出来たぞー」

奥の部屋からスマホを片手にガチャリとドアを開けた博士。スマホを受け取り電源を入れると、元に戻っていた。

「すごい! 博士って天才!?」
「天才科学者じゃからのぅ」

白いヒゲを触って笑う博士に二人は呆れ顔だった。穴の開いた壁から外を見ると夕焼けが見えたので、長く居座っても迷惑だろうし帰る支度をする。

「そろそろ帰るね。あ、この服返しにまた来るね! 二人とも今日はありがとうございました。コナン君もバイバイ!」
「バイバイ!」
「気をつけて帰るんじゃぞー」
「貴女の服もここにある事、忘れないでよね」

開いた大きな穴から外へ出ると、中からツッコむ声が聞こえたけど気にしない。夕日に照らされた帰り道、また何もないところで躓いてしまった。


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