PUZZLE 2


「……元気出してね、みっちゃん。みっちゃんにふさわしい子が……さ、きっと、どこかにいると思うから……」
「……そう、だな……」
「運命の相手なんてものは、案外みっちゃんのすぐ近くにいるかもしれないし?」
 運命の相手、……か。
 道弘は、カズヤに悟られないように注意しながら、隣に座るカズヤの横顔をじっと見つめる。
 思えば失恋するたび、こうして彼女のいない穴を埋めてくれるのはカズヤだった。
 必ず一度は振られたことをからかうのも、きっと、どうしても暗くなる空気を振り払うためなのだろう。軽口でからかっても、決して傷を抉るような真似はしない。改めて、これまでのカズヤの言動を思い起こせば、本当は、心の中では心配してくれているというのがよくわかる。
 二人きり、でしかも泊まりで出かけるのはさすがに今回が初めてだが、母親同士が兄弟で家も近く、おまけに年も近かった道弘とカズヤは、幼い頃からこうしてよく一緒に遊んでいた。
 家族ぐるみの付き合いもあり、子供たちが長期の休みに入れば、二家族合同で、山へ行ったり海へ行ったり……。
 最初はスキーを、そしてボードを覚えたのも、そうした家族旅行の中だった。
 血縁だけれど、兄弟ほど近くはない。もちろん、友達とは違うポジション。道弘にとって、カズヤは不思議な存在だった。
 カズヤと一緒に過ごすのは、嫌いじゃない。やはり血の繋がりがあるからか、赤の他人よりは気を許しているのも事実。
 迫り来る頂上。道弘は無意識に、幼い頃そうしていたように、カズヤの手を取った。
「みっちゃん?」
「あ、ワリ」
 呼ばれて反射的に手を離す。道弘は、自身の行動に、ひどく驚いた。
 ふっと彼方から浮かび上がってきた記憶は、リフトに乗るたび、降りる瞬間を怖がって、縋るように道弘の手をギュッと握っていたカズヤ。
 もうあの頃とは違うのに。
 シーズンごとに経験を積み、お互い、体だってずいぶん成長したというのに。
 それでも道弘は、今、なぜか、カズヤの手を掴んでしまった。そして、自分から離したくせに、遠ざかっていくカズヤの手に寂しさを感じてしまった。
 自分でも、よくわからない感情。だから尚更カズヤにわかるはずもなく、カズヤは道弘の行動の意味を勘違いしていた。
「も〜、みっちゃんてば。俺、みっちゃんの彼女じゃないんだよ?」
「……ンなコトわかってるよ」
 それが、なぜだか腹立たしくて、道弘は再び、強引にカズヤの手を取った。
「降りるときにお前がコケないように、手、繋いでてやるよ」
「みっちゃん、優しいと見せかけて、俺のこと子供扱いしてるね?」
「じゅーぶん、子供だろ?」
「みっちゃんとイッコしか違わないよ?」


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