PUZZLE 13 片手で腰を抱きながら髪の中に指を差し入れ、道弘はカズヤの口腔を隅々まで堪能する。 舐めて、吸って、絡めて。そのたび、つたない動きで必死に応えようとするカズヤに、道弘の胸は甘く疼いていく。 ぐにぐにと舌先を擦りつけながら味わえば、溢れた唾液がカズヤの口端から零れ落ちた。 道弘が唇をずらしてそれを舐め取る。僅かに開いた隙間から、カズヤが道弘を呼んだ。 「み……ちゃ、ん……」 苦しげに荒げられた吐息と、途切れ途切れの声。魅惑的な甘い唇に名残惜しさを感じながらも、カズヤの状態を慮って、道弘はしぶしぶキスを解いた。 離れていく唇と同じ速度で、それまで閉じられていたカズヤの目がゆっくりと開かれる。 未だ整わない呼吸と、赤く上気した頬。キスに感じたのか、それとも他の理由からか、黒い瞳はこれ以上ないほどに艶めき、潤んでいる。 道弘はカズヤの後頭部に置いていた手をそっと持ち上げると、労るように優しくカズヤの頭を撫でた。 「こういうの、初めて?」 「ん……」 頬を染めたまま、こくり、と恥ずかしそうに小さく頷く姿が可愛くてたまらない。 カズヤは言っていた。ずっと道弘だけを好きだったのだと。道弘が軽い気持ちで女の子と付き合い、キスを交わし、その場の欲求を満たすためだけに女の子を抱いていた間も、きっと、ずっと道弘のことを思い続けていたのだろう。 そんな相手に自分は今まで何をしてきた? 彼女ができれば優越感から自慢げに報告し、上手くいかなくなれば愚痴を聞いてもらい、失恋したら慰めてもらう。 そんなことを一体、何度繰り返してきただろう。 それでも失われなかった、カズヤの道弘への思い。 肉欲的なキスが初めてなら、当然その先も――。 男同士、さらには従兄弟という微妙な距離の血縁。それでも諦めることなく一途に道弘を思い続けていたという事実を突きつけられ、道弘の胸の奥からは、カズヤに対する愛しさがとめどなく湧き上がってきた。 「カズヤ……」 まるで壊れた蛇口のように、あふれ出す思いが止められない。 「好きだ……」 真摯に告げて、頬に口づけをひとつ。 この気持ちは、そんな簡素な言葉じゃ伝えきれないだろう。だけど道弘には、気の利いた言い回しも、気障な台詞も思いつかなかったし、何より自分には似合わない気がした。 代わりに道弘は、カズヤの手を引いて、その体を壁際に置かれているカズヤのベッドへと導いた。 縁に二人並んで腰掛け、再びキスを交わす。 啄ばむように優しく触れ合わせながら、服の上からカズヤの体をまさぐると、カズヤが不安げに道弘を呼んだ。 「みっちゃん……?」 「ごめん、本当は、そんなつもりじゃなかったんだけど……」 [戻る] |