PUZZLE 12


「………へ?」
 それは、予想外の言葉。もっと甘い答えを期待していた道弘の口からは、間抜けな問い返ししか出ない。
 すると、未だ道弘の腕の中にいるカズヤが、真面目な声色で、静かに道弘を嗜めた。
「――そういう大事なことは、ちゃんと相手の目を見て言わないとだめなんじゃないの……?」
 カズヤの言うことは最もだ。痛いところを突かれ、道弘は答える言葉に詰まる。
 数秒考えた後、気を取り直してカズヤを拘束していた腕を解くと、その肩を掴んで反転させ、カズヤと向き合った。
 ほとんど同じくらいの身長だから、道弘のほぼ正面にカズヤの顔が来る。
 告白のやり直しなんて格好悪い。それでも道弘は、同じ高さにあるカズヤの目をまっすぐに見つめたまま、もう一度、気持ちを告げた。
「カズヤ、俺、お前が好きだ」
「今さら、何言ってんだろうね」
 今度こそ、返事をもらえるだろう。道弘はそう信じていたが、カズヤがくれたのは、そんな言葉と自嘲気味な笑いだった。
 やがてその声が、力なく小さく萎んでいく。
 しばらく顔を俯けていたカズヤだったが、一度きゅっと唇を引き結ぶと、顔を上げ、道弘と目線を合わせた。
 かち合った瞳には、他の誰でもない、道弘だけが映っている。
「――俺はね、小さい頃からずっと、みっちゃんが好きだった。ずっとずっと、みっちゃんだけが好きだったんだよ……」
 困ったように少し下げられた眉。その下にある黒い瞳が、今にも泣き出しそうに潤んでいく。
 もしかして、そうじゃないかとは思っていた。けれども、想像の域を出なかったものが本人の口から言葉となって発せられると、激しく胸に迫るものがある。
 頭で考えるより先に、体が勝手に動いていた。
「カズヤ……!」
 カズヤをきつく抱き寄せ、衝動に任せてその唇を奪う。
 二度目のキスは、一度目を遥かに凌駕する強さで道弘を突き動かした。
 しっとりと触れ合わせ、僅かに離しただけでまた唇同士をくっつけあう。甘い唇が、たまらなく道弘を惹きつけた。
 じっくりと味わうように、角度を変えては何度も何度も口づけを重ねる。そうしているうちに道弘は、触れ合わせるだけの幼いキスでは満足できなくなってきた。
 カズヤの唇を開かせるために、唇の合わせ目を舌でつつく。反射的に薄く開いた隙間から舌を差し入れると、それまでおとなしかったカズヤが僅かに身を引いた。
 それを阻止するように、道弘はカズヤの後頭部に手を回すと、自分のほうへと引き寄せた。抵抗が止んだのを見計らってから、より奥深くへと舌を進め、そこにあったカズヤの舌を絡めとる。
 舌同士が触れ合うことで得られるのは、なんとも言えない心地よさ。


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