放課後の教室で 3


 甲高く、甘く掠れる自分の声。対照的に冷静な一貴の声。
 やがてゆっくりと、一貴の硬くて熱い情欲の証が、オレの最奥まで埋め込まれた。
 本来、そういう用途で使う場所じゃないそこを擦られ、あられもなく声を上げて感じるたびに、オレがどれだけ一貴を好きか、好きになってしまっているのかを、改めて思い知らされる。
「あっ、あぁン、んっ、ン」
 でも、一貴は――?
「んっ、んっ、はぁっ、はっ」
 オレ自身、気づいていなかったこの感情。
 一貴は、更に心の奥までも暴いてしまう。
「あぁっ、あぁ……、カズ……!」
 熱く荒い呼吸と、早い律動。
 そういったものに追い立てられて、オレは、縋るように一貴の首に腕を回した。
「すごい、締め付けてるよ」
「アッ、ハッ、ハァ……ン」
「そんなに、イイ?」
「んっ、ンッ」
「那由多がこんなに感じやすいなんて、知らなかったな」
 ――違う。
 こんなになるのは、相手が一貴だから。
 触れてくる手も指も、オレを呼ぶ声も何もかもが、一貴のものだから。
「違ッ、……あぁ……」
「那由多」
「あぁっ、アァ……、ア―――……!」
 強烈な突き上げに、たまらず吐精するのとほぼ同じ瞬間に、オレの内部で一貴自身が大きく脈打ち、弾ける。
「那由」
「んっ……」
 昔と同じ呼び名とともに与えられる、甘やかなキス。
 それを目を閉じて受け止めながら、静かに冷えていく心と体。
 なあ、ここに、恋愛感情はちゃんと存在するんだよな?
 オレ、あれ以来一度も「好き」って言われてない。
 オレ達、恋人同士なんだよな?
 一緒に過ごす日常に、ただ、セックスが加わっただけ。
 まるでそんな風に思えて、時々、胸がギュッと締め付けられるように苦しくなる。
「タオル、持ってくるから待ってて」
「………うん」
 そこに愛情は存在するんだよな?
 優しさを含んでいるはずの行動が、機械的な作業に思えるのは、どうしてだろう。
 ただの幼なじみで、友達のままでいればきっと、こんな苦しみを感じることもなかった。
 わからない。
 一貴の気持ちが、時々、わからなくなる。
 約束なんていらなかった、あの頃。
 でも今のオレは、明日の約束を、確かな繋がりを、欲しがっている。
 男同士、先の見えない未来。嫌なものすべてから目を背けるように、オレは、立てた膝の間に顔を埋めた。

 こうなることを選んだこと。この選択が間違っていなかったって、一体誰が教えてくれる――?

放課後の教室で・END


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