授業中に屋上で 1 こんなに苦しいのに、どうして人は恋をするのだろう。 四時限目の授業が担当教諭の出張で自習になった。午前中最後の授業ということもあり、一足早い昼休み気分で騒がしい教室を、静かに抜け出した一貴。 扉から姿を消す寸前、一瞬交わった視線。 その目が、オレについて来いと言っていた。 一貴から少し間を置いてそっと教室を抜け出し、足音を殺して廊下を歩く。 一貴の背は、屋上へと続く階段の向こうに消えていった。 同じように廊下を折れ、手すりに手を置き、一歩一歩踏みしめるようにしながら、上まで昇る。 ちょうど真ん中、折り返しの位置にある踊り場。ここでされたキスが、オレの初めてだった。 あれから一週間もしないうちに、キスどころか、オレのすべては一貴に奪われた。 幼い頃から何度も訪れたことのある一貴の部屋。促されてベッドに腰掛けると、隣に一貴が座って、自然な仕草でオレの肩を抱いた。 そのまま、そうするのが当然のように重なってくる唇。思わずぎゅっと目を瞑ると、一貴の舌先が唇の合わせ目をつー……となぞった。 味わったことのない感触に、ぴくりと肩が跳ねる。 どうしたらいいんだろう。普通に触れるキスでさえ、この前のあれが初めてだったのに。 やり方なんてわからなくて、心臓はバクバクで、頭の中はパニックで。固まるオレをよそに、唇をこじ開けた舌が、どんどんこちらの領域へと侵入してくる。 慣れたように奥へ奥へと進んでくる舌。独特の感触がオレのそれにも触れ、楽しむように舐めたり、戯れるように絡めたりする。上顎や頬の内側を擽り、唾液を混ぜ合わせるようにしながら舌は動き回り、口腔内のありとあらゆるところを舐めつくした。 「んっ、あ……」 ゾクゾクと背筋が痺れて、そんなつもりじゃないのに、鼻から抜けるような甘ったるい声が出てしまう。 こんなキス、知らない。 こんな感覚、知らない。 頭の後ろに添えられた一貴の手が、これ以上ないほど近づいている距離を、更に縮めるかのようにオレを引き寄せる。 ぴったり合わさった唇。時折、ぴちゃ、とか、くちゅ、とか、卑猥な音が耳を侵して、体の中心に熱が集まるのがわかった。 気づかれたくなくて、太腿に力を入れ足を閉じる。すると、肩を抱いていたのとは逆の手がオレを抱えるように腹側から背中にかけて回され、ベッドの上に押し倒された。 [戻る] |