04
《シロクマ: アイアイユリさん(○´∀`)ノオハヨ〜ゥ♪》

シャチが心待ちにしていた日曜日。ローの抜け駆けに(←だと思っている)シャチはあれからベポと一緒に指折りこの日の為に研修を頑張って来たと言っても過言ではなかった。チャットに誘った後もブログは読んでくれているらしく、たまに書き込まれたコメントには4人であれこれ考えて返信している。とは言っても、ローとペンギンは前と変わらず簡潔な言葉だけだったが。

「ねぇシャチー?キャプテンたちまだ寝てるの?」

「ペンギンはさっきゴミ出しに出てたぞ?キャプテンは……寝てるんじゃね?起こす勇気ないけど……」

シャチの言葉にベポも青い顔で頷く。シェアハウスに4人で住んでいると言ってもそれぞれに個室がある。各々のプライベート空間であるその個室の中でも、1番入りたくないと言われているのがローの部屋だった。別に散らかっているわけではなく、寧ろ理路整然と並べられた本棚や合理的に置かれた家具の配置は、ペンギンの部屋に次いで片付いていた。シャチやベポが部屋に入りたがらない理由は、ローの寝起きの機嫌の悪さにある。ただでさえ目の下の隈から強面に思われるのに、拍車を掛けるように機嫌まで悪くなるともはや一緒に居るだけで心臓を鷲掴みにされるような恐怖に苛まれる。仕事などで寝過ごすことはないものの、起こそうものならその人を殺せそうな視線を一身に浴びねばならず、そんな度胸は2人にはなかった。

「あー、まぁ取り敢えず朝飯にすっか」

「じゃあおれその間に洗濯物洗ったりしてるよ」

適当に役割分担をし2人は各々家事に取り掛かった。



ローのスマホに通知が来たのは、ベポが洗濯物を集め、シャチとゴミ出しから戻っていたペンギンが朝食の準備をしている頃だった。基本休みの日は目覚まし代わりのアラームを設定していないローは、その通知音に顔を顰めて画面を開いてみる。これでシャチたちだったら後で殴ってやろうと思いながら見れば、そこにはユリのチャット入室の文字が出ていた。無理やり頭を叩き起こして取り敢えず急いでチャットに入室したローは、そのまま書き込みをする。

《Law: おはよう》

短くそれだけ、それからようやく身体を起こして時計を見る。時刻は午前8時を過ぎたあたり。休日の自分にしては早起きしたなとぼんやりと考えつつ、寝間着代わりに着ていたTシャツと短パンを脱ぎ捨て適当に服を見繕って着替える。着替え終わると同時にユリからの書き込みがあり、この間にユリが書き込みにどう返そうかと悩んでいたのだと思うと、何だかおかしくて小さく笑みを浮かべた。

《ユリ: ローさん、おはようございます.》

どうやら挨拶を返す以外に思い浮かばなかったらしい。ユリらしいと思いながら返事を書き込もうとすると、ベポが入室し書き込み始めた。

《シロクマ: キャプテン起きてるよねー?洗濯物集めてるから持って来てー.あとペンギンがもうすぐ朝食だからそろそろリビングに来てだって.あ、ユリさんがいる!!》

書き込みがそこで一度切れたかと思えば、すぐさま次の書き込みが来る。

《シロクマ: アイアイユリさん(○´∀`)ノオハヨ〜ゥ♪》

何とも朝からテンションの高いベポの書き込みにローは溜息をつく。それから脱ぎ捨てた服を持って脱衣所に行くが肝心のベポは他の場所へ洗濯物を取りに行っているらしい。仕方なく服を洗濯機に突っ込み、リビングでソファに陣取りペンギンがタイミングよく持ってきたコーヒーを一口飲んだところで、ユリから書き込みがくる。

《ユリ: ベポさん、おはようございます.》

自分の時と同じ書き込みに、ローは小さく笑う。知り合ってまだ1カ月半程度だが、なんとなくユリという人間が分かってきた気がする。あまりネットで人と接する事に慣れていないのであろう対応や、それでも一生懸命自分たちに語りかけてくる言葉。病院での張り付いた笑顔とマニュアル通りの言葉や都会での淡白な人間関係に慣れている自分たちには顔も知らないユリの方が人間らしく思えていた。

洗濯機を仕掛け終わりベポがリビングに戻ってくる。ベポは早速スマホを開いてユリからの返事を読むと嬉しそうにローを見る。

「キャプテン、ユリさんがおはようございますって!!何かおれ達一緒に住んでるみたいだねー」

「……そうだな」

ローはフッと表情を緩めると、朝食を運んできたシャチに目をやり無言で画面を見せつける。シャチは首を傾げながら受け取り、ローのスマホの画面上に表示されたユリとのやりとりを見ると目を見開いて叫んだ。

「あぁー!!??キャプテンズルい!!おれもっ!!」




(シャチ飯食ってからにしろ)
(おれだって話したいです!!)
(おれはユリさんからおはようって言ってもらえたし)
(おれは面白そうだからROM専しときます)
_5/15
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