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▼ 色違いキュウコン

私は所謂色違い、というやつだ。
しかも色違いの中でも人気が高いキュウコン。人間のオークションにはもってこいという訳で。

そんな勝手な理由で父さまと母さまから無理やり引き離され、狭くて頑丈な檻の中。ポケモンハンターというやつらの手からナントカ団っていうところに渡って、それから肥ったおじさんの元へ。私にとっては、檻から豪華な部屋に居場所が変わっただけだった。

ただそのおじさんは私を見せびらかすのが楽しかったみたいで、よく外に出してくれた。だから逃げ出すにはもってこいだったんだ。

ある日のパーティーの最中、隙を見て逃げ出した。私を捕まえていた宝石がたくさんついた首輪が中々外れなかったおかげで、掻きむしった首回りは傷だらけだ。
真っ暗な森の中、流れの速い川、襲ってくる野生の奴ら。色んなものを超えて走り続けた。
二日間休まず移動して、なんだか穏やかな空気の場所にたどり着いた。近くに民家が見えるけど、辺りが暗くなってきた今なら見つかる問題ないだろう。



問題ないだろう、なんて思ったけれどそんなことなかった。その民家から出てきた貧弱そうなルカリオに見つかって、そのままそいつのトレーナーにも見つかった。まあ、トレーナーに関しては見つかったというか、なんというか。言葉とは難しい。

誰かいるの?とルカリオに誘導されて控えめに伸ばされた手が私に触れた。動く気力もないし、こいつらに負ける自信もないのでじっとしていた。

「《キュウコン。9本の尻尾には神秘的な力が宿っていると伝わる。1000年生き続けるらしい》」

突然の機械の声。
ルカリオが持つ赤い機械からそれは鳴っていた。

「‥‥なんでこんなところにキュウコンが?ロコンの生息地も近くにないのに‥‥」
「ガウゥ」
「え?‥‥ん?きずぐすり?‥‥‥このキュウコン、怪我してるの!?」
「ガウ」
「大変だ!ルカリオ、家に運んであげて!」
「ガウ!」

トレーナーのさげていた小さなカバンから何かを取り出したルカリオ。それが何かわかったようなトレーナーは急に慌てた様子になって、私はあっという間にそいつの家に連れていかれ、そして手当をされたのだった。

その時の優しくて暖かい手を、私は絶対に忘れることはないだろう。



×××



「おいで、キュウコン。ブラッシングしよう」
「クォン」
「よしよし、いい子。今日はどの尻尾から?」

ふさりと一本尻尾をご主人の膝の上に乗せる。擽ったそうに笑ってから、私の尻尾にブラシを通した。
丁寧に行き来をするそれはとても気持ちが良くて、ご主人の足元に丸まる。

ご主人は好きだ。
私の見た目になんの興味も示さないから。
でも、ご主人が私を色違いだと知ってしまったら、ご主人も私を捕まえたやつらみたいになってしまうだろうか。少しだけ怖い。

でもなんだろうなぁ。
私は狭いボールの中でも、それがご主人の持ち物であると証明される事になるなら、繋がれて居てもいいと思ってしまうんだ。



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