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▼ はんたいルカリオ

ルカリオ、と聞いて誰しもが口を揃えて“かっこいい”、“冷静沈着”、“強い”なんて言う。
確かに世間一般ではそうだろう。

でも、僕はそれに当てはまらない。
僕はルカリオ、レベルは13。
見た目は“かっこいいルカリオ”と同じでも、実際並んで見ると貧弱さが分かる。大きなポケモンに会った時なんて、驚いて腰を抜かすほどだから冷静沈着でもない。そんな奴が強いなんてわけもない。
一般的なルカリオとは正反対って訳なのだ。

言い訳じゃないけれど、強くないのにはトレーナーであるご主人も関係してる。
ご主人は、ポケモンバトルができない。

「ルカリオ、どこー?」
「ガウ!」

フカフカのソファに座っているご主人が僕を呼ぶ。大きく返事を返して駆け寄れば、漸くご主人は僕に顔を向けた。
よかった、ここにいた。そう笑って。

ぶんぶんと尻尾を振り回して、ご主人に飛びついた。
リオルの時はご主人の腕の中に収まっていた身体が、今ではご主人と同じくらいになっていて、身体全部を包み込んでもらえない悲しみが少しあったりする。この気持ちは絶対表に出したりしないけれど。

それでもいいと思える理由は、僕がルカリオになれたのはご主人と過ごした時間があるから、ということだ。
ご主人は言ってた。リオルがルカリオになる為には“なつき度”と“時間帯”が関係してるんだって。僕が弱いルカリオな訳は分かってもらえただろう。バトルはしないけれど、ずぅっとご主人と一緒にいたから。
ちなみに僕は、ご主人のお兄さんにこっそりバトルの練習を見て貰っていた時に進化した。

「ごめんね、ルカリオ。外に出たいよね」

ごめんね、ごめんね。
バトルしたいよね、旅に出てみたいよね。

ご主人はいつも謝るけれど、僕はそんな事これっぽっちも気にしていない。だってご主人はルカリオだけど弱くて甘えたな僕のことを、大好きだって言ってくれるから。

ご主人、僕は君と一緒ならそれだけでいいんだよ?
でも、ご主人が外に出ることを望むなら、僕はご主人の眼になるね。
だって僕はルカリオ。波動をよめばずっと遠くまで見通すことができるのだから、ご主人のパートナーにはもってこいなんだ。

立ち上がって、キッチンに向かうだけでもふらふらと危なっかしいご主人の背に手を添えて支えてあげる。

「ありがとう、ルカリオ。君なしの生活は出来そうにないや」

僕がいる方とは反対側に向かってお礼を言うご主人。

僕はこっちだよ、なんて。

なんにも見えていない君に言っても、仕方のない事だけれど。



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