ニコチアナ | ナノ
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  おはよう、はじめまして


家に着くとひとまず子供の服を脱がせた。
脱がせてみると改めて解ったことだがこの服、子供が着るにはサイズが大きすぎる。俺が着ても大丈夫な位のサイズだ。何故こんなものを、と思ったが解らないので考えるのを止めた。
カタカタと震える子供の身体をタオルで拭き、当然家には子供服は無いので俺のTシャツを着せた。

幾分か震えが治まった子供をベットに寝かせてふぅ、と一息ついた。
乾いた黒髪をさらりと撫で、それが意外にも柔らかいことに驚く。
触り心地を気に入り何度か撫でている内に、子供は小さな口をふにふにと動かして何かを口にしながら身じろいだ。夢でもみているのかもしれない。

「‥‥‥‥」

子供の髪から手を離し、じっと見つめる。
見た目からすると5歳位だろう。

何故あのような場所に突然現れたのか。
何故サイズのあわない服を着ていたのか。
何故身体に傷痕が沢山あるのか。

考えれば考える程溢れてくる疑問はきりがない。
が、この子供が起きない限りはどうすることも出来ないのだ。
取り敢えず、今出来ることは全て終えたので良しとする。

「‥‥‥‥‥お腹すいた」

とたん、思い出したように出てきた空腹に心の中で舌打ちをしながら、すっかり冷めてしまったであろうコンビニ弁当を食すべく立ち上がった。



×××



数日間ろくに食べていなかった為か、普段なら余裕で食べられる量だった弁当も半分程食べた所で苦しくなってきた。残す、という選択肢もあったそれはプライドが許さない。半ばやけになりながら食べ続け最後の一口を無理矢理お茶で流し込み、胃袋から迫り上がってくる嘔吐感に耐えていると、寝室からギシ、というベットが軋む音がした。

「‥‥‥‥起きたか」

立ち上がったとたんにうぇ、と呻きごえを漏らしながらふらふらとする足取りで寝室へと向かった。

驚かせないように優しく扉を開けると、先程まで寝ていた子供が上半身を起き上がらせベットに座っていた。

「おはよう、調子はどうだ?」
「だれだおまえ。ここはどこだ」

返事になってねーよ。
そう言いかけて飲み込んだ。
まぁ、返事が出来たのだから体調は大丈夫そうだ。

「俺は折原弥刀。ここは俺の家の寝室」
「‥‥‥‥オリハラ、ミト‥‥‥しんしつ、」

口調の悪さに眉を寄せつつも、そこは大人の対応ということで子供の質問に答えてやる。
ぽそぽそと俺の答えを繰り返していた子供だったが、突然ギッ、とこちらを睨み付けてきた。

「みたところここはちかがいじゃねぇ。
なんでおれをこんなところにつれてきた」
「(‥‥‥地下街?)その前にお前の名前は、」
「そんなことはどうでもいい。おれのしつもんにこたえろ」
「‥‥‥‥‥‥」

この子供、口も悪いし目つきも悪い。悪すぎる。この子の親がどんなものか見てみたい。
‥‥‥やっぱりいいや、興味ないし。
俺が答えていかなければこの子供に質問をすることは出来ないだろう。
仕方ない、今は大人しく子供の思うように答えてやる。

「地下街、がよく分からないが‥‥‥雨の中小さな子供が気を失って倒れていた、そのまま見て見ぬ振りをするのは何となく気分が悪かった、だから近かった俺の家に連れて帰って世話をした、以上」

これで満足か、とベットの隣に椅子を引っ張ってきて腰をかけた。
その間相変わらず子供は俺を睨みつけたままで、他人の視線に慣れていない俺にとって居心地が悪かった。
俺が座るのを見届けてから子供が口を開いた。

「ほんとうにそんなりゆうでおれをつれてきたっていうのか‥‥‥‥、こども?てめぇなにいってやがるおれはこどもじゃねぇ」
「お前を子供と言わずに何と言う」
「あ”?ふざけるなころすぞ」

言葉と共に飛んできた拳をぱしりと片手で受け止めた。いきなり殴りかかってくるとか本当に子供か、こいつ。
当の子供は俺に拳を受け止められて驚いているようだった。それから、俺の手から自分の手を離し、己の手のひらをじっと見つめている。
あまりにも長い間動かないでいたのでおーい、と顔の前で手をひらひらと動かしたら子供は漸く口を開いた。

「‥‥‥‥だれのてだ?」
「お前の手だろ?」
「‥‥‥‥‥っ!?なっ、からだが!?」

突然自分の身体をぺたぺたと触り始めたと思ったら目を見開いて驚愕の声をあげた。その様子に何か不備でもあったのか、と声をかける前に子供の方が先に答えを発した。

「からだがちぢんでる!?」
「‥‥‥‥‥‥‥は?」

どこぞの名探偵でもあるまいに。
だか、子供の動揺振りを見るとどうにも嘘をついているようには見えない。

「てめぇ、おれになにかもりやがったな!」
「‥‥‥‥俺は何もしていない。最初に言っただろう、“小さな子供を連れて帰った”と。ひとまず落ち着け」
「‥‥‥ちっ」

‥‥‥舌打ちしやがったよこいつ。
未だ睨み付けてきているものの渋々といった様子で口を閉ざしてベットに座り直した子供に、取り敢えず答えを貰えていなかった質問を繰り返した。

「落ち着いたところでもう一度聞くぞ?お前の名前は?」

名前が分からないんじゃ話もちゃんと出来ないからな、と付け足して答えを待った。
すると子供は俺の言葉に対してか、頷きを一つして言った。


「‥‥‥‥リヴァイ、」

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