ニコチアナ | ナノ
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  雨の中の拾いもの


夕方、流石に痛んできた肩としばしばする目を擦りながら席を立ったのは30分前。休憩がてらに向かったトイレで気付いたのは極度の空腹感だった。
もうそんなに時間が経っていたのかとぼんやり考えて財布を片手に家を出たのが20分前。
歩いて7、8分の所にあるコンビニへと出向き、その後適当に買った食糧をぶら下げながら店の外へ出るとまさかの雨。仕方なしに店の中へ戻ってビニール傘を購入し、今度こそ家路に着いた。

それがつい先ほどの話し。

今現在、俺は傘と食糧を両手に、ゴミ捨て場の前に立ち止まっていた。

「‥‥‥‥‥行きにこんなのあったっけ」

いや、こんなものがあれば足を止めていたはずだ。行きの道中にはなかったそれに目を落とす。
放っておいた方が面倒事には巻き込まれることは無いだろう。たがしかし、だんだんと強くなってきている雨の中、ぐったりと気を失っているそれをそのままにしておくのは俺の中の人間性が反対の声を挙げている。

俺は小さく一つ溜め息をつくと、レジ袋を傘を持つ右腕に掛け、開いた左手で落とさないように細心の注意を払いながらそれを抱き上げた。

濡れたぶかぶかの服から俺の服に染み込んでくる水分を感じながら、すっぽりと腕の中に収まるそれを見る。

「‥‥‥‥何してるんだろ、俺」

何時もの自分からでは考えられない行動にもう一つ溜め息を零しながら歩き出した。

「‥‥‥‥どうとでもなりやがれ」

目を覚ましてから考えればいいか、と腕の中のそれ、まだ小さい子供を抱え直した。

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