ニコチアナ | ナノ
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  外の世界


車という馬よりも速い乗り物の窓から見る世界に思わず息が漏れた。

色々な形、色をした服(しかも上質)
始めてみる形をした建物や物(かなりでかい)
たくさんの人々(裕福そう)

異世界とはとても興味深く、随分とぬるま湯に浸かったものだった。

外に向けていた視線を前に戻す。
隣で運転しているミトが前を向いたまま「どう?」と聞いてきた。

「まあまあだ」

裸足の足をぷらぷらと動かしながら答える。

「‥‥‥うんてん、できたんだな」
「ん?んー、うん。“歩くのが怠いんだったら免許とったら?”って言われたから。なんとなく」

まさか答えが返ってくるとは思っていなかったので少々驚きつつ、そうか、と返した。

それから暫く互いに黙ったままだった。

オレは大きさの合わない服の少し長い裾を弄りながらぼーっと座る。
“しーとべると”の首に触れる部分がなんだか気持ち悪かった。



×××



目的地の“しょっぴんぐもーる”に到着し、不本意ながらもミトに抱き抱えられながら、まず靴を買いに行った。

「どんなのがいい?」
「はければいい」
「色は?」
「‥‥‥くろ」

色鮮やかな靴を前に馬鹿みてェな会話をする。言い負けをした。クソが。

軽く履けるサンダルがいいか、と連れて(抱えられて)行った場所でサイズの合う物を探す。
途中、にこにこと女が近付いてきて「何をお探しですか?」と聞いてきた。
思わずミトの顔を見ると、何を思ったのかオレの頭に手を置いてきた。
何しやがる、口を開きかけた時、ミトが先に声にした。

「‥‥親戚の子なんですけど、俺と同じサンダルがいいと聞かなくて‥‥‥子供用の黒いシンプルなやつ、ありますか」

一ミリも表情筋を動かすことなく真っ赤な嘘を吐ききったミトをぽかんとした顔でみていた女だったが、オレとミトの顔を交互に見て納得したように頷くと「こちらです」と歩き始めた。
その後に続くミトの腕の中で一人舌打ちをする。
こいつとオレのどこを見て納得したんだ。

「ぼく、お兄さんと同じのあるかなー?」

抱えられている為視線がほぼ並ぶ女のにこやかな顔に殺意を覚えるも、ここで問題を起こしたらデメリットしかないことは明確だ。
大人しく子供らしい振る舞いをするしかない。
右手できゅ、とミトの服を掴み、左手で目に入った黒いサンダルを「それ」と指差した。



×××



生憎、足のサイズにあう在庫が無いという理由で、もう一種類別の物を選ばなくてはならなくなり、俺の機嫌は急降下だ。
幸い、適当な物がすぐに見つかったので、購入してそのまま足を通す。
履き心地は、まぁ、悪くはない。

「よかったねー」と頭を撫でられてもう靴屋は懲り懲りだと思った。

その後向かった服屋でも自分で服を見る気がさらさらないミトは近寄ってきた女に選別を任せ、着せ替え人形にされているオレと次々とカゴの中に入れられていく服をぼーっとした顔で交互に見ていた。
服の山ができているカゴを睨み付けながら会計を済まし、その中から適当に服を選んでトイレで着替えた。
漸く肩からずり下がらない服を着れたことに何だか落ち着きを感じていた。

靴も服も揃ったので自分の足で前を行くミトに続いて歩く。

「おい、ミト。つぎはどこへいくんだ」
「日用品と食糧を。でもその前にこの服を置いてくる。あそこの椅子で待っててもいいけど、リヴァイはどうする?」

オレに合わせて歩調を落としてたミトが両手の紙袋を持ち直しながら言う。
未だ慣れない(慣れたくはない)小さな身体で人混みの中を歩いていた所為で思ったよりも疲労を訴える身体を考慮し、「休んで待っている」と伝えた。

「分かった。なるべく早く戻ってくるから。‥‥‥知らない人に声を掛けられても着いて行ったら駄目だよ」

こいつ、巫山戯てやがる。
そう認識した直後、ミトの足を思い切り蹴った。
子供といえどもそれなりの力で攻撃したのにも関わらず、眉一つ動かす事無く背を向けたミトを睨み付けて、オレも歩き出した。

いつかあの顔を崩してやる。
そう心に決めて。

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