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出逢い3

「ま、少年の疑問に簡単に答えるとだ。シキはな、妖怪の遺伝子を持っているんだ」
「‥‥よ、う‥かい?」
「ここでいう狼男とか、ジャパニーズモンスターだよ!そんなことも知らねぇのかぁ?陰毛頭」
「あんたも知らなかったでしょクソ猿」
「うるっせー!犬女ァ!!」

いつもの喧嘩を始めた二人を横目に、スティーブンはこほんと喉を鳴らした。当の本人であるシキはスティーブンの膝の上でごろごろと喉を鳴らし、気持ちよさように寛いでいる。

「シキは妖怪の遺伝子を持つ人間、“先祖返り”の両親との間に生まれた子なんだよ」
「‥‥な、なるほど‥‥?」

いまいち分かりかねているレオに、クラウスが紅茶を一口、口に含んで言う。

「彼女はその先祖返りの中でも特殊なものなんだ」
「特殊?」
「そう。シキは両親とも“猫又”と“烏天狗”という違う種類の先祖返りから生まれた、二種類の妖怪の遺伝子を持った新しい妖怪なんだよ」

そのお陰で色々あってね。うむ。
二人が其々に優しい、そしてどこか悲しげな瞳でシキを見つめた。視線の先のシキはうとうとと船をこき始めている。するりとスティーブンの長細い手がシキの獣耳の付け根を撫でると、ぴくんと小さく動いた。
“色々”の部分ははぐらかされてしまったが、このライブラの構成員はみんな秘密を持っているので、おいおい分かっていくことなのだろう。レオは日本ってすごいんですね、とこぼした。

「先祖返りも日本では本当に稀な存在なんだよ、少年。‥‥んで、まぁ、その時たまたま野暮用で日本に行っていた僕とクラウスがシキの御両親からこいつを頼まれて、現在に至るという訳だ」
「だいぶ端折りましたね」
「それだけではない。シキは“サヴァン症候群”だということが分かったのだ」
「‥‥サヴァン?」
「何かに特化した代わりに、何かが発達しなくなってしまう、病気?かな。こいつの場合、記憶力とその覚えたものを応用していくという能力が特化した代わりに、精神年齢が発達しなくなったのさ」
「シキの、特殊な先祖返りという体にサヴァン症候群という境遇は、きっとライブラで役立つとスティーブンが進言したのだよ」
「クラウスの心配性も発病していた事だしね。‥‥まぁ、あの時の判断は間違っていなかったと思っているよ」

いつの間にか完全に夢の中へ旅立っていたシキを抱え直して、仮眠室へ寝かせてくる、とスティーブンは広間を後にした。
ザップとチェインの言い争いも終わったらしく、チェインがレオの隣に腰掛けて残っていた自身のドーナツを食べ直し始める。

「シキは主に諜報の役割を担ってる。戦闘も出来るんだけどね」
「へぇー。じゃあチェインさんとはコンビなんですか」
「シキは基本自分で作ったデバイスでハッキングをして、そこで手に入れた情報を元に実際に現場行くのが私。より確実性を高めた情報をライブラここに持ってくるっていうのが主ね」

自分でデバイスを作るという事にも驚きだが、聞きなれないハッキングという単語にも驚いた。ライブラの人間はやはり底が知れないと思い直すレオであった。

「あ、その諜報関係で本部に行ってたんですか?」
「今回は定期的に呼び出される本部の電子機器のメンテナンスと、アップグレードが目的だった」
「へぇ‥‥本当になんでも応用が出来るんですね」

話がひと段落ついて、残っていたドーナツや紅茶を口にし始める。少し静かになった部屋にスティーブンが戻ってきた。
すっかり冷めてしまったコーヒーをぐいっと飲み干したスティーブンに、お代わりを用意します、とギルベルトがキッチンへと消えて行った。それに礼を言うメンバーを見て、レオは思う。

また随分と濃い人が来た、と。

_4/21
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