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出逢い

ハロー、ミシェーラ。
兄ちゃんは元気にやっています。


‥‥‥ついさっきまでは。


今日も今日とて路地裏に連れ込まれカツアゲをされてしまったレオこと、レオナルド・ウォッチは腫れ上がった頬を摩りながら座り込んだ。心配そうに見上げてくる相棒、音速猿のソニックに大丈夫、と安心させるように笑む。
すりすりと労わるように身を寄せて来た小さな体に癒されていると、ふと、視界の端で何かが動いた。先程の奴らが戻ってきたのかと、咄嗟にソニックを自身の陰に隠しながら目を開く。神々の義眼に映し出されたのは大柄な人類でも、不気味な異界存在でも無かった。

スラリとした四肢にピコピコと動く二つの耳。そして先端が二つに裂けた尻尾。

猫、だった。

しかし、眼に映るソレは限りなく猫に近いが、己の知る限り猫の尾は二つに裂けていない。アレも異界交配種なのだろうか。
ぱちりと合わさった視線にあっ、と声を上げると、その猫もどきは路地の暗がりに姿を消してしまった。

「なんだったんだろう‥‥」

悪い感じはしなかった。寧ろ、不思議さと多少の不気味さをもった初めて見た生き物に、記者の性なのだろうか。好奇心が湧いた。

「写真、撮っておけばよかったな」

残念に思って、ズボンのポケットに入れている愛用のカメラを布の上から触る。その手の上に、何だったの?とでも言いたげなソニックがひょこりと座った。

ソニックにも見せてあげればよかったな、と声を掛けながら立ち上がる。相棒はレオの肩によじ登ると、いつもの定位置で落ち着いた。

クラウスさん達なら何か知っているだろうか、そんな事を思いながら少々ふらつく足取りでライブラへと向かうのであった。



×××




「ちわーっす」

来る途中で購入したドーナツの紙袋を抱えて仰々しい扉を開けば、それぞれから挨拶を返される。
床に伸びている褐色の肌の青年に溜息をつくと、それを避けるようにして歩き、鉢植えを大事そうに持つ赤色の男の前で紙袋を掲げた。

「クラウスさん!新作のドーナツが出てたんで買って来たんですけど、みんなで食べませんか?」
「新作‥‥!ありがとう、レオナルド君。是非そうさせてもらおう」

紅茶を、と声をかけられたクラウスの執事であるギルベルトは、にっこりと微笑んで了解しました、と奥へと入っていった。
レオの後ろから紙袋の中を覗き込んでいるチェインに、「そういえば、」とレオは口を開いた。情報収集に長けたチェインに聞くのもいいと思ったのだ。

「さっき、尻尾の先が二つに裂けた猫みたいな生き物見たんですけど、お二方、何か知ってますか?」
「っ!!見たの!?」
「うぇっ!?はいっ!来る途中の路地裏で‥‥っ!」
「一昨日、作業終了の目途が立ったと連絡があったからな。もうそろそろ来る頃だと思っていた」

知ってるのか、と驚くと同時に不思議な気持ちになる。二人の言葉ではまるで、人間の事のようにとれる。レオが見たのは確かに動物だったのに。

「教えてしんぜようではないか、陰毛頭よ」
「やっと起きたんすか」

首を傾げたレオに、下から声が掛けられた。ブツブツと文句を垂れつつ立ち上がったザップは、人を馬鹿にしたような笑みを浮かべてレオを見下ろす。いちいちムカつく態度だと内心舌打ちをしたレオだが、猫もどきについて気になるため黙って受け流した。

「そのニャンコはなぁ、ライブラうちのメンバーなんだよ」

はぁぁあああ!?と盛大に驚くレオにクラウスが補足だが、と言う。

「彼女は人間だ」

流石HL。流石ライブラ。不思議な事が多すぎてツッコミが追いつかない。常識が簡単に覆される。
頭を抱えたレオの背後でバンッ!と激しく扉が開かれた。

「ただいまですにゃー!」

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