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プレゼントをもらう

「ハロー!」

自室に籠もってディスプレイに表示された数字の羅列が流れて行くのを目で追っていたシキの耳に、扉が勢い良く開け放たれる音と聞き慣れた声が入ってきた。
その人物は滅多に事務所に顔をださない為に、中々現場以外で会うことはない。
シキは急いで区切りの良いところまで作業を進めて保存すると、その高まる気持ちを現す耳と尻尾を揺らしながら部屋を後にした。

ひょこりと事務所の広間に顔を出せば、件の人物とばっちり目が合う。

「会いたかったわよぉ!シキっち!」
「シキも会いたかったー!」

ヒールを鳴らしてシキに飛び付いた人物、改めK・K。二人は久方ぶりの再会に熱い抱擁を交わした。

「んもー!本っ当に可愛いわねぇ!」
「みにゃぁ!ねぇさんくすぐったい!」
「あらー?ココが弱いのかしら?」
「にゃうううう!」

暫くの間、きゃっきゃと戯れる二人だけの空間が出来上がる。その時事務所にいたクラウス、ギルベルト、チェインの三名は一歩引いたところで見慣れた光景に微笑んでいた。

「そうだ、シキっち!今日は貴女にプレゼントがあるのよ!」

じゃーん!と手渡された紙袋に、シキの尻尾が激しく振られる。「シキったら犬みたいだよ」と笑ったチェインに、「ここまで素直に喜ばれると嬉しいわぁ」とK・Kが相槌を打った。
しっかりと御礼を言ってから紙袋の中身を出したシキは、更に大きく歓喜の声を上げた。

「すごい!耳がついてる!」
「尻尾もあるね」

両手に持って広げたそれは、パーカーだった。淡い青色の生地に、左胸にワンポイントとして羽根の生えた猫のシルエットの刺繍がなされている。

「猫をイメージしたパーカーかね」
「そうよクラっち!見つけた時にビビッときたのよぉ!これはもうシキっちに着てもらうしかない!ってね」
「確かに、シキにぴったりのものだ」
「お嬢様も大変お気に召したようですね」

ほんわりと笑んだギルベルトの視線の先では、シキがプレゼントされた青いパーカーを着てくるくると回っていた。
チェインはその姿を携帯に納めては、満足そうに保存をしている。
一頻りはしゃいだシキはチェインのもとを離れて、様子を見守っていたクラウス、ギルベルト、K・Kに駆け寄った。

「ねぇさん、すごく嬉しい!ありがとう!」
「いいえー、喜んでもらえて良かったわ」
「シキ、とても似合っている」
「ええ、本当に。お似合いですよ」
「にゃ、うー‥‥」

あまりにも褒めちぎられて、さすがのシキも照れたようだった。猫耳のついたフードを手で引っ張りながら深く被り、にゃふにゃふとか細い声が漏れている。
ちらりと覗く柔らかな頬は真っ赤に染まっていた。

「ねぇさん、ほんとのほんとに、ありがとう。大事にする」
「‥‥ふふ、スティーブン先生にも見せてあげなくちゃね」
「‥‥うんっ!」

勢いよく顔を上げた際にぱさりとフードが落ちる。
K・Kがその銀灰色の髪を優しく撫でれば、二対の本物の猫耳が擽ったそうにへちょりと垂れたのだった。


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