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パジャマ問題

「ふにゃぁぁ‥‥おはよう、です‥‥」

よれたシャツを一枚、身に纏ったシキがふらふらとした足取りで仮眠室からでできた。シャツのボタンは掛け間違えられている上に、どう見てもサイズの合わない男物のそれは、右肩がずるりと下がっている。膝下まで隠れるサイズのそれはシャツというよりもワンピースと言った方がいいかもしれない。
初めてこの光景を見るものにとっては驚きのものだろう。それから、おはよう、といってもお日様が真上にあるのはお約束の事だ。
その場にいたクラウス、ギルベルトの両名はそれぞれに挨拶を返して、クラウスはスティーブンへ声を掛ける為に彼の執務室へと歩いて行った。
事務所の広間へ寝ぼけ眼を擦りながら辿り着いたシキは、もう一度大きな欠伸をしてソファーへ座る。
それを見守っていたギルベルトは一度姿を消すと、仮眠室に脱ぎ捨てられていたシキのパーカーを持って戻ってきた。

「そのままではお風邪を召されますよ」
「にゃぅ‥‥ありがとう、ギルベルトさん‥‥」

受け取ったパーカーを手に持ったままで止まってしまったシキにギルベルトは苦笑し、クラウスがスティーブンを呼んできてくれるのを待つ事にした。寝惚けたシキの扱いはスティーブンが一番上手いからだ。

「悪い、ギルベルトさん。シキがまた‥‥」
「いいえ、何ともありませんよ」

クラウスが、スティーブンの執務室から彼を連れて広間へ戻ってきた。ヨレヨレの格好で再び夢の世界へ飛び立とうとしているシキを見て、スティーブンは申し訳なさそうに頭をかく。ギルベルトは「お気になさらず」と笑うと、スティーブンと位置を交代した。呆れたように笑んだスティーブンはシキの前にしゃがみ込むと、とりあえずシャツを整え始めた。掛け違えていたボタンを直している途中でふと、その手が止まる。

「あれ?このシャツ、僕のじゃない‥‥?」
「ああ、それはこの間私が譲ったのだ。普段使っているスティーブンのシャツをクリーニングに出す際の、替えとして」
「リーダーにもらった!」

意識がしっかりとしてきたのか毛繕いを始めたシキと、「何か問題でも?」と言う顔をしてこちらをじっと見ているクラウスに溜息が漏れる。

「(おいおい‥‥)」

シキは一人で眠れない。
非常に手のかかる甘えん坊という訳ではなく、とある理由から他者の匂いや気配が無いと安心して眠ることができないのだ。故に、大方はスティーブン宅で暮らし、偶にクラウス邸をはじめとする仲の良い構成員の家に泊まりに行っている。(ザップは論外だ。)
仕方無しに事務所へ泊まる時は、スティーブンのシャツをパジャマ代わりにして眠りを摂っていたのだが。その姿も犯罪臭というか、何というか、何処と無く危険な香りがする格好であったのに。スティーブンよりも身体の大きいクラウスの物となると余計にそれが際立つ。
最悪の場合、情事の後の様にも見えなくはないのに。

「(この場合、二人が全く知らない事が問題だ‥‥)あー、クラウス、シキ?何というかだな、このシャツ、ギルベルトさんに仕立ててもらった方が良いんじゃないか?」

裾を踏んで転んでも危ないし。
最もらしい理由をつけて、スティーブンはシャツのボタンを直し終え立ち上がった。シキがパーカーに袖を通すのを横目に確認して、クラウスと向かい合う。

「‥‥む。そうだな、失念していた」
「承知しました。クリーニングから戻ってくるスティーブン氏のシャツも同様に、で宜しいでしょうか」
「申し訳ない。お願いします」

あはは、とスティーブンは乾いた笑いを浮かべた。クラウスとシキにもう少し、そういう・・・・ことを学ばせなくては、と謎の使命感が浮かぶ。
そして、恐らく全てを分かった上で容認し、笑っているギルベルトの心の内がとても気になった。
確信犯なのか、そうなのか。

スティーブンがじと、とギルベルトを見るも、その笑顔の真意は読む事ができなかった。



×××



(以下会話文)

「リーダー、マエストロ、みて!ぴったり!」
「うむ。これで安心して着用できるな」
「そうだな‥‥(見た目の犯罪臭が無くなった‥‥)」
「ギルベルトさん、ありがとう!」
「はい。‥‥スターフェイズ氏も一安心ですね」
「ッ!?(やはり確信犯か‥‥!)」

_12/21
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