4.
2015/12/15 19:32





日々、当たり前のように熟してきた事がこうも上手くいかない。不可抗力の上に成り立つ生理現象とはいやはやたいしたものだと、恐らく今まで省みなかったことに耽りながら俺は食パンを囓る。腹が減って、喉が渇いて、飢えに戸惑う指先は正直に、昨夜溶かしたビーフシチューを温める。
いつか買った薄い皿の縁いっぱいにあけよそり、銀色のスプーンを片手にしてふと、俺は泣きたかった。水を注いだコップを片手にひとくちの褐色の液体が喉奥へ収まるのを待って、矢張り俺は泣いた。ビーフシチューとパンの組み合わせは、思うより吝かだった。
飯と風呂を済ませて、あとはおとなしく睡魔を待つ。結構前から挑んでいる脱出ゲームは、今夜こそ攻略本を見ようと思う。
言ってはならない言葉がある。間違いなく断言できる。もしかしたら、言わなければならない言葉もある。だがこれは自信が無い。それは、どこにも姿が無いからだ。俺は、それを探せぬほどに臆病だった。暗い水の中へは知り得ぬ恐怖故手を入れられず、透明な中にはその明け透けさに、これも手を入れられないのだ。
漸く取り替えた電気を消して、布団に寝転がる。外では今夜も、絶え間無い雨音が流れている。






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