5.
2015/12/15 19:35






蝋燭の灯が、痩せた畳を照らす
波打つ萩を猪が食む
まっかな牡丹に蝶が伏す

終ぞ揃わぬ紅葉に子鹿が逃げて
手許に残るカスばかり

盃あれど興が無ければ傾かぬ
月輝けど、明くる日無ければ愛でられぬ

俺は洗い立てのシャツにアイロンを乗せる
白を縦横無尽に走る波は熱に脅かされて、
跡形もなくどこかに消える

仄かに温もりが残る袖に腕を通し、
蝶ネクタイを結う
背筋を伸ばし、顎をひいて
跳ねる泥に下ろしたての革靴が染まる
青苔を踏まぬように慎重に門を潜り、
泡銭でひとつ、鈴虫から小さな心臓を買った
今日を生きていける分の鼓動を

酒と、盃をふたつ用意して月とともに宵を待つ
明日、例えば太陽が昇らずとも

溢れても暗闇にしがみついて、星は零れない








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