第一話・生徒の教室・


ガラッ!

「みんな〜!おっはよぅ!」

「「おはよう!マリカ!」」

「・・・・・・」


雑談をしながら教室に辿り着いたシュネィヴァ達
そしていつも通りマリカが教室内へ元気に突撃し、いつも通り皆が挨拶を返し、いつも通りシュネィヴァとチィリカが顔を見合わせた

マリカはあれでクラス一人気者だ
挨拶すれば挨拶し返されるし
遊ぼうと誘えば全員が揃ってマリカについてく


何でアイツはあんなに人気なんだとか、お前らはいつの小学生だよとか、今日の頭痛はいつもより痛いとか色んな意味を込めてシュネィヴァは大きな溜め息を吐いた

当然、ポジティブバカはその溜め息に大きく反応する


「ちょっとシュネィヴァ!何溜め息なんて吐いちゃってるの!駄目だよ今からそんなんじゃ幸せが逃げるよ!」

「・・・チィリカ、相手をしてやってくれ」

「・・・(こくり)」

チィリカは小さく頷くと友人に近付いていきその脇腹へと手を伸ばす

暫くすれば「きゃー!くすぐっ・・・たぃ!ダメダメやぁーめぇーー!!」というマリカの悲鳴じみた笑い声が聞こえたがそれを無視して教室内の自分の席に座った

荷物を整理し、最初の授業の準備・・・途中目の前を一人の生徒が横切ったのでシュネィヴァは一度手を止めた


「おはよう、姫祇(ひめぎ)」

「おはよう、シュネィヴァさん」

向こうも律儀に足を止めて挨拶を返してくれた

彼女の名前は姫祇
チィリカ程じゃないが口数が少ない生徒で、珍しくマリカも情報を引き出せない謎が多い少女だ

シュネィヴァも挨拶くらいで、日常会話を交わすことは滅多にない

そんな彼女は暫くシュネィヴァを見つめてからふわりと一度微笑んで自分の席へと歩いていった


時同じくしてマリカがようやくチィリカから解放され、クラス委員長であるマギリが朝のHRの開始を告げた




授業というのは二種類に別けられる

一つは教師の雑談混じりの興味そそられる授業
他愛な世間話で生徒を程よく和らげながら、自主的に授業に取り組む姿勢を作り上げ、物事の吸収を促す素晴らしい授業


そしてもう一つは・・・
「ここがy=3x-12となりこれを・・・して・・・すれば」


教師の一方的でハードにとばされる退屈なんてもんじゃないつまらぬ授業

「・・・あふ、ふあぁ・・・」


微睡みを誘う大欠伸にシュネィヴァは目を擦った
間を空けない長話はどんな人間も眠気を誘われることをあの教師は知らないのだろうか?

シュネィヴァは比較的しっかりノートをとる派だが、この教師の長話と黒板の猛スピードな字の増減にやる気を削がれ睡魔に襲われていた


シュネィヴァはペンを置き時間潰しと気分転換に人間観察をすることにした


まずは自分の席の右前方にいるマリカ

は既に事切れていた

爆睡してるらしく時々上がる教師の大声にびくともしない


続いてマリカの反対側の左前方にいるチィリカ
マリカとは逆に背を伸ばしペンを持つ腕をしきりに動かしている

・・・がやはり睡眠に襲われてたまに頭がこくりと机に引き寄せられるように動く


その後もマギリや幸、クラスメイトを順に観察してみたが全員睡魔と戦うか、微睡みの優しさに身を委ねている


授業はまだ終わらない


最後に自分の一番左
窓側の席にいる姫祇に視線を移してみた

彼女は眠る様子もなく、かといって教師の声に耳を傾ける訳でもなく
ただ窓の外を見つめていた

シュネィヴァも習うように外を見てみる

青空、海原、海鳥、町の景色

変わらぬ穏やかな風景を、姫祇は目をそらすことなく見つめ続けている


何を見ているのだろう?

不意にそんな考えが浮かんであれ?と思った瞬間に教室に終業ベルが鳴り響いた

教師の長話に解放され甦り出すクラスの面々
誰かに話しかけられてシュネィヴァは一度視線を外す


再び、視線を戻した時には
もうそこに外を見ている少女の姿はなかった


「シュネィヴァ〜!お昼食べようよ〜!」

「んっ?あっ・・・あぁ・・・」

眠って元気一杯になったのかマリカがぶんぶん手を振って大声を上げる
隣にはチィリカがまだ目を擦りながらもこちらを見ていた

シュネィヴァは一抹の疑問を胸に抱きつつ
自分を呼ぶ友人の元へと向かった





(大きな空に雲が一つ)

(それは世界が感じる小さな不安)

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