第八話・夕暮れの再集合・



日が傾き始めた

西日に染まりつつあるバンエルティア号に小さな影が小走りで近づく


「・・・はぁ、っと、・・・わたしが一番なのかな?」

辺りを二、三度見渡しマリカが呟く

バンエルティア号の近辺に他の人間の姿はない
しかし傍らには「ティルータ」が停泊しているのできっとシュネィヴァは近くにいるのだろう
あとはチィリカだけ・・・そう思いながらその場でぶらぶらしていると不意に頭上から声をかけられた


「おーい!えっと・・・マリカ!・・・だよな?」

「はい?」


見上げてみるとバンエルティア号の甲板から一人の男性が此方を見下ろしていた
短い赤髪の青年が上がってくるように手招きをするのでマリカはそれに従って甲板へと上がる


「多分自己紹介してないよな俺はルーク・フォン・ファブレ
あんたの名前は・・・マリカ、で合ってるか?」
「はい!初めましてルークさん!」
「ははっルークでいいよ
それにしても遅かったなぁ皆待ちくたびれてるぞ」
「・・・?遅・・・い、て?」


屈託ない笑みを浮かべるルークの言葉にマリカは僅かな嫌な予感を感じて聞き返す
ルークはきょとんとしてマリカの顔を見たまま首をかしげた


「いや、だって確か何か話をするから集まるってことになってんだろ?」
「そう・・・だけど・・・あれ?何で知って・・・?」

「だってよ」


ルークがちょいと親指で船の入り口を指す

「他の二人はもう中で待ってるぜ?」



わたしが一番なのかな?

そうだわたしが一番だ
マリカが一番、集合が遅かった





ルークに急かされながらおそるおそる中に入ると見慣れた背中が二つ、入り口に背を向けて立っていた


「あっ!マリカさんだ!」

午前と比べ僅かに低い姫祇が発した声に背中を向けていた二人が同時に振り返る
瞬時に目があってマリカはぎこちない笑みを向けることしか出来なかった


「ど、どうもー・・・いや〜二人とも早いんだね」
「遅いぞマリカ」
「・・・少し、遅刻です・・・マリカ」
「あうぅ・・・スミマセン」


シュネィヴァ、チィリカの言葉にしゅんと項垂れるマリカ
その様子に首をかしげる人間がふたり


「ねぇねぇミナカ、マリカさん・・・何で落ち込んでるんだろう?」
「うーん、何でかな?
・・・・・・あっ!おやつを食べ損ねちゃったんだよ!きっと!」
「そっか!じゃあパニールに頼んでおやつを・・・」
「そこまでだ姫祇、話戻すぞ
ほらマリカもしょげてないで早くこっち来いよ」
「あいっす・・・」


ボケ×2を止めてシュネィヴァが手招く
マリカはとぼとぼと歩いて二人の間に入った

ちらりとシュネィヴァを横目で見ると目があった
そのまま見ているとシュネィヴァが軽く口を綻ばせる
どうやら遅刻の件はお咎め無しのようだ、ホッと一息


「それでは、各々の“答え”をお聞かせ願いましょう?」

ジェイドの一声で三人の表情が引き締まった




「ではまずシュネィヴァ、貴方からお聞きしましょう?」


その一声で今この場にいる―ジェイドを含む科学部屋組と姫祇(現在は若モード)とディセンダーの四人とチャット、そしてチィリカとマリカ・・・とその裏にいるルーク―全員の視線がシュネィヴァに向けられた


「・・・さっきうちの船のやつらと話したよ俺自身がどうするか
俺は・・・ここアドリビドムに同行しようと思う」



- 37 -


[*前] | [次#]





戻る



夢トップに戻る