第九話・選択という分岐点・




そう言った瞬間、若木とミナカがぱぁっと笑顔になり他のディセンダー達も僅かに目元が緩む、科学組は特に反応を示さなかった


「・・・それでシュネィヴァ、同行に際しあなたからの交換条件は何なんです?」

その問いかけに一部を除く全員が目を見開く
・・・どうやらこちらの考えは半ばお見通しらしい

「単刀直入に言う、このバンエルティア号にうちの「ティルータ」の奴等を同行させたい」

「・・・ほぅそれはまた、どうして?」

「あんたらは強いがこっちの地理はまだ不慣れだろ?うちの奴は・・・まぁ普段はアレだがいざという時に足を引っ張る奴はいない
・・・悪い話じゃないはずだ」


シュネィヴァの挑むような視線にふむとジェイドが眼鏡を軽くおさえ考える仕草を見せる
対し若木やディセンダーの四人は首をかしげルークに至ってはいきなりの険悪ムードに困惑した

「えっと・・・つまりどういうことなんだ?」

「・・・はぁ、うちの親善大使にももう少し渡世術を身に付けていただかなければいけませんかねぇ?」


ぐっとルークが押し黙る
やれやれと頭をおさえてジェイドは解説のために口を開いた


「いいですかルークと理解できていない皆さん
単刀直入に言えばシュネィヴァはですね、自分の動きを制限される代わりにこちらに条件をのめと仰っているんですよ」


話す間ジェイドはチラチラと何度もシュネィヴァを見てきた
対しシュネィヴァもその視線を軽くスルーする


「・・・そしてその条件とやらが今言った「ティルータ号船員のアドリビトム同行」というわけです
理解できました?」


そう確認してわかったと頷いたのはレク
彼以外は未だ首を傾げその代表としてテュリが口を開いた


「シュネィヴァの条件・・・は分かったけど・・・じゃあどうしてわざわざ同行を求めるの?」
「それは可愛くも臆病な船員が心配で心配で堪らないからですよねーシュネィヴァー?」

ジェイドの嫌味にギロと目を鋭くするシュネィヴァ
今度はそれをジェイドがスルーする


「・・・まぁ理由はいいでしょう
さぁ船長?どうします?同行を許可しますか?」
「えっ?!ボクに・・・・・・ま、まぁ同行するにあたってちゃんとこちらのルールを守っていただけるのでしたら別に許可しても・・・」
「ありがとう船長、よろしく頼む」


否定させぬ強さでガッとチャットの両手を掴み礼を述べるシュネィヴァ
これでティルータ船員の同行が決まった


「さて、あとの二人はどうします」

次いで視線はマリカとチィリカへ
二人はごくりと唾を飲み込むと口を開いた

「わたしは・・・、」
「・・・私、」


「「一緒に行きます」」

「わお、綺麗にハーモニー」
「タイミングもピッタリだね」


あまりも綺麗な言葉の一致にマリカとチィリカは顔を見合わせる
数秒間見合って、見合って・・・二人は同時に笑い出した


「うわぁ!マリカさんとチィリカさん仲良し!仲良しいいね!嬉しいね!」
「うん!そうだね姫!」

人の喜びをまるで己のことのように喜ぶ若木にミナカが同意する
ぴょんぴょんと数回跳ねてからピタリと止まって若木は三人の顔をまっすぐに見た


「あのね、シュネィヴァさんもマリカさんもチィリカさんも・・・皆が僕と一緒に船に乗ってくれること・・・すごく、すごく嬉しい!
えっと・・・これからよろしくお願いします!」

ぺこりと頭を下げて若木が微笑む
三人はそれに返すように笑った


「よぅし!仲間が増えたお祝いだぁー!」
「祭りだ姉さま!大騒ぎすっぞ!」

ミナカとレクがそう言って騒ぎ始める
挙げ句のはてにお祝い!お祝い!歓迎会!と跳ね回り出して若木も「歓迎会!」と加わった


「おぉ!歓迎会やるのか!楽しみだなぁ!」

ルークも目を輝かせる

騒ぐ声が聞こえたのかどこからか何かあるのか?とアドリビトムのメンバーが顔を出し始めた


「よっしテュリリン!パニール達にご馳走のリクエストしにいこう!そうしよう!」
「あ、それはいいけどそのあだ名はやめてくれない・・・?」


キルとテュリが食堂に走り出したところでジェイドやリフィル達も仕方ないなぁという表情になる


その夜のバンエルティア号は遅くまで楽しそうな声が響いていた



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