第三話・続、生徒たちの教室・


「危なかった・・・」


呟きシュネィヴァは自分の席で脱力
先刻、学校鞄を探し船内を己の全探索能力で駆け回った三人だが、実はパニールが預かってくれていて彼女とカノンノが持ってきてくれた

そもそも何で学校の存在を忘れていたかというと昨日の騒ぎで十中八九休校になると踏んでたから
が、そこは特殊クラス

「てめぇらは元々遅れてんだから遊ぶ時間はねぇぞオラ!」という感じの通達が昨日遅く各家庭に届いた
しかしシュネィヴァ達はその時バンエルティア号の中
しかもシュネィヴァの家たる「ティルータ」号は船員達の騒動のせいで通達が来ず、マリカとチィリカも巻き込みこの有り様

因みに姫祇はジェイドから聞いたらしい
奴は船を出る直前「いやー、そういえばお知らせするのを忘れていましたハッハッハ」と気味が悪いほど爽やかに笑っていた


「思い出したら腹が立つ・・・!」
「何が?」

「え?」

握り拳を固めていると不意に声がして顔を向ける
と、かなり近くに姫祇の顔があった
人間予想外の反応は決まっている


「うおわぁっ!?」

お約束なほど情けない叫びにガタッと煩い音を立て仰け反る
なんとか踏ん張って転倒は免れた


「おお、脅かすな姫祇」

「・・・?別に脅かしてないですよ」

本当にそんな気はないと訴える眼差し
そんな顔で見られるとこっちが悪い気持ちになるからずるい


「・・・で、何の用だ?」

「用事?ないよ?」

「・・・は?」

「あ、そろそろ私席戻るね」


にこりと笑って去っていく少女
意味のない行動にシュネィヴァは唖然・・・としたとこで間髪入れず

バァンッ!!
「シュネィヴァっ!!」
「うおぅ!?何だ幸?!お前までおどか・・・」
「何で姫祇さんと仲が良いんだ!!」

「・・・は?」

「なーんーで!仲がーいーいーんだっ!!」

シュネィヴァの机を叩き憤慨する幸
何なんだ、今日って厄日?厄日なのか?


「何で怒られにゃならん」

「何で!?何でと言うかお前!!
あの高嶺の花・姫祇さんと仲良くして何でと言うのかぁ!!」

「あー・・・」

そういやそうだった

前々述べた通り姫祇は元々友好関係が皆無に等しく、あのマリカにさえ線を引いていた謎の可憐な少女というのがクラス内の格付けだった
まぁ姫祇の顔はお世辞抜きで可愛いから男子にモテそうなのは確かだし、シュネィヴァも姫祇はそんな人間なんだと考えていた
そう、昨日までは


真実を知る身としては目の前の幸に対してどう反応を返せばいいか分からなくて、正直困る

だって言えないだろ?高嶺の花が実は女であり男であることなど


はぁー、救いの神様が降りてこないかなぁ・・・


「貴様っ、友人であると信じていたのに、抜け駆けとぅは許すま「黙れ(バキッ!)」ふぐぁっ!」


頭上からの衝撃にシュネィヴァの机に倒れる幸

神が降臨しただと?


「たくっ・・・騒ぐのもほどほどにしてくれ」

なんてふざけたこと考えてたら幸の背後に立つ青年が苦々しく呟いた

その姿にシュネィヴァは思わず立ち上がる


「マギリッ!お前・・・大丈夫か?」

「おう、この通りさ
まだ少し痛むがな」

そう言って笑うのはクラス委員長を務めるマギリ
昨日、魔物が学校を襲った際に攻撃を受けた彼の体には数ヶ所絆創膏やガーゼが見られる
服の下にもきっと幾つか怪我をしているはずだ

けど今目の前で笑うマギリは本調子でないが目に見えて元気そうだ
安心して無意識に大きく息を吐く


「そうだ、お前に言わにゃいかんことがあったな」


そう言うとマギリが真剣な顔になった
その表情にシュネィヴァは気圧される


「な・・・ん?」

「遅れてしまったが
助けてくれてありがとうなシュネィヴァ」

「・・・は?」

「何呆けてんだ
気絶した俺を助けてくれたんだろう?幸がそう教えてくれたからお礼を言おうと思いながら遅くなったよ、すまんな」

「いや・・・そんなこと」

確かに襲われたマギリを直接助けたのは自分であるが、あれはマリカとチィリカのサポートがあったからこそ上手くいったわけで
こう、面と向かって言われるとこっ恥ずかしいというか・・・

「えと・・・礼ならその・・・マリカとチィリカにも言ってさ、」

「何だ?天下の頭領様がお礼一つでしどろもどろになるとは」

「うっせい!マギリが改まるから不意をつかれただけだよ!
・・・慣れてないし」

「はっはは!なんだお前もまだ可愛いとこがあるなぁ」

「よやせい!」

嬉しそうに笑い頭を撫で回してくるマギリの手をめちゃくちゃに振り払う
礼の恥ずかしさもさながら、三つ歳上という余裕を見せつけられるのが悔しくてシュネィヴァは顔を赤くした


「さて、シュネィヴァで遊べたことだしそろそろ時間だ
幸、席に戻れHR始めるぞ」
「・・・おう」

「覚えてろよマギリ・・・!」

悔し紛れの言葉にまた笑い
マギリは幸の襟首を掴んで席に引きずり戻していつも通りHRの始まりを告げた

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