第六話・小さな作戦会議・



「おい!人の顔見て固まるだなんて失礼なやつらだな!」

紅い小人が怒りの声をあげる
とはいえ小さすぎて怖さは微塵も感じられない


「しょうがないでしょう?僕らみたいなの普通いないもの」

蒼い小人が紅い小人をたしなめる
こっちはしっかりして礼儀正しいから、若干好感を持てた


「・・・ってそんなことやってる場合じゃないんだよ!!」

我に帰ったシュネィヴァは慌てて姫祇の後方を凝視する
あの巨大クラブスもどきは学校までの距離を更に縮めていた
本格的にヤバイ


「何?お前あれに突撃するつもりか?」

紅い小人が語りかけてくる
実を言えば返答時間さえ勿体無くて立ち止まりたくなかったのだが、なぜか無視出来ずに紅い小人を睨み付けた

「あぁそうだよ!他に時間稼ぎが出来る奴なんていないからな!」



「いるよ?」

答えたのは姫祇だった

彼女はさも「当然」と言いたげにシュネィヴァを見てくる

信じられない

マリカもチィリカも同じ表情で姫祇を凝視する


「戦える人いるよ?シュネィヴァさんやマリカさん、チィリカさん以外にも
ね、二人とも!」

少女は高らかに両肩の小人を指差した
何言ってるんだ!と怒鳴りたくなる
しかし言えなかった

姫祇の顔があまりにも柔らかで無邪気だったから

行き場のない気持ちが胸の中で困惑に変わる
どうすればいいのか分からない


「えー姫君よー、俺らあんな怪物とヤるためにいるんじゃないんですけど〜?」

「うん!私を守るために一緒にいてくれるんだよね?」

「分かっていらっしゃるじゃないですか」

「だから私はこのままだとあの蟹さんに襲われちゃうから守ってね?」

「・・・・・・」


なんともこじつけな理由で頼み込むもんだ


「・・・姫祇ってあんな奴だったか?」

「さぁ〜?」
「・・・わかりません」

シュネィヴァの独り言にマリカとチィリカが加わる
気づけば二人共隣に並んでいる
マリカはともかくチィリカまで・・・と思いながらもどこか安心した


のも一瞬
今度は姫祇巨大蟹の方へ歩き出したから


「・・・っておい!?」

思わず彼女の腕を掴んで引き留める
マリカが「あっさっきのわたしみたい」とか言ったが無視


「はぇ?どうしたのシュネィヴァさん?」

「どうしたもこうしたもないだろう!お前何しようとしてんだ!」

「ん?蟹の方に行くんだよ」

「なんでそんな平然と・・・!いいか!お前の・・・なんか小人みたいな奴が仮に戦えるとするぞ」

「小人とは失礼な」
「まぁそうにしか見えないよね〜」

「それで、お前自身戦闘体験は?」

「ないよ」

「行かせてたまるか!どんだけ無謀なんだよ!」

思わず声を荒げて怒鳴り付けてしまうが等の本人は気にせずコロコロと笑っている

「へーきへーき!二人が守ってくれるから怪我なんてしないよ!」

「信頼は嬉しいけど無茶はやめて欲しいな」
「姫も能天気だねー」

「ほれみろ!小人も賛同しねぇじゃねぇか!」

「えー」

どうにか説得しようにも姫祇は頑として譲る気はないようだ

するとそれを見かねたのか隣のマリカがいきなり「はい!」と手をあげた

「じゃあさじゃあさ!わたしとシュネィヴァが着いていくってのはどう?」

それを聞いてシュネィヴァがぎょっとする
マリカを巻き込むつもりはなかったからだ

「おいマリカ!お前自分が何言ってるか分かってんのか!」

そう言うとマリカはむっと頬を膨らませて不機嫌を露にする

「分かってるよ〜、だって何言ったってシュネィヴァも姫祇も行くんでしょ?だったらわたしも着いてくの!止めれないんなら道連れ!ってね!」

用途を激しく間違えているがいつものことだ
こうなってしまえばマリカは何があっても着いてくる

所詮は自分と同じなのだ

仲間を守るのが日常化してるから、誰かの先に立つ
似た者同士はこれだから困る

「・・・っ勝手にしろ」
「わーい!許可もらえたバンザーイ!」

「喜ぶなっ!」

「あいたっ!」

頭を小突いてやるとぽこんっ!と良い音がした
「へへへ・・・」と笑うマリカ
しょうがない奴とは知ってたが本当にしょうがない
苦笑いがこぼれる


「青春劇だ」
「わわっ、邪魔しちゃダメだよ」

黙れ小人


「よーし!じゃあ張り切っていくよー!」

「「お前は自重しろっ!」」

姫祇の掛け声にシュネィヴァと紅い小人の声が重なった



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