第五話・未知の遭遇な休話




「何でお前がここにいるんだよ
姫祇・・・!」

低い声で名前を言ってやると目の前の少女は一度視線を逸らしたが、直ぐにまたこちらを見つめ返した


「えーっとね、ここで私はお昼ご飯を食べていたんです」

「・・・こんなところで?」

「はい!」

何かの言い訳かと疑ったが、輝かしいほどの笑顔であっさりと肯定されると疑う気を削がれる

しかし引き下がらない

このタイミングはあらかさまに怪しいし、昼飯を食べてるという答えも嘘の可能性が高い
シュネィヴァは姫祇との距離を一歩進める


「じゃあ聞くけど、あの騒ぎの中お前はどうしてたんだ?」

「あっ!あの地響きだよね、びっくりしたから隅っこの方で座ってたよ!」

「びっくり程度で済む問題だと思うか?魔物が襲ってきたんだぞ?逃げなかったのか?」

「うんと・・・大人しく座り込んでたから・・・」

「じゃあ何で今はこうして出歩いてるんだ?さっきだって大きな音がしただろう?普通動かないんじゃないのか?」

「えと・・・」

「・・・おい!答えろ!」


「てめー!なに姫いじめてんだこらー!」


「・・・・・・は?」

何だ今の?

驚いて辺りを見回すが姫祇以外には誰も見当たらない、当然他の声が聞こえるはずがない・・・のに

今のは明らかに男の声だった

気絶してるマギリか?

そう考え振り返るが、曲がり角で微かに顔を覗かせてるマリカと目が合っただけだった
第一さっきの声は自分の知ってる誰の声でもない、幻聴かと自分の耳を疑う


「こらお前!何よそ見してやがる!」

「!!?」

またあの声

姫祇も「どうしたの?」と言いたげな顔でこちらを見てるし、とうとう耳がイカれたかと思い始めるが・・・


「こらっ!悪口は駄目だって言ってるじゃないか!!」

「あっ!痛い!」

「・・・?!?」

もう一種類声が増え、今までの声の主を叱る
こちらも男

訳がわからなくて目を白黒させシュネィヴァは固まってしまった

すると姫祇がくすくすと笑いだす
まるで悪戯を成功させて喜ぶ子供のように


「えっへへ!駄目だよ二人とも〜、シュネィヴァさんびっくりしちゃってるよ〜」

「「あ・・・」」


そんな姫祇の声と共に、彼女の肩の上に何かが這い出てきた


「小人・・・?」


背後からそんなマリカの声が聞こえてきた

確かにそいつは・・・人の形状をした十数センチに満たない生き物だった
そいつが姫祇の肩にちょこんと座っている


「えっと・・・すみません、姿も見せずに」

「えっ、あの・・・はぁ・・・?」

思わず返事をしてしまう

肩の小人はその蒼い髪を揺らし深紅の瞳を歪ませていかにも申し訳なさそうに謝ってきた

意味がわからん・・・


「てか、向こうが勝手に驚いただけでこっちが謝る意味無くね?」

いつの間に這い出したのか蒼い小人の反対側の肩にもう一人小人が気だるそうに言った

もう一人は紅い髪に碧の瞳を持っている
よく見たら二人とも同じ服を着ていた、ペアルック?

「なぁ・・・姫祇?」

「はい?何ですか?」

「そいつらは・・・何だ?」

もっともな疑問に後ろのチラ見さんも頻りに頷いてる
間違ったことは聞いてない

・・・だが姫祇からの答えは想像の範囲外のものだった


「えっとね、彼等はね・・・」



「家族だよ!私のお兄ちゃんみたいな人達!」

「・・・・・・」

姫祇の無邪気な回答にシュネィヴァと後方のチラ見ことマリカ、いつの間にかチラ見に加わっていたチィリカは

呼吸も忘れて固まった



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