願い事はなんですか?
「カシって何か願いがあるか?」
とある暇な時間
彼女の一言に少年は唖然とした
「・・・いきなり何だよティシ」
「だーから!何か叶ってほしい願いがあるかって聞いてんのー!」
「叶ってほしいって・・・言えば願いが叶うのか?」
「バーッカ!んなわけねぇだろアホー!」
ポカンとしている少年に向けて正面にいる少女はいーっと舌をつき出す
少女の名はティクシィア
黙っていれば人形のように愛らしく可愛い容姿をしている
但しある理由から口は超絶的に悪い
そのせいで折角の美人が台無し、残念だ
そんなティクシィアを見、言葉の意味を考える少年―カシヤは答えを求め首を捻っていた
「なんだよ、何が目的があって聞いてんだよ、てか急に聞かれたって出てこないし・・・」
苦い顔で喋るカシヤにティクシィアは大袈裟な程肩を落として落胆を露にする
おのれ、怒るぞ娘
「願いがないなんてダメだなカシは〜、目的はないけどさ〜暇だし〜面白いこと聞けないかな〜なんて思ったわけだよ?なのになんにも聞けなくて落ち込みたいのはこっちだよ」
せわしなく唇を動かしべらべらと喋るティクシィア
よく動くなとか、唇柔らかそうだなとか、何か頭の隅で考えてしまいカシヤは僅かにティクシィアから目を逸らす
カシヤはティクシィアと出会い、その柔らかな笑みを見た瞬間彼女に恋をしてしまった
初めての気持ち、今は友人関係の二人
しかもティクシィアは知ってか知らずか・・・いや絶対知らないままスキンシップをとってくるから、カシヤとしては我慢、我慢の日々
そんな淡い青春な感情を相手が抱いていることも知らずティクシィアは俯いたカシヤに不満を漏らす
「ん?聞いてるかカシ?人様の期待を裏切った反逆者よ、願いが思いついたか?なら言えすぐ言えそうじゃなかったらぶっ潰す」
「・・・よく動く口をちょっと閉じろ、その間に不本意だが考えてやるから」
「うっわ!何も考えてなかったのかよ!ダッサ!アホっ!」
「ええい煩い!お前の言うことに答える義務もないがそれでも構ってやろうとしてるんだぞ?!少しは黙ることも出来ないのか!」
半ば言い争いになっているがこれでもカシヤはティクシィアの問いに答えてやろうと必死だったりする
これでも些細な願いなら頭に浮かんでるがわざわざ聞いてきたティクシィアである
平凡過ぎる答えでは罵倒をとばしてくるに違いない
想い人に罵倒されたって喜べる特殊な体質でもないカシヤはそんなわけで頭を捻り答えを絞り出そうとしてるのだ
ふと
「ん?ならお前は何か願いがあんのか?」
参考に質問返しをすればいいと思いつき相手に問うてみる(なんでこんな簡単なことをすぐ思いつかなかったんだろう)
するとティクシィアは目を細めいかにも呆れた表情になる
「聞き直すとはいい覚悟してるじゃないかカシ?答えられない訳じゃないし答えてやってもいいけどさ?」
「なに意味のわからんことを・・・さっさと言え、その後答えてやるから」
じと目で睨んでやったらムッとした顔で睨み返されおもむろに溜め息を吐かれた
そんな表情にも愛しさを感じつつカシヤはティクシィアの言葉に耳を傾ける
「ボクの願いはだな・・・
もっと体に筋肉がつきやすい体質になりt「ゴホぶッ!!」
少女の健気(?)な願いにカシヤは勢いよく吹き出した
口から「ゲふッゴほッ!」と自分の声と思えない咳が出て喉を刺激し、痛め付けていく
「なっ、なんだよカシ!人の願いを聞いといて何むせてんだよ」
「こっゴホッ!これがむせずにいられるか!そんな願い叶うかっ!てか願いも持つな!」
「なんだと!これでも悲しいんだからな!細い体で女扱いされるの!」
「むしろそれで正しいんだよ!」
「まだそれを言うのか!ボクは男なんだぞ!なんで毎日毎日女だと言われなきゃならんのだ!」
ビシリと言い放つティクシィア
そう、この少女は悲しいかな頭に欠陥があるのか自分のことを完全に完璧に男であると信じて疑わないのである
華奢で平らに近くも僅かに膨らみがある体にも関わらず男発言を続けるのだ
気の毒な目でティクシィアを見つめる
「なんでそんな目で見るんだよ!バッカじゃないか!!いつまでつまらないネタ引きずってんだよ」
「いいや俺は正しい!ティシの頭が残念すぎるだけだ!」
「馬鹿阿呆!野垂れ死ね!」
酷い言葉を投げ掛けティクシィアはそっぽを向いてしまった
カシヤはただその横顔を見つめる
そして思いついた
ずっと考えていた自分の願いを
それは儚な過ぎて、叶うことはない、だけどカシヤはティクシィアに言う、その願いを
雀の涙にも満たない貧弱な希望を
案の定、言葉が口から出終わった瞬間に小さな拳が腹部にのめり込んだ
こんチクショウめ
++++++
実際書くとティクシィアの口の悪さが際立ちます
頑張れ少年
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